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金のダチョウ

 VR世界での醍醐味は戦闘、暮らしもそうだが、グルメでもある。

 技術の進歩はすごく、ゲーム内でも味覚を感じることができるのだ。美味しいものを食べれば美味しいし、不味いものは不味い。


「うん、イケるぞ! このファンドリーダックの肉!」

「肉が柔らかくて美味しいワ」

「本当だ。これ美味しい〜」


 新たに加入したロロちゃんとフォーチュンと私で依頼を受けて王都より少し南に下った先のチキン荒野に鳥のモンスターを倒しにきていた。

 チキン荒野はその名の通り鳥系の魔物しか出ないらしい。空を飛ぶ鳥の魔物、ダチョウのように地面を走る鳥の魔物、水辺で暮らす鳥の魔物。

 鳥の魔物の理想郷(ユートピア)とも呼ばれてるらしい。


「ゴールドオーストリッチ……見かけないワ。レアとは聞いているケレド」

「そうだねぇ〜。シルバーは見かけたんだけどね」

「……なんか土埃をあげて走ってくるぞ?」


 私が見た光景は金色に光り輝くダチョウがものすごい群れで迫ってくる様子。

 火を消し、私はメイスを握り締めダチョウに向かっていくが。私の横を速く通り過ぎた。


「はええ!?」

「なんノ……! ロープひっかかっ……」

「フォーチュンちゃん!?」


 ロープを投げて引っ掛けたフォーチュンがダチョウに引きずられていた。それを全力ダッシュで追いかけるロロちゃん。

 私も全力で追いかけることにした。あまりにも一瞬ギャグっぽい光景で戸惑ってしまった……。


「アワワワワワ」

「フォーチュン!!!」

「フォーチュンちゃん!!」


 ものすごい勢いで引きずられるフォーチュン。

 私はなんとか全力ダッシュで追いついて私も縄を手に取る。そして、思い切り踏ん張った。

 ダチョウの勢いは弱まるが、力が強く引きずられそうになる。


「ロロちゃん早く決めてぇ!?」

「わ、わかった! どりゃああああああ!」


 ロロちゃんは剣を使用している。

 剣でゴールドオーストリッチを叩き切るロロちゃん。オーストリッチは倒れ、羽根と肉とタマゴをドロップした。

 タマゴはものすごくデカく、私の顔ぐらいあるサイズの卵。金色に光っている。


「依頼達成〜!」

「ふぅ。疲れたワ」

「ダチョウって美味しいのかなぁ」

「食べてみる? 納品すんのはどうせ羽根だし」

「だねだね! シンプルに焼こう!」


 というわけでダチョウの肉焼きを作ってみた。

 食べてみる。食感はとても柔らかく、筋がない。味は結構イケる。

 というか……。


「下手な和牛より美味しいぞこれ」

「だねぇ! うまー!」

「フンフン。脂肪がそこまでないからさっぱりとしてるわね。走り続けてるから筋肉がすごくて筋がものすごいかと思ったけどないワ。現実のダチョウと同じ味ネ」

「フォーチュン食べたことあるの?」

「あるワ。ダチョウは美味しいのヨ」


 そうなんだ……。


「じゃあ卵は? よくゆで卵とか聞くけど美味いの?」

「その見た目からは考えられないほど上品な味ヨ。ものすごく淡白なノ。クセがそこまでなく、濃厚なコク……。ものすごく美味しいワ」

「……ゴクリ」


 フォーチュンってなにか紹介するの上手いよな。マジで現実でも食いたくなってきた。

 ダチョウの肉ね……。ネットで売ってるからポチってみよう。


「卵は私もあるよ! 美味しかったなぁ。私の好物ランキングに堂々と入ってくるぐらいには好きだよ!」

「マジで……」

「ならこの卵、食べてみル? 売っても高そうだけれド」

「うーん……」

「卵はヒバナに調理してもらいまショウ」

「……そうだね! ダチョウの卵か」


 気になるぅ。

 私はウイングを呼びだし、王都に帰り依頼者にゴールドオーストリッチの羽根を納品し、急いでヒバナのところに戻った。

 ヒバナは目を輝かせて金の卵を眺める。


「すっげぇーーー! この卵で何作るっすかね!?」

「スクランブルエッグとか?」

「オムレツがシンプルで一番いいワ」

「そうっすね! スクランブルエッグとオムレツを三人前作らせていただくっす!」


 そう言って卵を割り調理し始めたヒバナ。

 そして、私たちの目の前にオムレツが乗っかった皿が出された。


「新たなレシピ獲得っす! ゴールドオーストリッチの卵オムレツ、完成! 結構いいバフ効果持ってるっすよ!」


 私は一口食べてみる。

 うわ、上品……。ダチョウの見た目からは想像できないほど卵すごい上品。

 上品ではあるが、コクもある。鶏卵と比べてどうかと言われたら私、こっちの方が好きかも。


「うまっ!」

「っすねー! この上品な味わい、それでいて主張もしてくる強かさ……。うーん、最高!」

「美味し〜!」

「ウンウン。この味ネ。バフ効果もすごいワ」

「……ほんとだ。移動速度200%アップ?」


 私は試しに立って歩いてみる。ものすごく早い。

 まるで世界の時が加速してるような感じ、めちゃくちゃ足がスラスラ動くんですけども。私、とうとうメイドインヘヴンを発現させたか?


「はやいっすー!」

「でもスピードの制御難しいね!」

「ふー。なんとかたくさんレベル上がりましたぁ。あとは各地に散らばってるレシピを見つけるだけですねぇ」

「だね! あ、ちょ、スコティッシュそんな急に開けたら!?」

「ふぇ?」


 私はスコティッシュとぶつかった。

 速すぎて、どちらにもダメージがあった。













 

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