わが生涯に一片の悔いなし!
帰ってきて私が拠点でログインした時だった。
「イナリ様ーーーーーーーーー!」
と、いきなり飛びつく女の子。
都城 桜だった。ピンク髪のツインテールの女の子が私に抱き着いてくる。ああ、これいい。美少女に抱き着かれるの役得……。
「やっとログインしたようだねェ」
「待ちましたよー」
「なにしてたんだよ。こんな時間まで。さっさとログインするタチだろお前」
「いやぁ。学業のほうでちょっと……」
私がそういうと意外といった顔をして四人は私を見ていた。
「勉強できないのかい? できると思っていたが」
「あたしたちと同じか」
「いや、普通にできますよ? 先生曰く本気出したら東大とか海外の大学狙えるレベルくらいんはできますって」
「じゃあなんで学業に問題があったんです?」
「いやぁ。単純に夏休みの宿題をやり忘れまして。居残りさせられてやってました」
「「「あー」」」
納得する理由だったようだ。
「そういえば夏休みは基本的にやってましたね」
「面倒だよなあれ! あたしなんか代行サービス使ってたしな!」
「それはそれでありなのかねぇ……。まぁ、面倒なのは同意だ」
「嫌ですよねー! 宿題!」
四人も宿題は嫌だったようです。
この四人は私より年上なんだよな……。宿題解かないもんな……。私現役JKだしあるんだよ。宿題が……。面倒ったらありゃしない。
「桜って宿題きちんとしたイメージがないんだが。ゲームでも改造とかしてたろ」
「ははは……。私は近道したがる人間ですから……。最終日に全部終わらせた友達のを写させてもらってました」
「やっぱりねぇ……。なんていうか想像できたわ」
「はっはっは。だろうねぇ」
「みなさん私をそういう人間だと思ってるんですね……。仕方のないことだと思いますけど……」
「そういう人間じゃねえと改造に手を出さねえだろ」
「まぁ……。改造までしている子がそういうことをしないというのはさすがに信じられないわよねぇ……」
「うぅ……。四面楚歌!」
「自業自得ではあると思いますけど……」
私も自業自得っていうとしゅんとしてしまった。
「……っていうか桜さん、装備変わった?」
「え、今頃気づいたんですか!?」
「え、知らなかったの私だけ?」
「そうだが?」
私は今更気づいた装備の変化。
前までは結構いい装備だったのに、今は初期装備に近いというか。初期装備を少しだけ強化しましたっていう感じの装備になっている。
「私、一度データを消して改めて進めてるんです! 1から!」
「復帰配信の後から1から進めてるのよ。偉いわよね」
なるほど。1からって大変だろ。
王都付近の平均レベルは低いけど、私たちが探索できる範囲は広いし、ママがレベル35、リキエルさんがレベル39、不知火さんがレベル32とみな30を越えてる。私たちについてくるんだったらもっとレベルを上げないといけないが……。
「前のデータは視聴者の人たちから大体もらってましたから。でも、それってずるいって思っちゃって。で、1からやってます!」
「すごい反省してる……」
「もちろんですとも! イナリ様にも皆様にも事務所にも多大な迷惑をかけましたし、これぐらいじゃ足りませんが、やれる範囲で示すのみです!」
「……こういう心構えが最初からあったらなぁ」
「ちょ、ため息つかないで……。反省してるって言ってるじゃないですかぁ!」
リキエルさんって桜さんに辛らつだよなぁ。そう思っているとママが小声で説明してきた。
「リキエルさん、桜さんからものすごく生意気な態度とられてまして。馬鹿にされて本来はもうコラボしないとか言い張るぐらい苦手だったんです」
「なるほど。でも復帰配信のときいましたよね?」
「それは変わろうとしている心意気を買っているだけですよ。今はそういう隔たりはありませんから。リキエルさんなりの歩み寄り方だと思ってください」
「なるほど」
リキエルさんって意外と心意気を大事にしてるよな。
「リキエルさんにはほんっっっっとに悪いと思ってますよぅ……。若気の至りとかでごまかしてないじゃないですかぁ……」
「そういうのでごまかしてたらぶん殴ってる」
「ほんとにすいませんした……」
「あー……。いや、なんだ。これから気をつけてくれれば」
「リキエルさんって意外と歩み寄りド下手ですよね」
「うるせえ!」
「えっ……歩み寄り?」
「仲良くしたいつもりなんですよ~」
「そうなんですか!?」
「お前らそこに並べ。殺す」
私とママがリキエルさんの鋭い視線で思わず正座してしまう。顔が少し赤い。恥ずかしいんだろう。図星をつかれたって感じで恥じているんだろう。可愛い。
「あっはっは! リキエルは人間関係が苦手だからねぇ! 元ヤンだから仕方ないかもしれないが!」
「おい、不知火先輩……。座れ」
「え、私も処される流れなのかい!?」
「リキエルさん元ヤンなんですか」
「そうよぉ。前に飲み会の時に昔の姿見せてもらったの。バイクにまたがって……」
その時、ママの姿が消えた。
あ、キルされた。
「おい桜、よく見ておけよ。こうなるぜ」
「ひいいいいいい!?」
「あの、まじでキルするバカがどこにいるんだい? ちょ、我輩はまだなにもしてな」
不知火さんもキルされた。
「あのー、私知らなかっただけなんで許してつかあさい」
「残す言葉は?」
「わが生涯に、一片の悔いなし!」
私はキルされた。ひどい。




