質問大会
私の部屋に案内し、不知火さんと雑談というか、そういうインタビューみたいなことをすることになった。
不知火さんは動画を回している。いや、配信か。
「改めまして、個人勢VTuber、玉藻イナリでーす! よろしくねー!」
「よろしく頼むよ。それでまずは……。私の自己紹介からさ。不知火ぱっち。アローライフ第1期生さ。一番の古株といえるだろうねぇ。私自身、変わり者であるという自覚はあるぐらいには変わり者さ」
「それで不知火さん、討論って?」
「Vの未来についてさ! 今はVTuberが多く出ているんだろう? 見てくれなくて人知れず引退していくもの、キャッキャされたいがために頑張って動画出して、配信をする者……。千差万別いる。今は歴然のVブームといっても過言ではないだろう。なぜVになったのだ?」
「Vになったか……。きっかけはただただ面白そうだったからかなぁ……」
私がVを始めたきっかけか。
中学生のころ、それこそアローライフさん所属のVTuberの動画を見て面白そうだって思っていた。そして、その面白そうという気持ちをずるずる引きずって高校生になった。
高校生になって、親もそういう自立を促してきたので、私はとりあえずバイトみたいな感じで稼げればいいなーって感じで始めたんだよな。
「ただただ面白そうだったから始めたかなぁ。そこまで深い理由はない」
「ふむ、噓偽りはなさそうだ」
「こういうの偽らないでしょ……」
「いいや、Vになったら稼げると思っている人も少なくない。そういう魂胆で始めたのなら絶対いつかは壁にぶち当たる。これは我輩の経験談でもある」
「ああ、不知火さんはそういう魂胆で……」
体験談かい。
「では次……。イナリ殿にとってVTuberとは?」
「んー、偶像?」
「ほほう? その理由は?」
「いや、まぁ、私はもう身バレしてるし半ば実写になってるんだけど大半の人って中知らないじゃん? バ美肉だったり、少し歳食ったおばさんだったりする人もいるわけで……。でも、その中の人を考えずにみんな推してるわけじゃないっすか。だからまぁ、VTuberは神様と同じ偶像なのかなと」
「ほほう、実に深い。一理ある」
私としての価値観はそういう感じ。
結局のところ実写とは違って顔がわからない分、声とVの体を推してるというわけで。アイドルとはまた違った形の偶像なんだよな。
「Vになって困ったことは?」
「変な奴ばっか寄ってくること」
「変な奴?」
「うちのメンバー見たら大体変なやつでしょ」
「否定はできないねぇ」
アンテとかはたまに配信に出してたけど中二病って笑われてたし、電波系の女もいるし、なんか少しヤンデレチックなヒバナいるし。
いろいろ変なのの集まりなんだよな。
「じゃあよかったこと」
「んー、楽しいってだけかな」
「楽しい?」
「楽しいっていう感じがすげーモチベにつながってるんすよね。身バレとかして、本名とかもろもろばれて、もうだめだーって思っても視聴者さん、優しいんすよ。そういういたずらなんてほとんどなくて。逆に笑ってくれて。どこまで個人情報がばれるのか笑ってくれてみてますよ」
「ほほう。マナーがいいのだね。マナーは大事さ……。我輩は身バレしたことはないが……。それでも我輩の視聴者も同じように笑うだろう。そういう点ではやはり我輩と君は似た者同士さ。価値観も同じだと思える」
不知火さんは嬉しそうに笑っていた。
「君とはいい友人関係になれそうだ」
「そうですか?」
「ああ。私はこれで失礼する。君の話を聞けて良かった」
そういって、握手して去っていった。
討論ではなく私への質問大会でしたねェ。まぁ楽しかったしいいけど。




