落とし前
今日も今日とて学校が終わった。
あの話通り、クロエが学校に転校してきた。家はまさかの高校のすぐ隣で、遅刻とか絶対しない距離。
マジで引っ越してくるとは思わんやんか。
私はそう思いながら帰り路を歩いていると。目の前には髪を金色に染めたガラの悪そうな女の子たちが私の行く道をふさいでいた。
「おい、お前が玉藻イナリだな」
「……人違いです」
カツアゲ?
今の時代にこういうカツアゲするやついるのか……。私は驚きながらも人違いだと言って逃げようとすると、私の襟首をガッとつかまれる。
「んなわけねーだろボケ。ちょいツラ貸せや」
「えぇ……」
といって私は担ぎ上げられてそのまま連行されていったのだった。
連れていかれたのはどこかの家。私たちはその家の中に入ると、その家の壁には何と私の写真がずらーっと貼られていた。
その中心には金髪の髪の女性がパソコンのディスプレイを食い入るように見ている。
「お前のせいで姐さんがあんなふうになってんだよ……! どうしてくれるんだ……!」
「えっ?」
「つい先日、動画投稿サイトでお前の配信を見たそうだ。それ以降、お前にどっぷりはまってあたしらの姐さんがこんな感じで廃人になってくれやがった……! どうしてくれるんだゴラァ!」
「私全然悪くねえ!?」
ただの言いがかりじゃねえか。
というか、一心不乱に配信のアーカイブを見ている……。私たちに気づいてすらいない。
もはや狂気の類だろ。
「テメェさえいなきゃ姐さんは……!」
「ひどい言いがかりだ」
と、私のアーカイブが終わる。金髪の女性は大きく伸びをしてし立ち上がった。
「お、お前たち来てた……のにゃーーーーーー!?」
「こ、こんにちは……」
「た、たたた、玉藻イナリ様! 初めまして! わ、わわ、私は西園寺 由香里と申します、です! ふぁ、ファンです!」
「どうも……」
「な、なぜ玉藻イナリ様が私の家にいるのかはサッパリですが、会えて嬉しいです!」
「……コイツらに拉致られて」
私がそう言うと、西園寺さんの視線が厳しくなった。隣の女の子たちが震え上がっている。
「おい、どういうことだ」
「え、いや、その」
「テメェ……。無理やり連れてきたな……? 推しに迷惑かけていいと思ってんのかこの野郎……!」
そう言って殴りかかったので私は手を出して止めに入った。
「なっ……何をするのですか玉藻様! 迷惑をかけた奴は仕置きを……」
「こういう無茶振りみたいなのは慣れてるから……。それにあまり暴力は避けたいし」
「はっ、失礼いたしました……」
「姐さんの本気パンチを止めた……」
「もしかしてすげーやつなんじゃねえのか?」
「すげえ」
なんかここだけヤンキー漫画のノリなんですけど。
「とりあえず、私のファンなのはありがとう」
「いえっ!」
「金髪、似合ってるけど、西園寺さんは黒の方が似合いそうだね」
「……今すぐクロにします!」
素直にも程がある。
「まぁ、ここで会ったのも何かの縁だし、みたところ同年代? だから友達になりたいね」
「え、いいんすか……!?」
「いいよー。よろしくね」
「……」
と、西園寺さんは涙を流していた。なぜ。




