幸運のおイナリ様
北海道の焼肉店で、私はオレンジジュースを飲み干していた。
「やっぱ北海道はあらゆる食べ物が美味いわねぇ〜! こんな美味しいものばかり食べられるイナリちゃんが羨ましいわ〜!」
「あの、私もいいんですか? お二方と比べると本当にみじんこみたいな存在なのですが……」
「そんなこと気にせず食べましょーよ! ほら、ジンギスカン焼けましたよ〜」
私は打ち上げみたいな感じでメロンさんと焼肉店に来ていた。
焼肉店に来る最中、ママから連絡があり北海道に旅行に来てるらしく、おすすめの店とかないか聞かれたので焼肉行きませんかと誘ったら来た。
「チェーン店でもなくこんな穴場あったのね〜。こじんまりとした店だけど結構いいわ……。玉ねぎも美味しいしピーマンとか椎茸も美味しい〜!」
「北海道は食材の宝庫ですからねぇ」
私は肉をご飯にワンバウンドさせ、頬張りそのまま白飯をかっ込む。
うめぇ〜!
「あ、ああ、あの……。本当に、私なんかが……」
「やぁねぇ。そんな辛気臭い顔してないで肉食べなさい。ほらほら。今日は私の奢りなんだから」
「ですが……。母海さんとはまだ関わったこともないです、し……。弱小ですし……」
「そんなの気にしないわよ。イナリちゃんの友人なんでしょ? イナリちゃんは少し変態気質だけどいい子だもの。友人もいい子って決まってるの」
「類は友を呼ぶって言いましてね」
「そんな遠慮してたら生きづらいわよ〜? もっとリラーックス……。あ、すいませーん! 生追加でー!」
私は肉を食べ進める。
「ここ、ラーメンとか出すのね。締めとしてかしら」
「ですです。辛ラーメンってのおすすめっすよ。ヒートアップした体をさらにヒートアップ!」
「気になるわ〜! まだ余裕はあるし頼むのは先になりそうだけど後で頼むわ」
「私も頼もー! メロンさんは?」
「で、では……」
「オッケー! じゃあ追加の肉頼みます? 何がいいっすか? メロンさん」
「えっ」
メロンさんは自己肯定感めちゃくちゃ低い。
でもそんなこと気にしてないとわかってもらわねば。
「私はなんでも……」
「んー、ならねぎ塩牛タンと……」
「ジンギスカンとホルモン追加でよろしくねぇ」
「りょーかいっす! すんませーん!」
私は肉を注文し、少しSNSを見ていた。すると、トレンドに勇者メロンというものが浮かび上がっている。
なんで……?と思い見てみると、さっきまでのアーカイブが拡散されてめちゃくちゃ話題になってるようだ。トレンドとしては本当に下のあたりだけどそれでも30位以内には入っている。
「メロンさん、これ」
「なんです……え?」
「トレンド載ってます!」
「えっ、えっ!?」
「あら、おめでとう! 新衣装でも発表したの?」
「いや、してない……です、けど……。なんで?」
「勇者としてずーっと演じられたからじゃない? めちゃくちゃ勇者っぽいって言われてるよ。よくないツイートもあるけどそれでも私のファンがめちゃくちゃ拡散してくれてる」
「見どころとか全然作れなかった気がするのにこんなに……?」
「幸運のイナリ様々ね。イナリちゃんってコラボすると不思議なくらいいいことあるの。まるで神様みたい」
「幸運の女神と呼んでくれたまえ?」
私の溢れ出る幸運パワーが周りを幸せにするのだ。
「チャンネル登録者めっちゃ増えてます……! な、なな、なんで? 一気に600人増えました!?」
「私、イナリちゃんって本当の神様なんじゃないかって常々思うのだけどどう?」
「さぁ……。歯以外は人間ですし……」
「でも、過去に次代のイナリ様とか言われてたじゃない? もしかしたら、その力なんじゃないかしら」
「まっさかぁ。そんな非科学的な……」
「でもその日から歯が変化したのよね?」
「……………まぁそうですね」
まさか私は神様なのか!?
名前書いたら死ぬノートとか持ってないのに新世界の神になれたというのか?
「まぁ何はともあれおめでとう!」
「あ、ありがとうございます! イナリさん、母海さん!」
「よーし、じゃ、じゃんじゃん飲みなさい! お姉さんの奢りだから!」
「はいっ!!!」
「メロンちゃんは成人してる?」
「今21です」
「じゃあ一緒に飲みましょ! 酒大丈夫?」
「一応父に似て強い方です……」
「ならイケるわね! 店員さーん! 生一つ追加でー!!」
私は未成年だからオレンジジュースで我慢しますよ……。
私もオレンジジュースを追加し、ママが音頭をとった。
「じゃあ勇者ちゃんの伸びを祝してかんぱーい!」
「「かんぱーーい!!」」




