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◇ 黒の扉

 私は子供が好き。

 高校生のころから、従姉が子どもを産んでいたり、年の離れた姉が子どもを産んでいたり、子供に囲まれて、私が世話をしているうちに、そういうのが好きになっちゃった。

 幼稚園の先生になってもよかったんだけど……。私は本当に子どもが大好きで、行き過ぎる節があるので、ロリコンだとかショタコンとか思われたらやだなって感じで幼稚園の先生も無理だった。


 なので考えた。

 私が自分から子供に近づくのは限りなくアウトに近いが、子供のほうから近づいてくるのはいいんじゃないか?と。

 そこからの行動は早く、子供に人気なものといえば動画投稿者とか配信者。親御さんも安心してみられるような清楚さが求められている。


 顔出しはちょっとあまりしたくなかったので、Vとして応募してみた。アローライフに。

 そしたら受かった。私は希望通り、ママ系VTuberとしてやっていくことになったのだった。まぁ、誤算だったのは大きいお友達が多かったこと……。


「さてさて、黒の扉の先には何が……」

 

 黒の扉を進んでいくと、目の前にはブランコとかジャングルジムがあった。


「わぁー!」


 小さな子供一人がブランコを揺らしている。

 ブランコを揺らしている子供がこちらに気づき、駆け寄ってくる。


「お姉さん、僕ね、実はの、呪い、なんだけどまだ子供でなにしていいかわかんなくて……。だ、だからお姉さんをここに閉じ込めたいんです!」

「うん! 一緒にお遊びしましょうねぇ!」

『ママ?』


 子供は嬉しそうにほほ笑んだ。


「じゃ、じゃあまずはブランコやろ! お母さん!」

「はうあっ!」

「ブランコって知ってる? 遊び方わかる!?」

「わ、わかんないわぁ。教えてくれますか?」

「うん!」


 可愛い。

 子供というのは実に愛らしい。俗世にまみれた汚い大人より何倍も純真無垢で可愛い。


「ブランコはね、座って揺らして遊ぶの!」

「そうなんですかぁ」


 私は男の子の言う通りに遊んであげた。

 男の子は得意げに教えてくれるし、たまに小さなドジをしてとっても可愛い。可愛くて可愛くて仕方がない。


「お母さん、鬼ごっこしよ!」

「いいですよぉ」

「僕鬼ね! じゃ、はじめー!」


 私は全力とは言わずとも、少し小走りで逃げていた。

 必死に追いかけてくる男の子。そして、男の子は私の太ももに触る。


「タッチー!」

「ふふ、捕まっちゃいました。では、次は私が鬼ですね」

「逃げろー!」


 私は小走りで男の子を追いかける。


『子供になったら追いかけてくれるってマジですか!』

『男の子羨ましい……』


 大きなお友達がうるさい。


『楽しんでるところ非常に申し上げにくいのですが、アローライフのほうでの大会は? 最下位だと罰ゲームが……』


 と、現実に引き戻すかのようなコメントが来た。

 罰ゲーム……。内容知らないんですよね。面白そうなのならいいんですが。

 

 ですが、罰ゲームは避けたいというのも心にはあって……。勝ちに行くなら時間を費やしている暇は……。


「すいません、君。お母さん、用事が出来ちゃいました」

「い、いっちゃうのぉ?」


 泣き顔でこちらを見て来る男の子。

 それは反則! 反則です! だけど、この男の子は呪い! 魔物ではあると思うんですよ。まやかし、これはまやかし。

 私は心を鬼にして、ごめんなさいと謝ると。


「うん、我儘はいけないよね……。先に行きたいんならあそこの出口から行けるんだよ」

「……ありがとうございます。ふふ、可愛いですね」


 私は出口までゆっくり歩いていく。

 子供……。お世話……。後悔未練、たらたら。











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