ホワイトチョコレートの泉
チョコレー島に降り立った。
地面も泥のように茶色く、なっている木々は緑だが、実っている果実がもうチョコレートだ。もうどこかしこもチョコレート。
ためしに、チョコレートの花みたいなのを食べてみる。
「あ、ビターな感じでオトナなお味……」
「本当にチョコレートなのねぇ」
「見ろよ! チョコレートのちょうちょが飛んでるぜ!」
「ああ、まさしく追い求めていたファンタジー! リアルでは絶対的にありえないこの光景! ふはっ、ふははははは! 実にファンタジー!」
約一名ものすごく興奮している。
私たちはとりあえずチョコレー島の探索をすることになった。ほかにプレイヤーの姿はなく、このチョコレー島には私たち四人しかいないようだ。
チョコレートの道を歩いていく。どこもかしこもチョコレートだし……。
「白い泉……?」
茶色い光景の中、真っ白な泉があった。
私はその泉を飲んでみる。
「あ、ホワイトチョコレート……」
「どこまで行ってもチョコレートチョコレート……。一生分のチョコレートを見るんじゃないかしら」
「だがこういうの憧れるだろ? あたしも小さい頃はヘンゼルとグレーテルのお菓子の家に憧れたりしたもんな!」
「あれって現実だったら絶対一日で食いつくさないと蟻とかやばそうですよね」
「それもそうだが日本の太陽光にさらされたらどのお菓子も痛むだろ」
「作るとしたらデカい冷蔵庫みたいな施設の中よねぇ。あの家こそ実にファンタジーって感じがするわ」
「それに、お菓子の家は家とは呼べないだろうね。あまりにも脆すぎて家の基準をまず満たさないだろう」
「あー」
たしかにクッキーの壁とか地震大国日本だったら無理だわ。すぐに崩壊する。
『ファンタジーをリアルで語ってて草』
『いや、まぁ、たしかにそうなんだけど』
『少女たちの夢を壊す発言はやめなさいwww』
コメント欄もお菓子の家でにぎわっていた。
私たちがお菓子の家について話していると、ホワイトチョコレートの泉のほうからぴちゃんと何かが跳ねる音が聞こえた。
それはほかの3人にも聞こえたようで……。
「……今の音って」
「魚……よね?」
「こんな甘ったるそうな泉に魚がいるんすか!?」
「へぇ……。では、魚がいるとしたらこれしかないだろう」
不知火さんが4本の釣竿を取り出した。それぞれ1つずつ渡される。
用意周到だなと思いつつ、私はホワイトチョコレートの泉に釣り糸を垂らした。釣り糸を垂らして数分後、反応がある。
私は全力で引っ張り釣りあげると。
「たい……焼きィ!?」
「タイ焼きが泳いでたのか!?」
「あたしのほうも反応あったぜ! どりゃぁああああああ!」
と、リキエルさんも釣り上げたが。
白いタイ焼きだった。いやいやいや、待て待て待て。チョコレートの泉で泳いでるのがタイ焼きだぁ!? タイ焼きはふつう泳がないよな!?
「どうなってんだこの島ァ!」
「野生のタイ焼きが釣れた!」
「……字面だけで見ると結構なパワーワードよねぇ」
「野生のタイ焼きってまずなんなんすかね」
実際釣れてるんだから仕方ないもん。
「この島はあまりにも現実離れしすぎてる……」
「それがファンタジーだからね」
「ファンタジーって言葉で何でも片付くなこの様子じゃ」
「そうねぇ。この泉に生息してるのは茶色いタイ焼きと白いタイ焼きの二種類だけなのかしら」
「いや、そうでもなさそうだ! 抹茶味!」
不知火さんが緑色のタイ焼きを釣り上げた。
私はまたしてもつっこみたいことがあるんだよ。
「そもそもタイ焼きって中身基本的にあんこですよね? なんでチョコレー島で釣れるんですか? 見た感じチョコレートしかお菓子ないのに」
「割ってみればわかるんじゃね?」
「そうね。けどぴちぴち跳ねてるタイ焼きに触れて割りたいと……思うかしら」
「思わないな……。よし、不知火先輩。ここはひとつ」
「仕方があるまい。抹茶味、堪能させていただくとしよう」
不知火さんは自信が釣り上げた抹茶味のタイ焼きを割って食べていた。
「うーむ。これは中身チョコだねぇ。あんこではないようだ。抹茶風味のチョコレートが中に入っている。うむ、これは美味だ。もっと食べたくなる味だ。新鮮でうまい」
「タイ焼きに新鮮もくそもあるのか?」
「天然と養殖ならあるって聞いたことありますが」
「え、天然と養殖はあるの……?」
「天然は1個の金型で作られたもの、養殖は複数作れる金型で作られたものを指すとか」
「へぇ……。そんなこと言われてんだな」
「そんなことより、その、味が気になるわね……。私も食べてみるわ」
「私も……」
「あたしも」
私たちはタイ焼きを口にしてみる。
あー、チョコだぁ。あまーいミルクチョコが中に入ってる。ちょっと固まっているが少し甘く焦がされたチョコが中に入っていてとても美味しい。
新鮮という意味は分からんが美味しい。




