イナリ包囲網
「みんなー! 元気ー? 玉藻イナリの時間だよー!」
カメラを回していた。
石の町ストンズで、今絶賛、なんか兵士に囲まれている私。なぜこうなったのか説明すると早いのだが、歩いていたら気球を見つけ、見ていると兵士が落ちてきた。兵士は剣を構えて私に向いているというわけだ。
なぜ囲まれてるのかは知らん。
『どうして囲まれてるところからスタートなんだよwww』
『絶体絶命で配信するな』
『ママから来ました。なんですかこの状況』
どうやらママの配信に出たことでママの視聴者もこっちに来てくれてるらしい。嬉しいな。
「で、どうしたらいいでしょう。戦るしかない?」
『しかないでしょwww』
『なんでこのタイミングで配信始めてんだあんた……』
『タイミングを考えろ!』
兵士たちは何を言ってると私のことを奇怪な目で見て来る。
「なんで私を取り囲むか知らねーけど、そっちも戦るってんなら戦ってやるぜ!」
「みな、かかれ! 九尾だからって怯むなァ!」
「九尾なのがいけないの?」
私はメイスを持ち、兵士の一人をぶん殴る。
攻撃をかわし、攻撃を叩き込んでいく。九尾ってそんな攻撃対象になるんですか? 石の町ストンズだと攻撃されなかったけどな。
私はメイスを持ち、兵士一人一人をなぎ倒していく。
「コン!」
「クソ……。こいつ一匹で……!」
「ちょっと待ってよ。私が何をしたのさ。別に何もしてこなかったらしないのに。九尾であることの何がダメなの?」
「九尾は魔人! 人間と敵対する者だ!」
「そうなの?」
「そうだ!」
「なら敵対してるっていう感じの人だったらこういう風に会話しなくない?」
「……それもそうだが」
「私としても敵対する理由ないし! 武器降ろそうよ! 私も降ろすから!」
私はメイスをしまうと、隊長さんらしき人も剣をしまう。
「……お前本当に九尾か?」
「九尾ではあるっぽいけど……。よくわかんないや。九尾って魔人という扱いなの? 魔人ってなに?」
「魔人とは魔物ではないが人間でもないやつの総称だ」
「あー、要するに魔物と人間の狭間の奴だから魔人」
そういう分類になるのね……。
人間とは近い見た目であるが、人間にはない特徴を持ったやつが魔人と呼ばれるらしい。魔人ははるか昔から人間と敵対しているということであり、この包囲網も、魔人から人々を守るためなのだとか。
理由は分かったけどこういうの納得いかねー……。
「そうなんだ……。じゃあ獣人も魔人ってことになるの?」
「獣人はそういう種族だ。魔人とはまた別だ」
「そうなのか」
わからんもんだな……。
「すまなかった。魔人でもこういいやつがいるんだな」
「いいやつっていう判断速くない? 少なくとも話が通じるやつではあるとは思うけど」
「そうだな」
「まぁいいよ。びっくりしたけど……。それで、お詫びはあるよね?」
「……ああ。なにがいい?」
「王都に行ってみたい」
「王都か。わかった。飛行船に乗れ」
「いいの? マジで?」
私はウキウキで飛行船に乗り込んだ。
飛行船はとてもかっちょいい。操縦は甲板の上にある舵輪で行い、操舵手が運転しているようだ。ほかにも、飛行船での料理や掃除のための人員もいて、おっぱいがでかい人もいる。
私は挨拶すると同時に、胸に手を当てた。
「ほぇっ? な、なにするんですかぁ!?」
「おっぱいデカいな……」
「へ、変態!」
「まぁまぁ、同性だからいいじゃあないか……。な?」
「……別の意味で人間には危険かこれ」
そりゃ胸がデカいやつがいたらもみほぐしたくもなるだろう。
『出会っていきなり胸揉むな!』
『こういうところに見境がないからあの人とは別の変態性があるよな……』
『結局胸か! 貧乳に人権はないっていうんだな!』
「豊乳も貧乳もおっぱいには変わりない。女性の胸というだけで興奮するに値するだろ? 豊かな乳、貧しい乳。どちらにもいいところはあるのさ。差別はよくない」
私はデカいほうが好きですけどね。




