宵闇神楽
農作業も結構板についてきたと思う。
カブ以外の作物も売れるようになったり、無人販売所を設営出来てそこでの売り上げが一定量あったりなど結構いい感じにいっているようだ。
だが。
「違う……ッ! 我が望みし理想郷は違う……ッ! 金色に輝く作物を作らねばならぬのに……ッ!」
「そうネ。今の今まで金色の作物のヒントはないワ」
「私も探してはいるんですがぁ……」
「え、金色に光る作物? それならあったっすよ?」
と、突然ヒバナが衝撃の事実をぶっこんできた。
あった?
「どこに!?」
「いや、うちの畑に一つだけ……。さっき確認したらあったっすけど……」
嘘だろと思いながら見に行くと、たしかに金色に光るカブが一つだけあった。私はそのカブを収穫し鑑定してみる。金のカブと表示されており、本当に金のカブが出来上がっていた。
えぇ? マジでできとるやんけ。
「できてる……」
「どういうことだ……? なにか金の作物へと昇華する条件があるとでもいうのかッ……!」
「かもしれませんねぇ……。それを偶然満たしてしまったから出来たんでしょう……」
「とりあえず食べてみましょーよ! でもこれ一つしかないから一品しかできないし食べれるのは一人だけっすけど……」
「それなら食べるのは決まっているだろう」
「そうネ」
「我らがリーダーが食べるべきですねぇ」
「私?」
私がどうやら金のカブを食べることになったようだった。
厨房へ移動し、ヒバナは料理を作成していた。私の目の前に出されたのは金のカブの浅漬けという料理だった。
黄金色に光り輝く浅漬けなんて見たことないぜ……?
私はそのカブを一口食べてみる。
「……うめぇ。なんていうんだろ、カブはカブなんだけど甘味がすごいっつーか……。フルーツかっていうくらい甘い!」
「でも不思議なんすよね。この金のカブ。バフ効果がなくてその代わり種族スキルを一つ得るみたいなんす」
「種族スキル?」
「そうみたいっす。人間だったら人間の種族スキルをゲットーって感じみたいっすね。種族スキルってそう簡単にゲットできませんし……」
「これが手に入れられる唯一の方法になるかもしれないのか」
金の作物で作った料理でゲットするのが主流になっていくとすると、金の作物はやっぱ作れたほうがいい。が、まだ作れる条件がわかんないんだよな。
完全に運なのか、それともなにか作るための条件があるのかもわかんないし。
私はカブの浅漬けを全部食べた時、頭にアナウンスが響き渡る。
《種族スキル:宵闇神楽 を取得しました》
ということだった。
スキルをゲットできたようだ。宵闇神楽……。効果はというと、敵と自分と味方をとある空間に飲み込んで、私にはバフとHP自動回復を、相手にはデバフと継続ダメージをかけるらしい。
「へぇ。おもろいスキルだ」
「どんなスキルだったんですかぁ?」
「宵闇神楽っていうスキルで……」
「めっちゃおしゃれっすね!」
「ふふふ、イナリ様はスキルも和ネ。見た目も和……」
「試し打ちするか? どんなのか見てみたい」
というので、私たちは魔物が出る平原へ移動し、私は宵闇神楽を発動してみた。
すると、結構広い範囲に突然石畳が現れ、祭りと書かれた提灯が吊るされている。まるでそれは祭りのような感じだったが、この光景とあわせると少しシュールに思える。
まるでそれは日本の縁日のように。祭りが開かれて、たしかにパーリーピーポーだ。
「強制的にアンテたちとは切り離されるのか。別空間に移動させられた感じだな」
私は適当に魔物を倒すとスキルが解除される。
「突然消えましたけどそういうことっすか?」
「そうそう。私だけのエリアを展開するみたい」
なかなか面白いスキルだ。




