江戸っ子イナリちゃん
私もママも進化した。
「私は泣く子も黙るぅ~お祭り狐ェ~! ってなんかめちゃくちゃ和」
「ふふ、運営さんも私の愛の力に気づいたんですねぇ」
目的のものは見つかってないがだいぶ幸運です。
私は試しに新スキルを使ってみることにした。魔物を見つけ、さっそくママと私対象にバフをかけることにした。
祭囃子を使用すると、どこかからシャンシャンと鈴の音が聞こえてくる。
そして、太鼓の叩く音。それはまるでお祭りのような賑やかさ。きちんとバフがかかっており、メイスで一撃で魔物を倒せてしまった。
消費MPはがっつり持ってかれるけどすげえテンション上がるなァ!
「すごいね! いよぉ~!っていう掛け声聞こえてきたわ」
「でしょー? 祭囃子らしいっす。これが」
「お祭りが始まるよっていう合図ね。なかなかいいじゃなァい」
祭りは心を躍らせる。
パーリーピーポーの私は祭りごとが大好きなんです。私のスキルはなんとなく理解した。ママのほうもスキルの試運転するらしく、試しにダメージを受けてみる。
瀕死の重傷ぐらいダメージを負い、私はママのスキルを使用してもらうことにした。
ママがスキルを使用すると、ママの胸から赤いハートが飛び出してきた。そして、そのハートが私に飛んでくる。
瞬く間に私を包み込み、体力を回復したのだった。
おー。愛だ……。
「愛ですね……」
「愛ね……」
『愛しかいうことがない』
『愛』
『これが……愛……?』
ママの愛情をしかと受け取ったぜ……。
「さて、今日の本題を狩りにいかなくちゃ。準備はいい? イナリちゃん!」
「合点でい! 江戸っこイナリちゃん、祭りごとは大好きでねェ。いっちょ祭るぜィ!」
「なりきってる……」
「火事と喧嘩は江戸の華……。喧嘩事ならこの江戸っこイナリちゃんに任せんなァ!」
私はメイスを装備し、ゴリンウータンを探す。
ゴリンウータンは開けた場所で歩いていたので、私はまず一撃を加えた。祭囃子を口ずさみ、口上を述べる。
「やい、ゴリンウータン! ここはあたしの縄張りだァ。そんなデケェ顔すんじゃねぇ」
「ウホゥ!」
ゴリンウータンはぶっとい腕で殴りかかってきた。私はメイスで受け止めるが、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「イナリちゃん!」
「いいパンチじゃねェか。だがこんくれぇであたしが折れるなんて思っちゃいねぇだろ? なァ!」
私は思い切り振りかぶった。
そして、そのままその勢いのまま、私は今度は宵闇神楽を発動させた。私とゴリンウータンが別空間に飛ばされる。
宵闇神楽を始めてみるママは戸惑っていた。石畳と祭りの縁日のような屋台。そして、宵闇と書かれた提灯が吊り下げられているお祭り。
櫓の和太鼓の音が鳴り響く。
「さぁ、祭りだ祭りだァ! 派手に行こうぜゴリンウータン!」
「ウホゥ……」
「なにこれ!?」
「私のスキル、宵闇神楽! 味方にはバフを、敵には継続ダメージとデバフをかけるエリアです! 消費MPがクソほど高いんで一度きりしか使えませんけどねぇ!」
「な、なるほど! いいスキルね!」
私はメイスでゴリンウータンをぶん殴る。
ゴリンウータンはデバフの効果もあり、明らかに速度が遅くなっていた。そんなおせえ攻撃、当たらねぇよ!
私たちは、この宵闇神楽のエリアで何とか勝利を収めたのだった。
「楽しかったぜ……」
「祭りみたいでワクワクする空間ねぇ」
「っすね! 私のスキルめちゃくちゃ楽しいもんばっか!」
こういう楽しいスキル大歓迎。




