天馬イナヅマ
カメゾーに連れられてやってきたのは石の町ストンズの近くにあるストンズ荒野にいた。
コモドドラゴンがここに生息しているらしい。低ランクの魔物ではあるが、一応ドラゴン族の魔物。育てたら強いんだけど本当に見つからないという話は聞く。
そう簡単に見つかるとは思わないんだが……。
「やはりイナリは運がいい! いるぞ、コモドドラゴンが」
「あ、ほんとだ。でもカメゾーのテイムした奴とは大きさが違うな……」
「僕のは進化しているからさ……。ちなみに進化条件は満月の夜にムーンライト草を食べさせることさ。ムーンライト草っていうのが非常に厄介なのだ」
「……ムーンライト草って?」
「始まりの町付近に生息している……月の使者という魔物からドロップするものさ。月の使者は序盤の街にしてはものすごく強いし、湧く確率も低いし、ムーンライト草もレアドロップだし……。低確率の低確率を当てる必要があるのさ。しかも夜しかわかないからおかげさまで昼夜逆転生活を送っていたのだよ」
なるほど。そりゃ厳しい。
私たちはコモドドラゴンを眺めていると、一頭の角と翼が生えた馬が私たちの前を横切ったのだった。
「え、今の何?」
「馬…? 翼もあったわよね」
「ペガサスみたいな……」
「おい玉藻イナリ! 貴様は本当に運がバグってるのではないか!? 今のは超低確率で出現されると噂されていた幻のモンスター、天馬イナヅマだ! 追いかけるぞ! テイムしたい!」
「マジで!?」
「マジさ! 幻と噂されているモンスターは非情にテイムがしやすい! ここにいる全員でテイムして誰が最初にテイムするか勝負しよう!」
「そんなに捕獲率が高いの?」
「出現する確率が低確率だからな! そこまで低確率にして捕まえられず死んでしまったら会えるかわからんだろう? そこらへんは優しい運営さ!」
私たちは走ってさっきの馬を追いかける。
天馬イナヅマは泉で水を飲んでいた。すると、天馬イナヅマはこちらに気づいたのか、警戒態勢をとっている。
攻撃してこない辺り性格は温厚に思えるが……。
「テイムするにはどうしたら?」
「モンスターとの親愛度をあげればいい」
「親愛度?」
「モンスターには親愛度が設定されていてな。捕まえる際、撫でたりして親愛度を上げるとテイムできるのだ。たとえばモンスターの好物を上げたり、ピンチのところを助けたり……。いろんな方法がある」
「へぇ……」
「で、人によって最初から親愛度が高いパターンがある。モンスターが好むステータスをしていたりするのだ。そして、初期設定で懐かれやすいモンスターというのも決まってるらしい」
「懐かれやすいモンスター?」
「ああ。個人個人設定されていて、その人が一番何に懐かれるか……。その懐かれやすくなってるモンスターはわからんが……そういうデータがあるようだ」
「となると、もしかして天馬イナヅマにもそういうデータがあると?」
「一部のテイム不可能モンスター以外には全部存在している」
そういう仕組みがあったのか。
人によって懐かれるモンスターは違うらしい。
「天馬イナヅマ……。調べたとおりの見た目だ。だが、おかしい。警戒心が強く普通は逃げるはずなのだ」
「でも逃げてませんよぉ……?」
「この中でもしかして懐いてる人いるんじゃないかしら」
「だろう。それと……その視線から見るに懐いているのはイナリだ。イナリ、お前とことん運が良すぎるだろう。懐かれやすいモンスターに設定されているようだな」
「まぢ?」
私は天馬に近づく。
天馬に手を伸ばすと、天馬は私を受け入れ、撫でてあげると受け入れてくれていた。
《天馬イナヅマがテイムされたいようです》
「うん。うちの子にしよう」
「ヒヒィン!」
うちの子になった。
ちょろい。運が良すぎるぜ。
「名前は……ウイングだ! 飛ぶから!」
「安直ね」
「くそ、羨ましい……! だが、幻のモンスターは強いぞ」
「だねぇ。よろしくねウイング」
「ヒン」
と、ウイングは私を口で加え放り投げて上に乗せる。
一緒にいた三人も放り投げては背中に乗せて走り出した。そして、翼をはためかせ、空を飛んでいる。
「うお、すげぇ……」
「もとより人懐っこい性格だったのか……?」
「モンスターにも性格ってあるんですかぁ……?」
「ある。人懐っこいモンスターもいて、人懐っこいモンスターはテイムできる確率が高まってる」
「なるほど。だからこんなに温厚なんですねぇ」
ゲームで空を飛んでいる。
ウイングが仲間に加わった。




