ハロウィーン ③
私は不知火さんに連れていかれ、待ち合わせ場所に向かうのだった。
待ち合わせ場所ではママとリキエルさんがすでに立っている。
「不知火来るまで暇だからよ、質問あれば何でも答えるぜ」
「簡単な質問にしてくださいね~」
来た瞬間に質問コーナーを始めていた。
不知火さんも空気を読んでか、もう少し遅れていこうと呟いている。私はその間もポケットに入れられたままなんですけど。
「最近よくつるんでる個人勢の玉藻イナリをどう思うか?」
「私?」
「イナリちゃんですね。いい子ですよね」
「おう。めっちゃいい子なんだがよ……。あれ高校生だろ? 高校生にしちゃ、妙に人生達観してる節あるよな」
「ですね~。人生何回もやってるみたいに感じますねぇ」
「えっ」
そんなに達観してるように見えます?
「ま、あいつはあたしらと感性も近いし、普通に友達としても心地いいがよ!」
「ふふ。まぁ、あの子は平安時代から生きてますからねぇ」
「マジか!?」
「ふふ」
そういう設定ですけどそういう設定とかみんな忘れてるし、なんならもう顔出しとか余裕でしてるからVの体がある系動画配信者だと思うんですけど。
もうVってこと忘れていいですよ……。
「君って本当に謎な存在だよねぇ。私としては面白いからいいのだが? Vとしては奇特な人物だ。それに、君の見た目は本当にいいが、なぜ顔が隠れるようなVをやろうとしてるんだい?」
「いや……。顔はわりかし可愛いって自分でも思うぐらいなんすけど、口なんですよねぇ。閉じてたら普通の人なんですが、歯が本当に狐みたいに鋭いので」
「あぁ、そういえばそういう配信をしていたね」
「臼歯とかなくて全部犬歯なんですよ。本当に肉食動物のような感じの口なんですよね。それが私としてもどーもコンプレックスに近くて。胸とか普段見せないところがコンプレックスだったら普通にVじゃなくやってこうと思ってましたけど口ですもん。喋ると見えるんすよ。だからVでやろうと」
「なるほど。今はどうなんだい?」
「今はもう吹っ切れたというか……。もう諦めて生きてます」
もう気にすることもなくなった気がする。
「それによ、ちょっとあいつの運の良さが不気味なんだよな」
「ですね。あの子と居ると何かいいことが起きるんですよ。不気味なくらいに」
「ママもか?」
「はい~。あの子と一回だけ食事に行ったことがあるんですよ。実写配信で北海道旅行の動画を上げましたよね。あの時にあの子と一緒にご飯を食べに行ったんですけど、そのあと帰り道にちょっとたまげたことがありまして。宝くじの1等が当たってたんです……」
「嘘だろ!?」
「本当にびっくりしました。それで、Vで何度かコラボしてそのたびに何かいいことが起きるんです」
不知火さんも心当たりがあるようで興味深そうにつぶやいていた。
「たしかに、君とコラボした際には何かしらいいことがあるのだよ。私の場合はソシャゲでほしかったものがすぐに出たり、危篤状態だった父が元気になったり……」
「え、私とのコラボでそんな運良くなるんです?」
「なってるからリキエルもママも不気味に思っているんだろうねぇ。君は不思議な力を持っているな」
「えぇ……」
「とりあえず合流するとしよう」
不知火さんは歩き出すと、ポケットも揺れる。
私は不知火さんに捕まりながらママたちと合流することにした。
「やぁやぁ。遅くなってすまないねぇ。実は助っ人と合流していたものだから」
「遅えぞ。ったく……。んで、助っ人?」
「どこにいるのですかー?」
「ここさ」
そういって、不知火さんは私の首根っこをつかむ。
「えっ、イナリちゃん!?」
「ちっさ! 今度は何が起きてるんだよ!」
「いやぁ、ジャックオーランタンって魔物にいたずらされまして。小さくされました」
私はリキエルさんの手に乗っけられた。
私は小物か。




