分が悪い勝負
橋盾さんはスキルを発動していた。
「私のこのスキルは雀の葛籠って言ってね……。消費魔力量によって中から出てくるものの恩恵が変わるんだ」
「へぇ?」
「どっちが開けるかによっても効果が変わる。私の残っている魔力を全部消費すると、中からは90%の確率で相手を即死させる絶対に当たる剣が出る」
「……それ使ったら勝てなかった気がするけど」
「あくまで90%だし、最後の切り札というのもあるけど、絶対に当たる剣というのは相手に一撃与えるまで消えないってだけで一撃は自ら当てる必要があるし、ガード不能に気づかれたら逃げ回られてるだけでも相当きついんだよ」
なるほど。文面で判断したら強そうだけど、実際はそういう罠もあるのか。
ガード不能だけど自分で当てる必要がある。そこに気づいたらヒット&アウェイで対策されてしまうってことか。よくできたスキルだこと。
「そして、この葛籠を私じゃない人が開けると、全魔力を消費した場合、70%で相手を即死させる」
「さすがに90ではないんだ」
「うん。そこまでは有利にさせてくれないみたい。イナリちゃん、やってみない? もし、イナリちゃんが生き残ったら私の保有するポイントを全部あげる。これは約束」
「口だけで約束されてもな……。口約束だけではどうも信用がね……。でもまぁ、配信してるってことはそういうことはしないでしょ」
炎上しかねないからね。
証人はカメラの外にいるわけだ。約束を反故にしてしまえば、視聴者から叩かれるのは当たり前となる。
私たち二人だけならまだしも、配信をしながらの約束はリスクが高い。
「いいよ。やろう。橋盾さんに超有利なギャンブル。ギャンブルは分が悪いほうが面白い」
「ありがとう。どっちがいい? 私が開けるか、君が開けるか」
「一つ聞くけど、スキルの説明に嘘はない? 本当は100%でしたとか言われたらおっぱい揉むけど」
「嘘はないわ。100%にはならないのよ。魔力を消費することで私が有利にはなるけど、絶対っていうことはないの」
なるほど。100%じゃないのなら別にいい。
私は運がいいほうだから……。きっとつかめるさ。
「……っし。じゃ、橋盾さんが開けてよ。90%で生き残ったほうがかっこいいし!」
「わかったわ」
橋盾さんは目の前に出現した葛籠を開けた。
葛籠の中には一つの剣が入っていた。橋盾さんはその剣を手に取って私のほうに向ける。
「覚悟はいいかしら」
「できてる」
私は地べたに座り、抵抗するそぶりを見せない。
まっすぐに私に振り下ろされる剣を眺めていた。銀色の剣が私に振り下ろされる。
結果は。
「嘘っ!?」
「っし! やっぱ私は運がいいぜ!」
10%の外し。
このギャンブルは私の勝ちだ。分が悪い勝負で勝利を勝ち取るのはすごく気持ちがいい。アドレナリンがどぴゅどぴゅ湧き出てくるぜ!
私は立ち上がり、ガッツポーズを決める。
「……はぁ。まさかの10%を。運で負けたわ……。じゃ、ポイント譲渡するわ。そこまで多くないけれど」
そういうと橋盾さんからポイントを受け取りますかというアナウンスが聞こえる。
ポイント総数は150ポイント。私は喜んで受け取ったのだった。
「じゃ、最後は私をキルして私のポイントね。ひと思いにやりなさい」
「ド派手でいきますよ?」
「派手な葬式で頼むわね」
私は爆発魔法をぶち込んだ。
超どでかい爆発が、辺り一面を飲み込んだのだった。




