動物愛護団体
スコティッシュの鍛冶場では、案の定スコティッシュが鍛治レベルをひたすら上げる作業をしていた。
ゲームのアバターは汗をかかないが、それでも真夏の日にあんな熱がすごそうな高炉の近くにいるだけで汗が出てきそうだ。
「あ、イナリさんどうしたんですかぁ? あ、そちらはママさんですねぇ」
「はい。ママこと母海 ちひろです。スコティッシュさん。あなたのことは前作からも聞いてるわ〜」
「そうなんですか! 嬉しいですぅ。私、そこまで有名なんですねぇ。今作もそれぐらい有名になれたらいいな……」
「慣れるわ! 自信を持って!」
「だといいんですけどぉ……。それよりイナリさん……。大亀の甲羅ってありません、かぁ?」
「大亀の甲羅? 何に使うの?」
「えぇと、大亀の甲羅を追加して入れた武器は固くなって少し攻撃力が増すみたいなので皆さんの武器にアレンジとして入れようかと思いましてぇ……」
「そうなんだ。でも残念。ないんだなこれが」
大亀はまだ討伐したことがない。それどこに出る魔物なのかも知らない。
「私持ってるけど渡せないわね……。レア度が5だからクラン入ってないし違うの作ってはいるし……」
「金かかりますね」
「金かかってもいいならあげるわ。一応最低額が100円だから100円はかかっちゃうけど」
「いいんですかぁ!? 譲っていただけると嬉しいですぅ……。その、お返しはあまり出来ませんが……」
「いいのよ。なら、トレードしましょ」
ママとスコティッシュはフレンド交換してトレードを行なっていた。
スコティッシュは素材をゲットできて嬉しそうだ。
「ストンズからまるまる飛ばして王都まで来たんで大亀の甲羅とか知らないんですよね」
「そうなのね。大亀の甲羅は道中の小さな沼地に生息してる亀の魔物よ。物理があまり効かない厄介な敵なのよねぇ」
「まぁ亀ですしねぇ」
「そこで亀を狩ってた時ね、あの動物愛護団体がいたの」
「……あの?」
「動物愛護団体ってなんですかぁ……? げ、現実の……」
「とは違くて、前作で有名だったテイマーズクランなの。テイマー以外の入団を禁じ、各々で自分のテイムしたモンスターを自慢する大会を週一で開いてたくらいテイマーぞろいのクランよね」
「そうそう! あそこテイマーガチ勢で戦うのは魔物のみ、武器類の使用は認めず武器を使ったら即脱退でしたよねぇ。あそこは奇人変人だらけで友達にしてたら面白いですよ」
「そうなの。で、友達になったわ。で、フレンドになったのがカメゾーってやつでね」
「ああ、あの大の爬虫類系愛好プレイヤー……。めっちゃ伝説残してる人ですね」
「え、ええ?そんな有名なお方なんですかぁ?」
あれは有名にも程があるくらいだが。
カメゾーには負けたことがある。私も前作ではそこそこ負けなしで強いという自信があったがあいつの育てた魔物には勝てる気がしない。
「カメゾーはやべえぞ」
「やばいわね」
「お二方がそんなにヤバいって言うほどですかぁ……?」
「カメゾーはマジの変人だからな」
「そうねぇ」
「そうだねぃ」
「そうなんですかぁ……。って誰か増えてます!?」
「あ、カメゾー」
「やぁやぁ久しぶり。前作ぶりだね玉藻イナリくん。ここが君の拠点か。いい拠点だ。だがこう……もう少し乾燥が欲しいところだね」
カメゾーが立っていた。
「カメゾー、また爬虫類集めてんの?」
「もちろんさ! 紹介しよう、僕がテイムした最愛の魔物たちさ……!」
カメゾーは魔物を召喚する。
亀の魔物、トカゲの魔物……。トカゲの魔物、蛇の魔物がいた。
トカゲの魔物に関してはなんか珍しいというか……。
「おいこれ最初の街にはいないやつだろ」
「そうさ。なんてったってコモドドラゴンから進化したものだからね」
「コモドドラゴン? そんなん出るの?」
「石の町ストンズ付近の荒野で超低確率で出現するのさ……。見てくれたまえこの鱗……。ペロペロしたいくらい美しい……!」
「……そんなのを持ってるなんてお前さすがだよ。もう進化もさせるくらい気に入ってるみたいだし」
「大変だったよ。進化条件が特殊だったからね……。流石の僕でもしばらくはやりたくない……」
「お前がそこまで言うなんてどんだけ……」
そこまで厳しい進化条件なのかよ。よくやったなそう考えると。
「よければコモドドラゴンをテイムしにいくかい? 噂では爬虫類ではないがコモドドラゴン以上に超珍しいモンスターがいると聞く。イナリさんの運ならばきっと……いや、絶対出会えるだろう」
「……そんなのいるんだ」
「ああ。だから……イナリ。お前もテイマーにならないか?」
「ならない」
私は何かを育てる才能がそこまで無いんだよ。カメゾーみたいなバカみたいに魔物を改造できるわけないんだよな。
乗り物系統なら欲しいけど。移動に。
「即答っ……! だがまあいい。早速向かおうではないか! 玉藻イナリ! 母海ちひろ! スコティッシュホールド!」
「す、スコティッシュなんですけどぉ……」




