誰がエデンに入るのか
私たちはとりあえずマルーンたちのもとへ急いで向かう。
あっちも石板の付近にいる強力な魔物を相手しているはず。無理ならば逃げろとは事前に言ってあるし、倒せない場合も想定して体力を温存していたが。
人影が見えてくる。目の前にはラクダのようなデカい魔物がいて、めちゃくちゃ苦戦してるようだった。
「よし、長男! あのラクダをぶったたけ!」
「アギャァ!」
ミーア兄妹長男が私を乗せて走り、思い切り飛び上がったかと思うと右手のストレートがラクダのこぶをたたき割る。
ラクダは思い切り痛がってこちらを向いた。
「大丈夫?」
「イナリ様!」
「案外、早かったわネ……」
「イナリ様ーーーー!」
めっちゃ苦戦してたようだ。
「よし、長男! 一緒にフルボッコにしようぜ!」
「アギャア!」
長男は何度もぶん殴っていた。
私もメイスで何度もぶん殴る。ラクダは攻撃しようにも、どちらに対処していいのかわかっていないようで、そのまま倒れたのだった。
おお、死にかけの時に来たみたいだな。
「アギャァ!」
ガッツポーズをする長男。
「よくやった」
「アギャァ!」
私は長男の頭を撫でた。
「イナリ様……。申し訳ありません……。手早く倒すことができずに……」
「まぁ、マルーンたちも消耗してたしね。仕方ないよ。私は道中戦闘任せてたから万全だったしコンディションが違うから」
「そうっす。あたしも材料があまりないからいいバフ作れなかったし! ちゃんと用意すべきでしたっす」
「見て、Aヨ」
「おお! 占い通りっすね! これで全部っすか? イナリ様のほうはPだったんすか?」
「そうそう。P。場所はここらへんだったから……」
と、私がマップを開いた瞬間、メモしていた場所がマップで光っていた。そして、そのまま光は一か所に集まる。
リパップ荒野の中央部分に集まっていた。
そして、その瞬間、大きな地震が起きたかと思うと、はるか遠くに、デカい樹が生えていたのだった。
「んだあれ……」
「とりあえず行ってみましょう!」
私は4人をミーア兄妹に乗せて、木の方向に向かう。
が、その前には一つの看板があった。フォーチュンはミーアキャットを降りてその看板を読み上げる。
「ここから先は、2人でないと進めなイ。エデンの園は2人まデ」
「まじ?」
「それが本当ならば、ボクたちはこのままだと入れませんね」
「となると、誰が入るんすか!? 取り合いになるっすよね!?」
「わ、私はいいですぅ……。あまり貢献してませんしぃ……」
「エデンを見たくてついてきたのが報われない3人が出るってわけか……。ま、公平にとは言わないよな。ゲームである以上」
私たちはミーアキャットから降りて看板の前に立つ。ミーアキャットもここから先は進めないとわかっているらしく、困った顔をしていた。
私はミーアキャットに告げる。
「困ったら召喚するから行っていいよ。ありがとね」
というと、三匹は敬礼して走り去っていった。
「さて、誰が行く?」
「わ、私は棄権します……。お役に立てておりませんしぃ……。それに、配信しているのですから、イナリ様は確定じゃないでしょうか……」
「そうですね。イナリ様は確定として……」
「異議なしっす」
「異議はないわ」
「いや、私はあるよ」
私は異議を唱える。
「配信してるからって理由で確定になるのは嫌だよ。そんなの不公平でしょ。マルーンも、ヒバナも、スコティッシュも、フォーチュンも。みんな頑張ってきたんだ。それを無視して私だけが確定で入るってのは流石に嫌だ」
「でもぉ……。イナリ様はミーアキャット兄妹も、ラクダも倒しましたし……。謎を解いたのはイナリ様です」
「貢献度で言うならイナリ様が一番っすよ?」
「そうです。ボクとしても、イナリ様にはぜひとも入っていただきたい。これはボクたちの総意です」
「ごちゃごちゃ言わないでさっさと入ればいいのヨ……!」
有無を言わせてくれない。
「では、イナリ様。イナリ様が一緒に入る人を決めてください。誰も文句は言いませんから」
「そうネ。それがいいわ」
「異議なーし!」
「あ、あのぉ。私は棄権しますのでぇ……」
「スコティッシュも選ばれる対象さ。皆公平に。スコティッシュも頑張ったのだから」
マルーンはスコティッシュにそう言っていた。
「禍根残りそー……。じゃんけんじゃダメなの?」
「じゃんけんはダメです。誰でもチャンスがあったと考えると悲しいので」
「それに、あたしじゃんけん弱いんす。じゃんけんだけはなし!」
じゃんけんじゃだめかよ。
「……じゃあ」
私が選ぶのは。




