チョコレート実験
ママたちはチョコレートマウンテンに上ってる最中だった。
崖を上り、私たちもチョコレートマウンテンの頂上を目指すことにした。落石とかに追いかけられたが、もうそのままごり押し。
私とリキエルさんは落石で砕け散ったがすぐに修復されたのだった。
「この体めちゃくちゃ不思議ですねぇ」
「まじでどうなってんだよ。感覚は普通の人間と同じような感じなんだけどよ……」
「ですねぇ。でもはたから見たらリキエルさんの装備を着たクッキーの人形ですよ?」
「お前もチョコレートだからな……。口の奥までチョコレートで人間の面影もないな」
「ですねぇ。でも自分の指とか食べてもすぐに修復されるから結構便利っすよ。常にチョコレート食べ放題」
「それ自分食ってることにならねぇか?」
なってると思う。
落石に当たっては修復され、落石に当たっては修復されを繰り返し、私たちはとうとうチョコレートマウンテンの頂上に着いたのだった。
チョコレートマウンテンの頂上では、やっと上り切ったと言わんばかりにママたちがやすんでいる。私たちの配信を見る余裕はないようだった。
私たちはママに声をかける。
「ママー。やっとつきやしたぜ」
「待たせたな」
「あら、はやか……え、誰ですか?」
「誰だい君達は」
「イナリっす」
「リキエル」
私たちは事情を説明すると。
「ほぉん……。お菓子の魔女にその姿に変えられたというわけか。お菓子の姿で反応を楽しませろと……。つまりは侵入者である私たちにすでに気づいている、というわけか」
「不思議ですねぇ。ちょっと失礼」
ママは私の指にかじりつきチョコを食べていた。不知火さんもリキエルさんの顔をパンチで砕き食べていた。豪快すぎる。
「おい、パンチで砕くことはねえだろ!?」
「いやぁ、修復機能を確かめたくてねェ。美味しい。普通にクッキーだ」
「チョコレートも甘くておいしいですねぇ。ミルクチョコレートです。イチゴ味の」
「なんか変な感覚ぅ。食べられるってこんな気持ちなんだ……。ちょっと興奮するかも。今日のおかず決まった」
と、私が悶えていると不知火さんは思い切り私をぶん殴って粉々にしてきた。
私はそのまま修復される。
「一口大に砕いたリキエルの体に溶かしたイナリの体をかければ……チョコレートクッキーさ!」
「なんであたしたちで作るんだよ!」
「今日一日で何度修復されなくちゃいけないんだ……」
「うむ、うまい」
「たしかにうめぇけど」
「あら、飲食はできるんですねぇ」
「っぽいですね。ゲームだからこんな感じになれますけど現実だったら怖いっすね」
こんなの現実でできたら怖えよ。カニバリズム待ったなしだろ。
「もっと実験しよう!」
「はぁ?」
「たとえばこうだ!」
と、不知火さんは私の腰めがけて思い切り蹴りを入れた。
腰が砕け、私の上半身が地面に落ちる。
「動かせるかい? 下半身」
「いや……。あ、修復された」
「では次はこうだ」
不知火さんは私の頭をつかみ、首元でチョコレートを砕く。
なんか生首みたいになってるんですけどこれで生きてるってマジですか?
「動かせるかい?」
「いや、動かせないですね」
「ふむ」
要するに気になっていたのは半分に砕いたらどちらにも自我が宿り私が二人に分かれないかということか。
そうなったらややこしすぎるだろ。ゲームでもできるかそんなもん……。
「不思議ですねぇ。生首を持ってる姿って配信に映してもいいんでしょうか」
「ある意味閲覧注意だろ」
「これで生きてるのが怖いがね。早く修復しないのか?」
「したいんですけど……。なんかできない?」
自然と修復されるはずなのだが。
私が戸惑っていると、突然目の前にお菓子の魔女が現れた。
「説明不足だったわい。修復機能は使いすぎると少しの間待つ必要があるんだ」
「……あんたがお菓子の魔女かい?」
「そうとも。お前らもこいつらみたいになりたくなかったら私と戦おうなんざ思わないことだね」
そういって、魔女は笑って消えていったのだった。
「つまり、私ってしばらく生首状態のままってことっすか?」
「になるな」
「えぇ……」
「安心したまえ。これ以上砕くことは今はしない。とりあえず私の頭にでも載せておこう」
「なんか不思議な感覚なんですけど。体が動かせないって感じの感覚ぅ……」
「気になるのはこのまま全部食べたらどうなるのかしら。修復できないとなると死ぬのかしら……」
「……やってみるか?」
「えっ」
私はそのまま頭を砕かれた。
字面がひどい。




