シースネイクを探して ②
私たちは波の洞穴に入っていく。
波の音が洞窟内に響き渡り、隣には海水が流れ込んできていた。シースネイクはボスモンスターでもないらしいので、普通に湧くらしいがレアらしい。
さらに、シースネイクにはさらに珍しいレア個体もいるという話を聞く。
「プチクラーケンだ」
「軟体類はちょっとな……」
「戦えよ!」
私はメイスでプチクラーケンをぶん殴り倒す。
なんで戦う意思を見せないんだ。生類憐みの令でも発令されてるんか?
「ほら、イカってうにょうにょしてて嫌じゃないか」
「蛇だってにょろろんしてうにょうにょしてるようなもんだろ!」
「は、爬虫類を馬鹿にするな! 蛇様は特別さ! あの鱗、長く細い舌……。どこを取っても素晴らしいものだろうが!!」
「なんで逆ギレされてんの!?」
カメゾーって爬虫類しか本当に目に入ってないんだから……。と、カメゾーの後ろを見た。私はカメゾーに後ろを振り向かせる。
「カメゾー、後ろ……」
「後ろがどうかしたかい?」
私の視線の先にはピンク色の大きい蛇がいた。
もしかしてあれがシースネイクの特殊個体といわれるもの……? 特殊個体は全部Aランク以上に区分されてるらしいが……。
だが、カメゾーが振り返った瞬間、そのピンクの蛇は海に潜った。
「なにもいないが」
「いや、さっき……」
「まったく……。先へ進もう。シースネイクの特殊個体……。君の運の良さなら出会えるはずさ」
「さっきいたっぽいけど……」
その時だった。
先ほどのピンク色のシースネイクが私の足に巻き付いてきた。私は思わず転んでしまう。
「ピンク色のシースネイク……! やはり運がいい! 特殊個体だ!」
「ちょ、締め付けて殺すつもりか!? そうは……」
「待て! 嘘だろう? おい、嘘だと言ってくれないか?」
と、動揺していた。
シースネイクのほうを見ると、私にすりすり頭をこすりつけて殺すつもりはなさそうだった。むしろ、カメゾーのほうを向いてシャーと威嚇している。
こんな大きな蛇……! 丸呑みされるにはもってこい……じゃなくて。
「何してるんだ?」
「求愛している! ダメージを全く負っていないとなると、懐いた……? そんな馬鹿なっ!? 僕ではなくイナリに!? 嘘だと言ってくれハニー!」
「誰がハニーだ! ったく……。しょうがないから懐かれたんなら殺すのもあれだし……テイムするか? 仲間になるか、蛇さん」
そう聞くと、蛇はこっくりと頷いた。
私のテイムリストにシースネイク(特殊個体)が追加されたのだった。シースネイクは私をほどき、私の横をにょろにょろと這う。
一方、カメゾーは狙いだった特殊個体を私に取られたというか、懐かれた悔しさから涙を流していた。
「寝取られた気分だ……」
「そこまで?」
「人のものを取ったら泥棒なのだ!」
「とってないし……。むしろ……エキドナのほうから近寄ってきた感じだしぃ」
「エキドナ!? 名前も付けたのか!? くそ、羨ましい……! イナリぃ! まだ僕に付き合え! まだ探すぞ特殊個体」
「えぇ!? 私としてはもう任務終わった感じなんですけど!?」
「うるさい! 僕はなんとしてもピンク色のシースネイク、マザースネイクが欲しいのだ! 序盤では珍しくAランクの魔物であるし、進化するらしいから強さも申し分ないからな!」
「えぇ!?」
ムキになってしまったカメゾー。
カメゾーは半ば強引に私をひっぱり、波の洞穴を連れまわす。エキドナは嬉しそうに私のそばから離れなかった。
波の洞穴から出られたのは午後9時くらいだった。
ちなみに、出会うことはなく、また明日も捜索するらしい。よし、逃げよう。




