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公爵家物語(オズボーン家)  作者: オサ
2年生
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2年生 その48 生徒会

48 生徒会


 学園内の学生主体の運営組織を生徒会と名付けた活動は、本部役人と部門別の運営者を選別する所から始まった。各学年2名ずつが本部に所属する事になり、中等部2年からはセーラとリリアが選ばれた。いつもの6人組の中から2人が選ばれたのは、他の4人が部門別の所属を願ったからだった。

 第1王子コンラッドと、美少年カーニーは騎士団管轄下にも置かれる軍事訓練部門の生徒会側の担当者となった。無礼少年のペンタスは、農業開発部門の所属を手にすると、熱狂的に活動を始めた。少し身長が伸びてきたキャロットは得意の裁縫を活かすために服飾部門での活動を精力的に取り組んでいた。

 学園内の空き教室、講堂を含んだ校舎の一角が生徒会所属となり、その中の事務室で2人の会計担当は事務処理をしていた。

「ペンタスがまた無茶な請求書を出してきたわ。」

「内容?それとも金額?」

「金額よ。内容は今から読むのだけれど。セーラが公爵様に話を通してくれるからと言って、一部門としては多過ぎるわ。」

「そうね。でも、設備投資が一番必要な部門だから。」

「そうは言うけど・・・。え。」

「何が書いてあるの?」

「農地まで水路を引くか、毎年魔石で給水を行うかのどちらかを認めてほしいと、書いてあるわ。」

 財務卿とその補佐になっている2人は、準備のための予算には制限を設けていなかった。全てが認められる訳ではないが、必要性が確認できればほぼ全額で承認していた。年間の運営費についても、前例が全く存在していなかったので、初年度は無制限の認可形式の支出を実施する事になっていた。

 そう言った状況を理解してのペンタスの行動は、予算を確保する側としては大正解であったが、予算を出す方やその取次ぎを行う者にとっては、悩み事を増やす事になった。

「内容に不備がなければ、そのまま提出するんだけど。その厚い書類の中身は?」

「水路の設計図と、給水施設の設計図と、費用の算定に関する資料よ。」

 食堂で働いていたセーラは金勘定が得意だったし、利益を出すためには、費用をきちんと考えて料理材料を選定する事が大切であることを、母ミーナから学んでいた。だから、この役目が適任であると考えていた。しかし、適任ではあっても、全ての部門の予算を扱うだけの事務処理能力と知識が備わっている訳ではなかった。

「後でペンタスを呼んで、説明してもらいましょう。」

「そうね。どっちが担当する?」

「ペンタスの農業部門は私が専任で担当した方がいいと思う。」

「そうね。セーラにお願いするわ。」

事務室の扉がノックされてから開いた。

「セーラ嬢、リリア嬢、やはりこちらでしたか。」

 金髪紫目の美男子が入室した。入学してから急に成長した第2王子は美しさに凛々しさを加えていた。女性としての美しさであれば、カーニーに負けるかもしれないが、男性としての美しさであれば、アランを超えているとセーラは思った。多くの女生徒が、アラン公子とジェイク殿下を五分五分と見る中、殿下の方が男性として素敵だと感じたのは、弟という補正が働いて、幼さをセーラが感じるからだった。

「ジェイク殿下、何か御用ですか。」

「先程の部門長会議で、改めて予算の要望が出てきたんだ。」

 事前準備の費用は許諾を得ると現金で支給されて、すぐに準備活動を行う事ができた。その代わりに、準備が次々と進むため、新たな要望が出て来るのも早かった。

「とりまとめ、ありがとうございます。」

「いや、もっと早めに出せれば良いのだが。皆も一生懸命なんだ。2人には負担をかけることになる。」

「いえ。大丈夫です。役目ですから。」

「そう言ってもらえると助かる。これはここに置いといて構わないかな。この後、各部門の部屋を訪問する事になったんだ。」

「はい。そこに置いといてください。」

 第2王子ジェイクが、生徒会の会議の議長役兼取りまとめ役となったのは、王家の人間だからというのもあったが、彼自身の人柄が認められたからでもあった。誰に対しても傲慢な態度を取る事は無く、王子としての立場を崩す事は決してないという線を引いてはいるが、それ以外の部分では一学生として学園で過ごしていた。

学年1位の成績と優れた容姿から、洗練された貴公子として誰からも好かれていた。ケネット侯爵派閥から、婚約者は第2王子自身が選ぶから、それまで過剰な接触はしないようにとの話が出ていたため、女生徒に囲まれるような事は無いが、密かに恋焦がれている者も少なくなかった。

「書類とは関係ない話をしてもいい?」

「ええ。何?」

「セーラは、ジェイク殿下の事をどう思っているの?」

「第2王子だと思って、必要な敬語も使っているつもりだけど、間違っていた?」

 貴族同士の慣例や公式な場での言葉遣いというのはしっかりと学んではいるが、非公式の場における貴族の言葉遣いに関しては、セーラはあまり自信がなかった。そもそも公爵家の家族の会話における言葉遣いが皆バラバラで、どういう基準があるのかがよく分からなかったし、説明されたとしても体験の中で身に着けた訳ではないので、時々失敗だと感じるような言葉遣いになる事もあった。だから、リリアとキャロットには、少しでも気になるような事があれば、それを指摘するように頼んであった。

「ううん、違うわ。聞きたい事は、素敵な王子様とか思わないのかなって事なの。」

「もしかして、リリアは。」

「ああ、違う、違うわよ。私の・・・。失礼な言い方になるけど、私のタイプじゃないから気にしていなかったのだけど。他のクラスの子たちから、本部で一緒だなんて羨ましいとか言われたから、周りから見ると羨ましい立場なのだと考えている内に、セーラはどう思っているかなって気になって。」

「素敵な方だとは思う。確かに、殿下と話をしたい子から見れば、仕事のこととは言っても、話ができる私の立場は、羨ましく思うのは当然かな。」

「それって、好意を持っているって事?」

「え。どうしてそうなるの?」

「今、素敵な方だって。」

「リリアはタイプじゃないって言ったけど、殿下を素敵な方だとは思わないの。」

「格好いいと思うわよ。皆が素敵だという気持ちもよく分かる。タイプではないから、私が好きにならないだけで。」

「私もリリアと同じ。格好いいと思うし、好きになる子に同意はできるけど。」

「でも、好きではないって事?」

「好きも何も、こうやって会うようになったのは今月からの事で、普通の挨拶と仕事の話しかしていないのだから、好きという感情を持てるようにはならないわよ。」

「じゃあ、これから色々な話をする中で、好きになったりするかもしれないわね。」

「そうなるのかな・・・。」

 セーラは恋愛についてはできるだけ考えないようにしていた。好きになった男性がいないというのが根本的な理由ではあるが、彼女自身が考える論理的な理由は他にあった。

庶民出と言われたとしても公女であることに変わりはなく、公爵家の政略結婚の駒になれると言うのであれば、それを喜んで受け入れるつもりだった。それは自分ができる公爵家のための一番の行動だと思っていた。姉と義兄の関係を見れば、政略結婚が不幸を呼ぶ訳でもないと確認できたため、恋愛結婚に憧れを抱くような事も無かった。

公女として政略的な役割を担う覚悟をしたセーラにとって、一番の障害が恋愛感情であった。自分が誰かを好きだと公爵夫妻に報告すれば、両親は何があっても、自分の礼案を成就させるために支援するのは間違いなかった。それは、娘を思う両親の思いとしては適切であり、セーラにとってもありがたく感じるものであった。しかし、自分の恋愛感情が公爵家の政治的なプラスを作れないのであれば、自分の感情を満たす事は不必要に思えた。

「セーラはジェイク殿下にあまり興味が無いようね。」

「そんな言い方は失礼なんじゃないの。」

「はぁ。2人の弟があれだけ素敵で、見慣れているから、ジェイク殿下も普通に見えてしまうのかな。セーラは。」

「どうして、ため息をつくの。」

「何となくよ。とりあえず、ジェイク殿下には恋愛的な興味はないって事ね。」

「そうだけど。そんなに殿下に拘るなんて。もしかして。」

「違うわよ。タイプじゃないと言ったでしょ。」

「うん、そんなにムキにならなくても。」

「ムキになんて、なってないわ。」

 セーラもリリアも、恋に恋する少女の年代ではあったが、貴族としての自覚と、自分の置かれた立ち位置をよく理解していて、自分の感情を優先させるような事はしなかった。むしろ、それを抑制する形で、自身の中の恋愛感情に向き合っていた。



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