勇者メロン
夏休みが近い。
今年の夏休みはうんと配信して、うんとゲームして……。ゲームを楽しむためには宿題はなるべく少ないほうがいいよな。
今年の夏休みもあまり予定はなさそうだから配信はたくさんできそうだ。しいて言うなら留萌という市にいるおばあちゃんの家にいくことぐらいだろうか。
「んあー……今日も頑張って配信するかぁー!」
と、意気込んでヘッドギアをかぶったとき、通知が来たのだった。
私は誰だ?と思いつつ、届いた通知を見る。TwitterのDMだ。たまーに来るんだよな。変なスパムとか。仕事の依頼とかそういうのがあるからDM解放してるんだけど……。誰からだろ。
と思っていると。見知った顔だった。
「うわ、めっちゃ久しぶりの人じゃん! 女勇者メロンちゃんじゃん。なっつ」
女勇者メロン。
勇者という設定のVTuberだ。私と同じくらいの時期に個人勢としてデビューし、今でも細々と配信を続けている。
コアなファンはいるがいまいち伸び悩んでいるっていう悩みを呟いていた。
『あの、人気なイナリさんにあやかる形になるかもしれませんがコラボしませんか……?』
とコラボのお誘い。
まあ断る理由ないし、勇者メロンちゃんはリアルでも会ったことがある。ものすごいいい子で胸がデカいんだよな。メロンっていうぐらいだから。
『いいですよー! あまりかしこまらず、私のほうが年下なんですから、私の対応は適当でいいですよ』
『いいんですか!? でも適当というのはさすがに……。本当に私人気ないので……』
『人気とか関係ないですよ! って私が言うと嫌味に感じちゃいますね。すいません……。コラボいつします? 私のほうはいつでもよろしいですよ!』
『そ、そのコラボなんですが、ゲームでやりませんか? 私もイナリさんと同じ王都にいったので、王都で一緒に配信出来たらなー……と』
『わかりました! 王都の広場で待ち合わせしますか?』
『私がイナリさんの拠点のほうに向かいますので!』
『わかりました。では、配信はいつ行いますか?』
『今日の夜からやろうと思って……。急ですいません……』
『全然オッケーです! ではゲーム内で会いましょう!』
そこでメッセージが途切れる。
こういうのDMであまりやりたくないからやっぱり連絡用にLIMEとかでもインストールしておくべきか……? そっちのほうが連絡手段としてはいいよなー。
私は思い立ったが吉日ということでアカウントを作り、私の知り合いとかにDM経由で送っておいた。
「さ、ゲームゲーム!」
私はログインし、拠点でとりあえず勇者メロンを待つことにした。
勇者メロンはすぐに来ていた。見た目が特徴的なんだよねいっつも。どのゲームでも金色の鎧を着て剣を腰に差す勇者スタイルでいる。
見た目も勇者メロンだ。
「こんにちは。本日はよろしく……」
「そんなかしこまらなくていいですって! かしこまられると私が逆にやりづらいです」
「そ、そう?」
「人気とか不人気とか……。メロンさんは気にするかもしれませんが、私は特に気にしませんし、ほんっとにぐいぐい来て大丈夫ですから!」
「ありがとう……」
年上の人にかしこまられるのはちょっとむず痒い。




