ユセン温泉
どうやら頭だけはその場で復活するらしい。
めちゃくちゃ不気味。不気味にも程があるぞ。ホラゲーやってるわけじゃないのに怖いよ。
身体も修復され、私たちはお菓子の家に押しかけた。
「そろそろ戻してくれ」
「ふぇっふぇっふぇっ。最近の若者はすぐ変化を嫌う。戻りたいのならば私の出す試練をクリアしてくることだ」
「試練?」
「この島には4つの鍵がある。それぞれオーブン砂漠、レイゾウ雪原、フォール崖、ユセン温泉にな。その鍵を集めて持ってくることだ」
「そんなんでいいのか。やってやるぜ」
「ただし」
お菓子の魔女はママたちめがけて魔法を放った。ママたちもお菓子に変えられてしまったようで。
不知火さんは透き通るようなクリスタル。飴細工みたいになっていたし、ママはブドウ味の……グミ?
「この試練はお菓子でしか挑戦できない。お前たちもお菓子にならねばね」
「ええ〜〜っ!?」
「私は飴か。ハッカ味だろうねぇ」
「私はグミ‥‥でしょうか。不思議な感覚ですねぇ」
「というわけでお前たちで協力して鍵を持ってくることだ! ヒントはそれぞれ得手不得手な場所がある。日光には耐えられるが、飴やチョコは暑すぎると溶けてしまうから要注意だ」
そういって、私たちはお菓子の家を締め出された。
鍵を見つけてこいったってなぁ……。
「とりあえず役割分担しましょう。私は柔らかいので砕けませんし、崖のほう行きますね。落ちても安心ですから」
「ならあたしはオーブン砂漠だな。溶ける心配はねぇ」
「となると私はユセン温泉かレイゾウ雪原になるわけだが……。レイゾウにいこう」
「じゃ、私はユセン温泉……ですか。めちゃくちゃ暑そうなんすけど」
溶けたりしないだろうか。
私たちは目的地を決めて鍵を取りに行くことになった。私が担当するユセン温泉は南に行ったところにあるようだ。
とりあえずユセン温泉めがけて歩いて行く。ユセン温泉付近は荒れた土地であり、お菓子の花は生えているが少ない。
「ここだよな」
このチョコレー島は面積がそこまでないからすぐに辿り着けた。
ユセン温泉に来たはいいが、鍵となるものが見つからない。鍵の見た目はどんなんなのかも知らないんだけど……。
私がユセン温泉を歩いていると、岩の隙間に何やら金色に光るものがあった。
「……あった」
私は鍵を手に入れようと手を伸ばすが届かない。
この体じゃメイスで殴って壊すことも出来ないし……。
私はこの岩付近を探索していると、岩の上には温泉があり、真ん中に窪みがあった。窪みを覗いてみると鍵らしきものがある。
もしかしてだけど。
「溶けて中に入れってこと……?」
ユセン温泉のユセンって湯煎ってことですか……。
理解した。私は穴の上に立ってみると、私の身体がどんどん溶けて中に落ちて行く。不思議な感覚だ。身体が溶ける感覚ってこういうものなのかな。
そして、私は鍵があるところに入り込み、鍵を体の中に取り込み、穴からズリズリと這い出た。
体は液体状のチョコになっている。動けはするが、ものすごく動きづらいし遅い。しかも戻り方がわかんないのでお菓子の家まで這いずって戻るしかないようだった。
感覚で言うと、プールの中にいるような感じ。必死に泳いでるがあまり前に進まない感覚。
一応手の形を模したものを出すことはできるし、上半身も出せるが下半身の感覚がなく、腕だけで這いずっている。身体がもう溶けているので本当に帰りが辛いです。
なんでこうなった。




