1年生 その17 6人組
17 6人組
赤髪赤目の燃えるような公女は、周囲の人間を引き付けるような温かさを振りまいたのではなく、触れにくい熱気を放っていた。接近する人間は火傷を覚悟した者か、火傷を全く気にしない人間か、その場所でしか存在できない人間か、いずれにしても、ただ何となしにそこにいたという人間はいなかった。
授業を受ける教室は3人掛けの長机が並んでいた。科目別で使用する小教室から図書室などに設置されている大机は6人掛けであった。そのため、生徒たちが授業内でグループ分けが行われる場合、3人か6人のグループになった。そして、6人グループで様々な課題をこなす場合が多かった。
セーラと一緒にいる覚悟を持っているのは、リリアとキャロットの2人だけで、普段の授業中は一緒の机に並んで着席して問題はないが、6人グループを作ろうとすると、残り3人を集めるのが容易ではなかった。
行政の授業内で、研究発表を6人1グループで行う事になった時、セーラに手を差し伸べてきたのはダンス補習仲間のペンタスだった。人懐こい容貌を持っていたが、人懐こい性格ではないので、親しい友人はなく、公女が一番親しい同級生だった。
その彼がセーラたちに救われた孤立の人とは言われずに、手を差し伸べた救世主と言われるのは、2人の仲間を引き連れていたからだった。
「俺たち3人と一緒のグループでいい?」
「殿下。」
「殿下。」
「殿下とカーニー。」
セーラは、自分に無礼を働きかけた美少年の名前も呟いてしまった。
「一緒のグループになっても良いだろうか?」
第一王子コンラッドの問いかけに、冷静な青い瞳のリリアが応じた。
「もちろんです。殿下・・・。コンラッド様とお呼びした方が良いでしょうか?」
「授業内では名前を呼んでもらいたい。」
「はい。かしこまりました。」
「敬語はなくても構わない。」
リリアは親しさを持って呼ぶ事を受け入れているが、セーラの方は他に選択肢がないのは理解できるが、その呼び方には納得できなかった。第1王子に悪意を向けるような事は無かったが、好意的である理由は無かった。
「どうして2人が・・・。」
「答えた方がいい?」
セーラの呟きにペンタスが聞き返すと、小柄なキャロットが大きく首を振った。セーラも理由は気になった。
「理由があるなら。」
「理由と言うほどではないけど。このクラスのほとんどが侯爵派閥で、第2王子派なんだから、コンラッドとグループ作る人間はいないだろ。仲間がいない者同士で集まるしかない。ただそれだけ。」
ペンタスには男爵令息として、第一王子に遜って話をするつもりは全くない事は誰でも分かるが、それで良いのかと疑問が消える事は無かった。さらに、事実ではあるが、第一王子が王位継承争いで不利になっていることを、目の前で言う事はどうかしているとしか思えなかった。
この時点でセーラが最も気になる事は、侯爵派に所属するセーラに接触する要員であるカーニーが、宰相派の中心人物である第一王子と公爵令嬢と同じグループ入ろうとしている事だった。何を目的としているのかがセーラには全く分からなかった。
「カーニーを連れてきたのはどうしてなの?」
「6人グループを作るには、もう1人必要だからに決まっているだろ。いつもの頭の回転の速さで分かるだろ。」
「分からないから、聞いているのよ。」
「カーニーだったら、セーラに無礼なことをしたんだから、侯爵派の中の人間で唯一、気まずい思いをさせても構わないだろ。6人になるには、侯爵派の誰かを入れるしかないんだから。可哀そうだと思えないカーニーが一番いいだろ。」
クラスには少ないながらも、宰相派や中立派の同級生もいるが、セーラと接近した場合、侯爵派が何かを仕掛けてくる可能性があった。だから、セーラは2人の友のように、話しかけてこなければ、あえて自分から接触しないようにしていた。
セーラに接近する事で、不利益を被る可能性があると考えた場合、カーニーを同じグループに誘うのは間違いとは言えなかった。学園の教室で特別な秘密の話をする訳ではないから、教室内の会話がケネット侯爵派に流れたとしても、問題が起こるような事もなかった。
「カーニーはいいの?」
思わずセーラは、初日に手を上げて、その頬を打ち据えた美少年に尋ねた。
「公女様の手助けになれば光栄です・・・。それに、派閥の中で問題を起こした私に接近する者はいなくなりました。一緒にいる時に得た情報を流さなくて済みます。これから先に聞かれるかもしれませんが、警戒されているから大した情報は得られないという事にしました。」
拒否したとしても、6人組を作らなければならない以上、このメンバーで活動するしかなさそうであると納得したセーラは、ペンタスの申し出に同意した。




