廻れ雪月花 ①
私の所持ポイントは現在900ポイント。
天野橋盾、プリティーのコンビから300ポイントをもらい、二人をキルした分を合わせて400、500は自分で集めた。
このゲームは一発逆転というのが難しい。
というのも、ポイントを多く持った相手を倒してももらえるのは10ポイントだけ。キルしたら相手の所持ポイントを奪えるというわけじゃない。
だからこそ、勝負して勝って譲渡してもらうというのが大事になってくる。即死だけはさせないように皆心掛けているようだった。
現在の時刻は午前6時。
まだまだイベントは続く。24時間耐久ともなると、後半は皆、精神がだれてくるだろう。だからこそ、前半で稼ぐ人が大半な気がする。
「ん?」
私は考え事をしながら歩いていると目の前にはVTuberがいた。
あれはアローライフ所属の……。
「廻 雪月花さんだ」
不知火さんと同期の。
廻さんもこちらに気づいたようで、にっこりと笑っていた。
「あ、君がもしかして不知火ちゃんとよくコラボしてくれてる玉藻イナリちゃんかな!?」
「そうですけど」
「うわー! やっと会えたぁ!」
そういって、私の手を握り握手してきた。
「初めまして、私は廻 雪月花です。可愛い女の子が好きです」
「玉藻イナリっす。えっちな女の子が好きです」
「知ってるぅー! 配信とかよく見てるぅー!」
「光栄です!!」
「嬉しいなぁ。でも、初対面がこのイベントっていうのはちょっと嫌だな……。こういう初対面になるなら不知火ちゃんに紹介してもらえばよかったぜクソっ」
「あー」
「もちろん、戦いますよね。いくら推しだろうと、私は一生懸命戦いますとも」
「もちのろんっす。私が勝ったら保有してるポイント全部くださいね」
「オッケー。私も同様の条件で」
「了解です」
私たちは戦いを始めることになった。
私は先手必勝と思い、魔法を放つ。大きな雷を魔法で放つが、廻さんにはヒットしなかった。外したかと思い、もう一度魔法を放ってみるが、どうも手ごたえがない。
もしかしてなんだけど。
「廻さん、もしかして魔法を無効化するスキルとか持ってたりします?」
「……っ! よくわかったね。私、伝えないつもりでやってたんだけど」
「やっぱり」
魔法を放ってもヒットしない。
手ごたえがないのはちょっとおかしい。というか、軌道を見てもヒットする直前に全部魔法が霧散しているように見えた。
彼女は魔法にビビる素振りを見せていない。つまりは魔法攻撃に対してはなんらかの自信があるとみていた。が、本当に無力化するヤツがあるか!
「私のスキルはね、魔法攻撃を全部無力化するの。貫通もしないからね。私も天狐になったあなたのように最後まで進化したんだよ」
「マジすか」
「魔法使いのイナリちゃんと私の相性はちょっと悪いね」
出来レースだったって言いたいんだろうか。
だがしかし。魔法が効かないのなら別の方法をとるまでだ。
「だから私の一方的な蹂躙を……!」
私は懐にもぐりこみ、メイスで思い切りぶん殴った。
「近接……!? 魔法使いが!?」
「ファン歴は浅いみたいですね! 私はもともとメイスを使ってたんですよぅ!」
近接の心得だってもちろんあるのだ。




