トマトをかぶった女
ママとのコラボも終わり、私は改めて配信活動を始めたのだった。
夏休みも終わりに近づいてくる。誕生日配信はできずにいたが……。あんなことをしてしまったのだから仕方ないだろう。
「んで、誰?」
私は拠点に帰るとデカいトマトの被り物をした誰かが立っていた。マルーンでもないし、アンテでもなさそうだ。
私は誰だと思っていると、ハロウィン風に顔部分をくりぬかれたトマトがこちらを向いた。誰だかわからない。
「私はトマトの妖精とまとんぐ!」
「いや、そういうのいないだろ。誰だよ」
「なおこれは世を忍ぶ仮の姿! 私の本当の姿は!」
と、トマトが投げ捨てられた。
ぐちゃりとトマトが潰れる。もったいねぇ……。
「アローライフ所属のマッドサイエンティスト系VTuber、不知火 ぱっち! ここに見参!」
「また変なのが来た……」
しかもアローライフ所属のV。知ってるぅ。名前は知ってる。たしか第1期生の子だ。
「優秀なる玉藻イナリ殿よ、貴殿の話は聞いているぞ? 我輩ともコラボじゃー!」
「初対面がこういうシュールな絵でいいのか」
しかも相手配信してるし。
コラボのお誘い解かなかったのはまぁいいとして、出会いがこれでいいのか。もっとロマンティックにしなくてもいいのか。
「というわけで、何のアポもなしに来てみたらちょうど帰ってきてるではないか玉藻君! 初めまして、我輩は不知火ぱっち。錬金術師である」
「錬金術師……」
「まずはなんのアポもなしに突撃した非礼を詫びよう。思い立ったが吉日、即行動に移してさっき気づいたのだ」
「おそっ!?」
「貴殿の話は天津風や都城から聞いている。とても惹かれる人だという話を。ふむ、たしかに君にはどことなく惹かれるオーラがあるな。そういう力がある」
「そういう力……?」
「人を無意識に引き付けてしまう才能……! これほどまでに我輩の研究材料にしたい者はいない! だから来たわけなのだよ。というわけで、実験させたまえ」
「嫌です」
誰がさせるか。
「まぁ冗談だ。今回は挨拶に来たまでだよ。我輩も、君のことを聞いてから少し気になっているんだ。こんな我輩と仲良くしてほしいというお願いに来たのだ」
「ああ、そういう……」
「で、どうだろうか? 急に押しかけてきた我輩は仲良くするに当たらんか?」
「いや、フレンドになるぐらいなら大歓迎っすけど……」
「そうか。感謝するよ」
ぱっちという人からフレンド申請が届く。
「君は個人勢であるが、ママとコラボしまくっている……。いっそのことうちに入ったらどうだい?」
「いやー、大手に入るってのはちょっと……。絶対転生ってことになるしNGとか多いじゃないっすか……。下ネタを容赦なくぶち込めるほうが気楽でいいんで……」
「そうか。残念だ。だが、個人勢はそういう自由もある」
「企業と違って後ろ盾がないのが不安ですけどねー」
「そうだね。君とはゲームよりこういう討論のほうが動画が伸びそうだ。どうだい? 私の配信でVについて討論しようではないか!」
「まぁいいっすけど……」
ぱっちさんは結構ぐいぐい来る感じの人だ。だが、動画や配信に対してはまじめっていうように感じる。
信頼できる人だと何となく悟った。
「討論ね……」




