実にファンタジー
私は今、なんか不思議な状況に置かれていた。
「やぁやぁ。皆の衆。不知火ぱっちだよ。よろしく頼むね」
「母海ちひろでーす。よろしくお願いいたしますねぇ」
「天神 リキエルだぜ! よろしくなァ!」
アローライフ所属の三人のVさんとなぜかコラボしている。
三人がアローライフ所属なのに私だけ無所属。なに? アローライフに強制的に引き込もうと画策してらっしゃる?
「ほら、イナリちゃんも」
「た、玉藻イナリでーす! そうじゃなくて……なんでアローライフ所属のVがコラボっていうだけなのに無所属の私まで呼ばれてるんですか!?」
「細かいことはいいだろう。どこに所属してるかは問題ない。人間はどうやって生きるかだ」
「イナリちゃんは私の配信の準レギュラーみたいなものですし」
「あたしは初対面だけどな!」
「リキエルさんよろしくお願いいたします」
「おう! こちらこそよろしくな!」
この状況視聴者も不思議に思ってないのが面白いけどよ……。しいて言うならまだ不知火さん、リキエルさんの視聴者は無所属の私に驚きはしているが、ママの視聴者はもう普通のようにレギュラーだよねとか抜かしてるし、私の視聴者もアローライフに取り込まれて行ってるとか笑ってる。
「んで、今回のターゲットは?」
「今回は……せっかくの大型コラボなのでものすごーくいいところに行きたいと思いまして。こういうの手に入れてみました」
そういってママが取り出したのは四枚のチケット。行き先はチョコレー島といういかにも甘ったるそうな島だった。
「チョコレー島……?」
「はいぃ。昔、とある魔女さんが島中の植物をチョコレートにしてしまったらチョコレートしか作物が咲かなくなったっていう島でこのチケットがないと出入りできないみたいなんですね」
「……そのチケットはどこで手に入るんすか?」
「このチケットは取得条件結構難しいので、欲しい場合は私を介したほうが楽ですよぉ」
らしい。
「このチケットをもって王都の飛行船乗り場のほうに向かうのだ。チケットを提示すれば、チョコレー島に連れて行ってもらえる」
「そりゃいいな。早速行こうぜ! あたし、チョコレート大好きなんだ!」
「ふふ。チョコレートの作物なんて実に非科学的だ。そそるねぇ。実にファンタジー!」
「では早速参りましょうか」
私たちは飛行船にチケットを提示し、チョコレー島まで乗せてもらうことになった。
飛行船が空を飛ぶ。リキエルさんと私は甲板で少し目をきらめかせていた。
「や、まじで飛行船ってファンタジーっすよねー!」
「今、実にゲームの世界を堪能してる感じがするなァーーーーーーっ!」
「二人とも大はしゃぎですねぇ」
「わからなくもないがね。飛行船というのは現実でも乗る機会は滅多にない。ファンタジーでは飛行船はメジャーではあるが……」
「でも現実世界にこんな大きな船に大きな風船みたいなのとりつけましたっていう飛行船ってなくないっすか?」
「こんなリアルな船が空を飛ぶ……。ロマンだぜ!」
「まぁ、たしかにないねぇ。そう考えるとこの飛行船は実にファンタジー。私もなんだか興奮してきたね」
不知火さんは甲板の中央に立ち、両手を天に掲げて「ファンタジー!」と叫んでいた。
「ふふっ。皆さん、はしゃいでますねぇ」
「ママもはしゃいでいいんすよ?」
「私は見てるだけでも楽しいので……。それより、そろそろつくようですよ、チョコレー島」
「やっとか! 楽しみだぜ!」
「チョコレー島はファンタジーのにおいしかないですね」
「ファンタジー!」
ファンタジーで言葉が固定されてるけど大丈夫?




