溶岩ガエル討伐戦 ②
溶岩ガエルは舌を伸ばしてきた。
舌の攻撃をよけてメイスをたたきつける。ぶよぶよした体でもきちんと打撃属性のダメージは入るようだった。
入るんだったら何より。はちみつベアーみたいな感じだったら困ってたしな……。
「我の剣技に酔いしれろ……」
アンテはレイピアを取り出し、舌を切り裂いた。
カエルはゲコォとわめき、舌をしまう。そして、カエルは少し震えているかと思うと、突然背中からなにか飛び出してきた。
「溶岩が飛んでくるぞ! 気をつけろ!」
「さすがは溶岩ガエル、ネ。でも、私も成長しているノ。私の後ろにキナサイ」
そういうので、私はフォーチュンを信じて後ろに回る。
フォーチュンは杖を構えて。
「星のバリア」
と、星形のバリアが目の前に現れた。バリアは溶岩をせき止め、溶岩はバリアを避けて落ちていく。
なんとかバリアのおかげで免れたようだ。バリアを覚えたとはフォーチュン意外と実用的なスキルを取るな。ロマンとかそういうのは求めず実用的なのを選ぶのはいいぞ。
「フフフ……。私は今回、サポートに徹するワ。魔法使い兼回復役ヨ」
「助かるぜ! 攻撃は私とアンテに任せろ! あと私もとっておきのスキルを見せてやる!」
私は溶岩ガエルを指さした。
「さぁ、祭りの始まりだぜ溶岩ガエル! スキル、宵闇神楽! そして、祭囃子をかき鳴らせ!」
空間が変わる。
私たちの周りは石畳でできたお祭り会場。縁日のように屋台が並び、提灯が吊り下げられている。何気にアンテたちの前で披露するのは初めてだ。
「ここはどこかしラ……」
「私のお祭り空間さ! こっちにバフ、あっちにデバフ! さぁ、祭りの始まりだ!」
「フハハハハハ! ならばよかろう! この我も祭りを楽しむとしようではないか! だが、我が奏でるのは盆踊りではない。鎮魂歌だがな……」
「キエエエエエ! 祭りヨ……! 祭りは楽しまなくちゃネ……」
溶岩ガエルは再び噴火した。
フォーチュンは私たちに個別バリアを張り、落ちてくる固まった溶岩の岩を魔法で撃ち落としてくれている。サポーターとして文句ない働きだ。
それに、アンテもふざけてるように見えて動きが軽い。素早い身のこなしで敵の攻撃をかわし、的確に攻撃を与えている。
私が思った以上にこの二人、ゲームが相当うまい。VRに慣れている。
「見せてもらおうか! イナリよ! 我のリーダーとして、貴様は強いのだろう?」
「当然!」
私は攻撃をかわそうとするが、考え直す。
落ちてくる溶岩の塊。それを思い切りメイスでぶん殴り飛ばす。溶岩の岩が溶岩ガエルの頭に当たり、スタンを取った。
溶岩ガエルはくらくらーと目を回している。
「ほほう? 見かけによらずパワープレイを好むのか……!」
「身軽さは私にないしねぇ。メイスだって一撃が重いから選んだようなもんだし、メイスなら前作でも使ってた」
「ほほう……。我は手数重視だが、威力重視がイナリか……。面白い。実に面白い! いいぞ! 我を従えるリーダーとしてふさわしい!」
「ありがとさん」
私はカエルと距離を詰め、思い切りぶん殴る。
カエルはぎょろっと目をこちらに向けた。そして、起き上がり、ゲコオオオオオ!と大きな声を出す。
その声には破壊力があった。祭り空間が砕け散る。なるほど、この宵闇神楽出作り上げた空間は壊れることがあるようだ。
「どうやらこのカエル、本気を出すみたいだぞ」
「いいじゃん。体力もそこまで残ってないんでしょ」
「さぁ、正念場ヨ……! どんな攻撃が来るかわからないワ……!」
だからこそ慎重に攻撃を見極めなくちゃな。




