都城 桜の反省
夏の終わりが近くなってきた。
私はママと連絡を交わしていた。今日は私のほうでコラボ配信をしないかとママンから来た。もうそろそろ私は配信してもいいんじゃないかとママから言われて、どうせなら私とやりましょうよとママから来た。ママ、ありがとう。
私はさっそくログインし、ママと合流する。
「ママ」
「来たわね。っと。やっぱ何度見てもそのケモミミ可愛いわねぇ」
「でしょー? キツネ耳っすよ。ピコピコ動いて自分でも可愛いって思いますもん」
「ふふ。で、配信はいつから始めるの?」
「ママが良ければ今からでも!」
ママはいつでも大丈夫と言ってくれたので私はカメラを飛ばした。
一応配信告知は私のほうからもしたし、ママもしてくれた。ママのほうの視聴者も待機してくれたみたいで、同接が普段よりちょっと多い。
「こんにちはー! 個人勢VTuber玉藻イナリだよ!」
「ママこと、母海ちひろです。よろしくお願いいたしますねぇ」
「まずは……今回、ご迷惑をおかけしましたっ!!!」
「いいのいいの。それより今日はコラボなんだし、楽しんで配信しましょうね」
「はい! で、今日は何しますか?」
「素材集めをするわ。行くのはドルドル毒沼地帯よ」
「……聞くからに毒になりそうな場所っすね?」
「そうなの。武器に必要な材料があるの。毒属性の武器を作ろうと思って」
「ママの聖人とは裏腹の毒属性……」
「ママの愛は時折毒にもなるんですよ~。過剰な愛は毒と同じ。ママにぴったりでしょう?」
「言ってることがブラックすぎる」
たしかにそうだけれども!
私がママの話を聞いていた時だった。ピンク髪の女の子が私の前に立っている。ママは少し顔色を変えたが、配信中ということもあり、すぐに笑顔に戻す。
「あなた玉藻イナリさんですね! 生で見たのは初めてだなァ……」
「そ、そうですけどどちら様で?」
「私ですかっ? 私は都城 桜! ママと同じアローライフ所属のVTuberでーす!」
「み、都城さん! か、活動停止処分は……」
「受けました。視聴者の皆様には申し訳なく思っております……。私が悪かったんです。い、今出てきたのは私の推しである玉藻さんを見かけたからで……」
「は、はぁ」
「今私は非常に反省して一人でゲームをやってるんですっ! あ、ああ、あの、握手を」
「はい」
私たちは握手を交わす。
そして、一度配信を止めることにした。ちょっと三人で話したいことがあるから待っててと告げてカメラを切る。
都城さんはそれでもきらきらした目で私の手を握りしめていた。私はママと少し相談する。
「あの、イメージと違うんですが。もっと傲慢な感じがするかと」
「見たことないわ。あんな桜ちゃん」
「本当ですか?」
どういうことっすかね。
私は桜さんと少し話すことにした。
「あの、桜さん……。ぶっちゃけて言うと私のファンって嘘ですよね……?」
「えっ……マジのファンなんですけど!? 私、あなたのグッズとかぜーーーーーーーーんぶあつめてまして! ああ、あの、私めちゃくちゃ悪評あるので信じてもらえないかもしれませんが本当にファンで……。あなたと同じに、コラボしてみたくてVになって……」
「…………」
「でも、私ってゲームうまくなくて。改造とかに手を出して炎上して……。イナリ様とコラボできる実績がないと! で、でしてね? 無我夢中でコラボしたくてイベントの時も一位になりたくて、一位になったらコラボを申し込もうと思っていて、で、続けちゃって」
「……」
「イナリ様! お願いです! 一生ついていきたいです!」
「ちょっとタイム、ママ少しいい?」
私はママと再びやり取りする。
「桜ちゃんってマジで私のファンっぽいけど」
「そうね……。本人のモラルとかマナーとかはともかく、ファンであるのはたしかなようね」
「聞いていた話と違うんですけど。めちゃくちゃ私に対しては礼儀正しいんすよね」
「人によって態度変えてるわね……。……そうだ。ちょっとあなたの口から注意してもらえる?」
「注意?」
「都民のこと」
「わかりました」
私は桜さんのほうを向く。
「桜さん。ついてくるのはいいけど……それだったら自分のリスナーを少しは制御してほしいな。他人の配信に出向いては君と比べてるみたいだから……」
「わかりました……すいませんっ!」
「あと、アンチコメントとか来ても荒らしを許容しちゃだめだからね。さっと消すだけでいいからそのコメント」
「わかりました……」
「まずモラルとかマナーとか、そこら辺をしっかり学んでからコラボしたいな。ごめんね」
「……はいっ!」
「新人だからそういうのは難しいかもしれないけど、ママとか聞いたら教えてくれるから」
「はいっ! ママ、よろしくお願いしゃーーーーーす!」
「……キャラ違くない?」
「はっきり言ってママは苦手だったんです!」
はっきり言うな。
「私の推しと気軽にコラボして……私はできないのに少し憎かったんです! でも、推しに言われて目が覚めました! ママ、これからもよろしくお願いします!!! 私も炎上しないように気を付けますので!!」
「わかったわ……。とりあえずマナーとかはいろいろ学んでいきましょうね。Vに限らず、配信とかにもマナーはあるし、自分のリスナーはきちんと制御すること」
「はい!」
「都民から私に殺害予告まで来てるんだから」
「えっ!?」
そのことは知らなかったのか、驚いた顔をしていた。
「え? 来てたの?」
「学校に桜さんが活動停止処分なのにお前はのうのうと謝るだけで済ませてるのおかしいって。私個人勢だから事務所も関係ないしいつ始めるかは自己判断なのに」
「きちんとリスナーを制御しないからこういう風に迷惑かけてるのよ」
「すす、すいません! きちんと私のほうからも注意しておきます!! ごめんなさい本当にごめんなさい……。推しに迷惑をかけるなんて私のバカバカ! 死んでお詫びします……」
「そこまで!?」
「い、今からそういう注意喚起だけツイートしておきます! 配信のお時間を取らせてしまいすいませんでしたぁ!!!」
「い、いいよ。あ、フレンド申請送っておいたから後で承認しておいて……」
「推しと、ふるぇんど……?」
桜さんはそのままぶっ倒れてログアウトしたのだった。めっちゃ興奮状態なんだな。
「……桜ちゃんって結局私が好きすぎて周りが見えてなかっただけじゃ?」
「そうみたいね……」
「恋は盲目とかいうけど……」
「はたして恋なのかしら……。桜ちゃんもあなたと会えて変わった気がするわ。イナリちゃんってなんかそういう不思議な力あるわよね」
「不思議っすね。まぁ、配信再開しますよ」
私は再びカメラを飛ばした。




