棄権
私はママとともに棄権した。
ママもさすがにさっきまで相手していた都城 桜の対応で疲れてもうやる気ないらしい。
ママは私の拠点で愚痴を吐いていた。
「なんであんな子がアローライフにいるのよぉおおおおおお!」
「さぁ……」
「ほんっと最悪! あの子のおかげで配信では名前出しづらいし、コラボしたらしたで都民たちがコメント欄を自治し始めてアンチコメントを見たら荒らしてるし! 本人もそれを許容してるし! アンチだって見てくれてんだから少しは大切にしろっての! アンチだけならまだしも、こういうことを改善したほうがいいとか言うコメントも荒らしてるのよ!? 改善点くらい受け入れろーーーーーー! プロぶってんじゃねぇええええええ!」
荒れてる。
ママ、すごい荒れてる。ママはアローライフという事務所でも結構最初のほうに所属していた古参勢なんだよな。都城 桜は第5期生だったか。
ママは一応第2期生。一応先輩なのになんでこんな心労与えられてんだ。
「アローライフも今9期生が出ましたもんねぇ。5期生も古参くらいにはなってきますしね」
「でも私は2期生なのよ!? なんであんな生意気な態度取られるの!? 登録者数だって私のほうが上なのに”面白さは都城 桜が圧勝だな”だよ!? チート使っておいてなーにが面白いじゃボケぇ!」
「ママ落ち着いて……」
「都民はわざわざ私の配信に出向いて都城と比べるなぁ! 私の配信で名前出して比べるなんてマナーがなってないし、注意して私のリスナーたちが注意しても本当のことだしって謝りも逃げ出しもせずレスバするしさぁ! 本当にどうなってんの!? 自分のリスナーくらい少し制御しろやぁ!」
「ママのリスナーはみんな優しい人だから心配ないんですけどね」
「これを都城に行ってごらんよ! 都民が言うんならそうなんじゃないんですか? 少し改善したほうがいいですよ?っていうに決まってんだよ! マジでむかつく! さっきもそうだったしさぁ!」
ママがめちゃくちゃ荒れていた。
「……ママ、そろそろ私配信したいんだけどいい?」
「わかったわ。私、映るぅ」
「いいですよ。じゃ、カメラ飛ばしますね」
私はカメラを飛ばす。
配信再開ってことでコメント欄では待ってましたっていう言葉で溢れた。が、背景が変わっていることに驚いていた。
「実はね、さすがに協力して集めるのってフェアじゃないじゃん? ママにそう言われてさ、私もそうだなって思って棄権した。これに関しては本当にごめんなさい」
『謝れて偉い』
『棄権して偉い』
『棄権したらどうなるの? 途中までのポイントでスコアつけられるの?』
「いや、棄権した時点でポイントは全部なくなって、私がポイント換算したものが全部元に戻るって言ってた。だから私は順位に乗らないし、賞品ももらえないよ」
私は棄権した際のことを説明し、一応はわかってもらえたようだ。
弁明って大事。すると、一人のリスナーがコメントを残した。
『今ルールが変わって2時まで1000P以下のプレイヤーは強制棄権になるそうですよ』
と。
「マジ?」
『ほんとだ。まぁ。0Pのプレイヤーって少ないしな。それ以外はみんな1000越えてる』
『今からだと間に合わないよな』
『となると、イナリと同じことしてた貢ぐプレイヤーが全員棄権になるのか』
運営も対策を立てたか。ちょっと遅かったな。
運営も会議を開いて公平性に欠けるという話が出たんだろう。それは本当にごめんなさい。
「二人で分け合いながら集めるとかならまだいいんだけどね……。さすがに貢がせるのはフェアじゃないって判断したんだね」
『個人戦なのに個人が優位じゃないと』
『上位3名の名前が出てその人たちその集めさせたポイントが減るらしい』
「え、マジ?」
『玉藻イナリは棄権し謝罪したと出てる』
「晒されてて草生える」
運営も許せなかったんやな……ごめんなさい。
『やった人、全員炎上するなこれ』
『イナリは自らやめたからまだマシじゃね? というか、この名前出てる3人Vだし』
『都城って人結構炎上してる記憶がある』
『イナリさんも謝罪動画撮って投稿したほうがいいかも』
「ですよね。はい。まじで謝罪動画出します。いや、うん……。私も止まるべきでした」
大反省です。




