私の体の不思議
ゲームを終えて、私は配信を開始していた。
雑談配信ということで、Vの体を狩りている。視聴者はなんで実写じゃないのといわれたが、私は一応Vで活動してると堪えた。
一応ってな……。最初はVから始まったのになんで一応ってなってんだろうな……。
「もう顔バレとかいろいろしてるし今更Vである必要はないと思うけど……。でもVとして活動していたほうがいろいろとコラボしてもらえるしお得なんだよねぇ。アバターがあるのって超便利」
『そうなんだ』
『Vの人たちと交流できるもんねぇ』
『ってかイナリちゃんって現役JKだけど収益ってどうしてんの? 親が管理してんの?』
「まぁまだ未成年だからねぇ。収益はちゃんと私の銀行口座に入ってるよ。あまりお金の話は生々しくていやだからこの辺で。現役JKである私に質問があればよろ~。生々しい話はダメね~」
私はコーラを飲みながら視聴者の質問に答えていた。
すると、赤スパが飛んできて不思議な質問があった。
「カンナギさんありがとー! 質問? これまでで不思議な体験をしたことはありますか……不思議な体験ねぇ。そんなのはゲームでいくらでも経験してるけど現実でってことでしょ? 何個かあるな」
結構前には人間の人格をスマホの中に入れるという開発をした人がいた。
だが、その発明は人類の衰退を意味するということで開発禁止となっている……とか、そういう不思議なことがたまに起きたりするんだよなこの現実でも。
私も小さいころ、そういう不可思議なものに出くわしやすい体質だった。
「私が小学校2年生くらいの時だったかな」
『ロリイナリ!?』
『わくわく』
「私、キツネって好きなのよ。本名もバレてるから言うけど、本名が希恒って名前なのね? で、おじいちゃんの家にお盆とかそこらへんに行ったときにちょうど神社で夏祭りやってたのよ。人は決して多いとは言えない田舎の神社祭りなんだけど、それでもちょうどお盆だから帰省していた人と書いてさ。珍しく人でごった返してたわけ」
あの夏の日、私は不思議な体験をした。
「わたあめとか射的とかいろいろあって……私はとりあえず神社でお参りしようってことにしたのさ。そこら辺の屋台で買ったキツネのお面をつけて」
『ふんふん』
『わくわく』
「神社の石でできた階段を上っているとね、不思議なことに静かになったの」
『静か?』
『田舎なら神社で静かになるのは当たり前じゃね?』
「普通ならそうなんだけど、お祭りやってた時期って言ったでしょ? で、そんな静けさに疑問を持ちながら石段を歩いてたのね。一歩、一歩と。そして、最後まで上がったとき、社には一匹のキツネがいたんだ」
思い出す小学二年生の夏。
「”次のおイナリ様が来た”って言ってその狐はいなくなったの。キツネがいなくなって、いきなり音が戻ってきてさ。ついてきたおじいちゃんがひいひい言いながらやっと上ってきてキツネのことを尋ねてみたんだよね。こういうホラーっておじいちゃんとかよく知ってるじゃん? そん時からホラゲーとかマジで好きだからそういうのかもって思って聞いたんだけどおじいちゃんもなーんも知らなくて。おばあちゃんにも、隣のおばちゃんにも聞いてみたんだけどなんも知らないらしくて」
次のおイナリ様って何なんだろうな。
「で、今もそのマジで不思議なことがあるんだけど、私って犬みたいに鋭い犬歯が生えてるんだよね。まじで。人間のものじゃないってくらい不思議な犬歯。その夏祭りの夜、歯が抜けて生え変わったらものすごく尖ってるんだよ」
『現物みたい』
『載せて』
「見る? 閲覧注意ね」
私は今、インカメで私の歯を取り、アップした。
『うわ』
『鋭すぎるやろ。これ犬みたいな感じの牙じゃん』
『なにこれ……』
『ガチのホラー出してくるのやめろ』
「で、私考えたのよ。もしかしたら私って神様になるんじゃね? と。イナリ様って、もうそれでしょ? だから私はイナリ様になるんだよ。性欲をつかさどるのかな」
『絶対違うやろ』
『ガチでミステリアスやん。なんかの怪異に気に入られたのか?』
これ今でも不思議なんだよね。
たまに刺さるから嫌なんだよこれ。しかもこれのせいでちょっと歯並び悪いし。人間なのに歯が犬とかそういう感じなの嫌じゃね?
『一部ならわかるけどなんで全部尖ってるんだ』
『奥歯も鋭いしどういう体してるんだ」
「私にもわからん……。でも肉食う時は便利だよ? 噛み千切れるし」
『まんま肉食動物のそれ』
不思議だよね。




