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エロ本奪還戦

 Vの体でも言っている通り、私は一応は女子高生だ。

 学校の制服を着て学校に登校しなくちゃならない。私は眠たい眼を擦りながら学校につながる通学路を歩いていた。


「おっはよーきっつん!」

「おはよ」


 声をかけてきたのは私の友人の春風はるかぜ 睦月むつき。陸上部に所属している元気な女の子。おっぱいがデカい。

 私はおはよとあいさつすると同時に、手を睦月のおっぱいに伸ばす。


「挨拶として胸揉むのやめない? 男の人だったらセクハラだよこれ」

「同性だから……」

「だとしてもだよっ! 公衆の面前で恥ずかしいんですけど!」

「辱めプレイだとしたら興奮しない?」

「しないよ! ほんときっつんって見た目の割にめちゃくちゃ変態だね」

「失礼な。私は変態という名の淑女だよ」


 そういうやりとりをしつつ、教室に入ると。

 男子の園原そのはら 優斗ゆうとという男の子が私にちょいちょいと手招きし、人目の少ない階段下に連れていかれたのだった。

 園原はカバンから一冊の本を取り出す。


「うお、すっげえエロい……」

「うちの兄貴のパクってきた。エロくねこれ」

「エロイエロイ。この裸体たまらんなァ……!」

「だろー!? この滑らかな曲線はそんじょそこらの女の子にゃ出せねえって!」

「だなぁ! お前の兄貴いい趣味してまんなぁ」

「俺も俺なら兄も兄さ」


 園原が持ってきたエロ本のページをめくる。

 下着がはだけてみだらな姿になった女の子の写真。これはたまらん……。


「そこ、何してるの?」


 背後から女の子の声が聞こえる。

 私は振り返ると、そこには風紀委員の木下きのした 風香ふうかという女の子が立っていた。私たちは思わず手に取っていたものを後ろに隠す。

 その行為が怪しく思われたらしい。


「何を隠したの?」

「いや、ちょっと……」

「見せなさい」

「刺激が強すぎるからダメ」

「いいから!」


 と、私たちの後ろに素早く回り込み、奪い取られてしまった。

 そして、表紙を見る木下さん。木下さんは顔を赤く染め上げた。


「あ、ああ、あなたたち! 学校になんてものを持ってきてるの! 前回もこれで反省文書かされてるのに懲りないのね!」

「ふん、反省文ごときで俺らのエロスが止まると思うなよ!」

「偉そうにすんな! これは先生に預かってもらいますからね!」

「私は女の子だし許されるよね!? エロ本はだいたい男の人が読むもんだし! 被害者被害者!」

「おま、俺だけに罪を擦り付けんなよ! 取り返すぞ!」

「おうともよ!」


 廊下を走り、木下さんを追いかけようとした際、何か落ちているのに気づく。木下さんの生徒手帳だった。

 私は生徒手帳を拾い上げると、ぽろりと写真が床に落ちる。私はその写真を拾うと、そこに映っていたのはいつ撮られたのかわからない私の写真だった。

 これ、撮った記憶も撮られた記憶もないな。というか、この角度って盗撮みたいな感じで撮られたやつじゃないか?


 ……なるほど。これは使える。


「弱みゲット! 追いかけるよ園原!」

「おう!」


 私は園原と一緒に木下さんを追いかけた。

 木下さんは足が遅かったのですぐに追いついた。私は園原さんの前に立ち塞がり、ポケットからさっき拾った写真を取り出す。


「これ、なーんだ」

「えっ!?」


 木下さんは胸ポケットとかに手を突っ込んで生徒手帳を探しているが見つかっていない。

 私は木下さんの生徒手帳を見せつける。


「これ、明らかに盗撮だよねぇ? 私撮っていいなんて許可したかなぁ?」

「か、返して……!」

「返して? それは聞けない相談だ。だって、私たちのものは返されてないもんねぇ? 園原」

「そうだ。返してほしければそれ相応のものを出してもらおうか」

「だ、ダメ……!」

「そう? そうかあ。でも、木下さんってなんで私の写真を持ってるのかな。もしかしてこの一枚だけじゃないんじゃない?」

「えっ?」

「家には数枚写真があって、一番映りがいいのを持ち歩いてるんでしょ。そういう変態さんなんだ。私にはわかるんだ」

「ち、ちが……」

「ほら、さっさと選べよ。私たちのものを返してこれを返すか、あることないこと吹聴されて自分も恥さらしになるか」


 私は二つに一つの選択を突きつけた。

 木下さんは苦渋の決断なのか、唇をかみしめてエロ本を園原に差し出す。


「よーしよし。それでいい。じゃあ返すよ」

「卑怯者……!」

「エロを取り返すためなら卑怯者と揶揄されてもかまわない」


 私は写真と生徒手帳を木下さんに返した。

 木下さんは脱兎のごとく逃げ去ってしまう。


「これにて一件落着」

「そうだな。よし、改めて吟味を……」

「園原。その手に持ってるものはなんだ?」


 私は脱兎のごとく逃げだした。












主人公、汚い

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