お菓子の魔女
私たちは木の上に逃げた。
さすがに木の上までは追いかけられないらしく、はちみつベアーは諦めてのそのそ歩いていったのだった。
私たちは木から降りる。
「ったく、ひでぇ目にあったぜ……」
「本当に……」
ここはどこだ。
無我夢中で逃げてきたからどこにいるか、現在地を把握できていない。私はきょろきょろとあたりを見回していると、変なものを見つけてしまった。
変っていうか……。なんか不思議なものっつーか。
「あの、リキエルさん、あれ」
「あれ? ……お菓子の家じゃねぇか」
「誰かいるんですかね。煙、上がってます」
「はぁ? ママの情報だとここは無人島のはずだろ? いるはずがねぇ」
だけど煙が出てるんだよな。
火のない所に煙は立たないのだ。だから何かがいると仮定してもいいんだろうけど……。さすがに警戒はしておくしかないだろう。
私とリキエルさんの考えは同じなのか、リキエルさんもいつでも戦えるように構えていた。そして、私たちはお菓子の家に近寄り、窓から中を覗き込む。
「いる」
「はぁ? なんでいるんだよ」
「わからないっすよ……。ただ、黒いローブに何かかき混ぜる姿……。ろくでもなさそうなのはたしかっすね」
私はリキエルさんに中の様子を報告していた時だった。
お菓子の家の扉が開かれる。そして、その黒いローブを着た老婆がそこに立っていた。
「……ッ!」
「お菓子が二つ。私の目の前に現れるとはのぅ」
「リキエルさん」
「わかってる! 敵だな!」
リキエルさんは攻撃を仕掛けるが、片手でパンチを受け止められてしまう。
私はフルでスキルを発動させた。宵闇神楽と祭囃子を使った。MPがもう0に近い。だがしかし、戦うしかなさそうだった。
私はそのままメイスでぶん殴る。が、躱されて、私のみぞおちに魔法がぶち込まれた。私は思い切り吹き飛んでいく。
「一発食らっただけで瀕死かよ!」
「畜生……。レベル差がありすぎるっつーか、ダメージ与えられねぇぞ」
「ですね……。どうしたものか」
「貴様らごときが私に勝とうなど百年早いでの! さぁ、お菓子になるがよい、お前たち!」
と、魔女は私たちに魔法をかけたのだった。
煙が私たちを包み込む。そして、煙がなくなったとき、私たちの目に入ってきたのは驚きの姿だった。
リキエルさんがクッキー生地でできている人形みたいになっていた。
「ふぇーっふぇっふぇ! ここはお菓子の島。お菓子でいるのがルールじゃぞ」
「っつーことは……。俺クッキーになってやがるぜ!?」
「私チョコレートかな? あっ」
私の腕が折れた。
冷えて固まった私の腕。ものすごく脆くなっていた。私は腕を拾い上げ、くっつける。どうやらお菓子の体は非常に壊れやすいらしい。
ゲームならではだけどやりづれぇ……。
「リキエルさんアイシングクッキーみたいになってますねぇ」
「そういうお前もチョコレートの銅像みたいになってるぜ? 瞳孔とか目もチョコレートだから白目向いてるみたいで怖いぞ」
「そうで」
「おっと。チョコレートのあんたは気を付けたほうがいいぞい? 今は日差しが強いから溶けてしまうかもしれんのぅ」
「えっ」
うそでしょ?
「はは、そんな怖がることなかろう。嘘じゃ。折れたりはすれど、この程度の日光で溶けたりはせん。面白いのぅ。人間をお菓子に変えるのは」
「……戻してくれたりしません?」
「ひとしきり楽しんだら戻してやるわい。それまではお菓子の体を楽しむがよい。もちろん、楽しませてくれた礼としてそなたらは今死ぬことはない。食べられてもすぐに修復されるようになっておる」
「なにそれこわ……」
「一緒に来たお仲間に会いに行くがよい。チョコレートの君とクッキーの君……。なかなかかわいらしいのぅ」
そういって、魔女はお菓子の家に戻っていった。
魔女の目的。それは私たちをお菓子に変えて反応を楽しみたいだけなのか……?
「とりあえずママたちのところに向かいましょ。こんな体じゃ不便ですし」
「そうだな」
私たちはママのもとに向かうことになった。




