都城 桜復帰配信
私はログアウトして、本日急遽開かれる都城 桜の配信時間を待っていた。
活動停止処分を食らって一か月もたってないのにまた開始とはどういうことだとか驚きの声も上がっていた。
私もスマホをいじりながら時間を待っていると、映像が切り替わる。そして、そこにはスパチャ禁止のただの普通の配信が始まった。
『この度は急遽、配信を開始してしまい申し訳ございません。私の口から皆様に言いたいことがあるのです』
そういう切り出しで始まった。
コメント欄でも少しの笑い声もないその配信でまさかという事態を悟っている人もいた。引退とかそういうコメントがついて、大騒ぎになっている。
『最初に言っておきますが、私は引退はしません』
そういうことを断言されて初めてほっとしていたようだった。
『私は、再び配信活動を許可してもらいました』
その声が出た瞬間、都民は大騒ぎだった。
流れるようにコメントが連なっていく。が、途中にもう?とか反省してねえだろとかいう声も聞こえる。
まぁ……そう思うよな。
『玉藻イナリが活動してんだから許されるだろ!』
『あいつだけなんで活動停止しねえんだよ』
『神は平等』
おや、また不穏なコメントが。
さすがにこれはなぁ。私は個人勢だからそういうのって自分で決めるわけよ。それに、私は思いとどまっているし、炎上こそしたがそこまでひどくはなかった。
事務所所属とは基本的に違う。
その暴走する都民を見て。
『馬鹿!』
と、都城 桜は大声を上げた。
『玉藻イナリさんが活動停止してないから不平等とかじゃない! これは私がやらかしたことなんです! それなのになぜ玉藻さんにも活動停止を求めるんですか! あの人はきちんと良し悪しを区別して途中でやめたんです……。私とは違います。それに、彼女は事務所所属ではありません。個人勢VTuberなんです。私は事務所の判断に従うしかありませんが、彼女は自分で決めて、自分で動くしかないんです。だからもうやめてください……』
少し泣きそうな声だった。ってか泣いてる。
『私、実はイナリさんの大ファンなんです。イナリさんを見て、私もなりたくて……この業界に入ったんです。私の推しに殺害予告を送ったり、ゲームでPKしたりという話は聞きたくないんです……。ほかの方も同様です。私だけに迷惑をかける行為はまだしも、私の同期の方やほかの先輩たち、ほかのVTuberさんに迷惑をかけたり比較するような行為はおやめください……。私からの心からのお願いです……』
泣き入りそうな声でそう懇願していた。
コメント欄も少し静かになったが、わかったという声があがる。本当にわかってるかは疑問だが……。
私はしょうがないのでコメントを残すことにした。
『やっほー! 桜さん見てるぅ~?』
と、私はコメントに打ち込んだ。すると、桜さんは私のコメントを見つけた。
『イナリ様……! この度は本当に……』
『いいんですよー。都民の人たちを止めようとしてましたもんね。前に謝罪されたとき頭を丸めてお遍路に行くって聞いてビビりましたよ。そこまではしなくていいので、また気軽にコラボしましょうね』
『ありがたきお言葉……』
桜さんは言葉に詰まったようだった。
私がそうコメントを残した時だった。
『はいドーン』
『おら、少し席を開けろ』
『失礼しますねー』
ママたちが入ってきた。
さすがのこの乱入には都民たちが驚いている。
『都城は変わった。それはあたしたちが保証する』
『なので信じてあげてくださいね~』
『まったく。人の復帰配信に割り込むのは初めてだねぇ』
『新鮮でいいもんだろ? ま、そういうことで、改めて都城 桜は配信活動をしていく。きちんと、迷惑行為とかもやめるという話はしていた。そんな桜にお前たち都民が答えないわけがないよな?』
『みなさんもきちんと、マナーやモラルを守って配信をご視聴くださいね~』
『ふむ、ここにその当の本人がいないというのが気になるねぇ。電話してやろう』
と、その時、私のほうにも電話がかかってきた。
なんか右上には私のアバターが表示されてるし。電話に出ろってことですかそうですか。
「はい」
『配信は見ているだろう? 君からも頼むよ』
『あの、私一応個人勢ですよ?』
『君は準アローライフ所属メンバーさ』
「いつからそうなったんですか……。まぁ……桜さんの活躍はこれからです。桜さんの次回作にご期待ください」
『打ち切り漫画ですか!?』
「冗談です。こういう堅苦しいのあんまり好きじゃないんで、ふざけたかったんです。あ、石投げないで……」
『誰も投げてなどないが……。まぁ、このようにイナリ君も相当メンタルが強い。気にすることはないが……。かといって、何をしてもいいというわけではない。我輩たちからは以上だ。これで配信を終わる』
『はい。では、また皆さん、配信で会いましょう』
そういって配信が切られた。
「で、なんで私が準アローライフ所属になってるんすか?」
『社長がねぇ。我輩たちとめちゃくちゃコラボしている君を準アローライフ所属にしているのさ』
「なんで勝手に!?」
『それは我輩に聞かれてもねぇ。なぜかアバターまで再現しているぐらい本気で準アローライフ所属にしている』
「それはまじでビビったんですけど」
なんでデータもないのに私のモデルがそちらにあるんですか? 渡しておりませんけど。
『でもよかったではないか。事務所の後ろ盾こそないが、我輩たちの事務所とコラボし放題だぞ』
「はぁ……」
『君の伝説も増えていくな』
「増やしたくないんですけど」
そこまで悪目立ちしたくないんですけど。
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