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公爵家物語(オズボーン家)  作者: オサ
3年生(2回目)
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3年生(2回目) その112 人気者

112 人気者


1年前のオズボーン公爵邸襲撃事件に関して、イシュア国第2王子ジェイクの待遇決定と、後見してきたケネット前侯爵への処断を国王は行わなければならなかった。しかし、様々な状況を勘案した結果、第2王子をフェレール国に留学させた。それは、その時点における決断を回避した事でもあった。

後継者問題や、派閥問題などを未解決のまま放置した事を意味していたが、国王への批判はほとんどなかった。それは、公爵自身が国王に対する批判を一切しなった事が最大の要因ではあったが、今回の王家の交換留学生が大成功の結果を生み出した事も大きな要因だった。逃げを打つための政策が、国益を大幅に増やす政策に変わり、それを主導した王家の評価も大きく上がった。

一方のフェレール国でも、国内で評判が悪かった第3王子フェリクスを国外に退避させることが最大の目的であって、このような結果を生み出すとは思ってもみなかった。一応は双子殿下に課題なるものを提示していたが、目標があればフェリクス王子が前向きに頑張るかもしれないという願望の表れでしかなかった。

実際に、イシュア国との交流については、第2王子ジェイクを厚遇することで友好度を高めて行く事を主軸として動いていた。双子殿下に随伴する随員の中に、上級貴族の家の者がいなかった事は、2人にほとんど期待していなかった証とも言えた。

そのような事情の中、イシュア国から到着した総勢50名の使節団が持参したいくつかの書簡は、フェレール国王や側近達を驚かせた。

契約書通りの取引が成功すれば、大量の魔石を手にすることができて、それで国内のいくつかの問題が解決できた。さらに、貿易によって生じる継続的な利益の見込み最低額も大都市1つ分の利益に匹敵した。

両殿下が国王の許可なく、契約を結んだことは本来咎められるべきことではあったが、これだけの良い条件の契約を逃さないために即断即決した事は大絶賛を受ける事になり、国王は子供達に外交大使の辞令を正式に与えて、多くの権限を与えた。

契約書とその事情説明の書簡を読んで興奮していた国王は、その件で近臣たちと様々な事を決定してから、娘からの私信を読んだ。賢い娘だとは思っていたが、それが身内贔屓の評価でない事を確信して嬉しくなると同時に、近臣たちをすぐに呼び戻した。

イシュア国の王都に大使館を建設して、外交大使と貿易に関連する文官を常駐させるという当然の提案に驚いたのではなく、すでにイシュア国国王の許可を受けている事に驚いた。オズボーン公爵家の第2公女と仲良くなったという報告を受けていたが、相手国の国王とこのような交渉ができる程に、交流を深めて、信頼を得ているとは思いもしなかった。それは近臣たちも同様で、すぐに外交使節の人選をするための会議を始めた。

そして、書簡を受け取った翌日、イシュア国から到着した外交使節は、フェレール国王との謁見を果たすと同時に、そこでも国王と近臣を驚かせた。

フェレール国では見る事ができない完全魔石が贈呈品だった。4本足の魔獣の額にある魔石を欠けることなく肉体から外す事が、無傷でできる者は公爵家以外ではイシュア国に5人とはいなかった。つまり、完全魔石は公爵か公爵夫人が戦って手に入れた物と言えた。しかも、その数が500で、それが目の前にあるのを見た国王は、しばらく言葉を出す事ができなかった。

完全魔石は、市場に出回る小さな魔石100分に相当するので、魔石を細分化して市場に流通させた場合を考えてみても莫大な金額だった。


 王都の東部地域に空き地が多いのは、公爵邸と大中小の3つの魔獣の巣に近いからだった。暗闇の暴走を抑え込む事に失敗した場合に、最初に被害を受ける地域であるため、好んで住宅を建てる庶民はいなかった。

「レイティア様とロイド様の住宅の北側のこの一帯に大使館を建てる事に決まったわ。」

 灰色の学生服姿のビアンカとセーラが周りを見渡しながら、溜息を洩らした。

「完成するのは2ヶ月後だったわよね。4月から完成した大使館で暮らすの?」

「そうなる予定よ。大使の辞令を受けたのに加えて、多くの文官や護衛の武官を率いる事になったわ。イシュアの王宮でそれだけの人数がお世話になる訳にはいかないから。」

 今までは、両殿下に1人ずつの護衛が付いていただけだったが、今は4名に増えていた。目障りとまでは思わなかったが、こういうものは必要最低限でいいと考える2人なので、煩わしさを感じることはあった。

「学園からそれなりに遠くなるけど。」

「その代わりに、公爵邸に近くなるから、その点はとても嬉しいわ。」

「私も嬉しい。」

「一緒の馬車で学園に通えたら良いのだけど。警備の関係上、それはできないと言われたわ。」

「それは残念・・・。護衛は私の何が気になるの?」

「強さみたい。」

「強さ?」

「気になるみたい。」

「そう言うことね。今度、気にしている護衛と剣を交える機会を作ってもらえる?」

「分かったわ。」

王女と公女の立場であれば、今の護衛に囲まれた状態が普通なのかもしれないが、これまでとは大きく異なっているので、まだ慣れていなかった。

「セーラ、質問があるのだけれど。」

「改まって、どうしたの?もちろん、分かる事なら答えるわ。」

「フェリクスの事なのだけど。多くの令嬢から、好かれているようなのだけど。その理由がセーラには分かる?」

「ビアンカも、多くの令息に好かれているわよ。」

「ええ、それは感じていて、その事も不思議なの。」

「不思議でも何でもないと思うわ。王女様と王子様なのだもの。」

「素敵な王女様や素敵な王子様でなければ、好かれないわ。」

「ビアンカは素敵よ。」

「ありがとう。私は、幼く見えて可愛いという評価があるのは分かっていて、そういう好みの方からは好かれるとは思う。私の事ではなくて、フェリクスの事を聞きたいの。その、はっきり言ってしまうと。レイモンド殿下の方が素敵な顔立ちだわ。コンラッド殿下と比べると、凛々しさというか、逞しさみたいなものが全然足りていないと思うの。フェリクスには言えないけど。お二人の方が男性としては素敵だと思うの。それなのに、夜会では、令嬢に囲まれていて、フェリクスの方が人気があるように見えるわ。」

「外見は人それぞれの好みがあるから・・・。人気の理由の1つは間違いなく、功績という事だと思う。」

「功績を理由に接近してくると言うのなら、政略結婚になると思うのだけど。その場合、私やフェリクスの考えではなく、父王の考えが優先される。私たちの気を引いたとしても、あまり意味はないわ。」

「やっぱり、素敵だと思っているからよ。」

「フェリクスのどこが素敵なの?姉として幼い頃から知っているからだけど、女性として弟を勧めたりはできない。」

「頭が良い点も、魅力だと思うわ。前期の成績は良かったもの。その点は、ビアンカも同じだけど。」

「勉強ができるからと言う理由で、好意を得られる事は少ないと思うのだけど。」

「私は、勉強ができる事は、素敵だと思える大きな要素だと思うわよ。」

「じゃあ、セーラは、フェリクスを素敵だと思うの?」

「え、私は、勉強ができる事で、誰かを好きになるとかはないから。」

「素敵と思えるって、今言ったばかりよ。」

「そう言う人もいるって事よ。」

「だったら、勉強以外でフェリクスの魅力は何だと思うの?」

「え、私にはよく分からないわ。他の子からは、王子様だから素敵という事を聞いた事は無いわ。詳しく聞こうとはしなかったから。」

双子殿下の人気が大きい主要は、王女様と王子様が恋愛結婚を望んでいるとイシュア国の貴族達が考えているからだった。

369年1月1日の生誕祭で、王家の人間はそれぞれのパートナーと一緒にダンスを披露した。イシュア王家と同等の扱いを受けた双子殿下も同じタイミングでダンスをした時、それぞれのパートナーは、第3王子レイモンドと第2公女セーラだった。

これを見た貴族達は、双子殿下の政略結婚が決まったのだと考えた。年齢も格も釣り合っているのだから、2組の政略結婚成立を疑う者はいなかった。生誕祭の後に発表されるだろうと予測した貴族達の中には、祝意を示す贈り物を用意するために、大商人たちに注文を出す者もいた。

しかし、婚約の発表は、生誕祭が終了してからしばらく経ってもなかった。

ビアンカ王女とレイモンド王子、フェリクス王子とセーラ公女の組み合わせは、両国の友好を深める最良の選択で、この婚約を成立させない王家は何を考えているのだろうと疑問に持つ者は多かった。

この疑問に対して、双子殿下がイシュア国の地方領を持っている貴族の中から結婚相手を探しているとの解答に達した貴族達は多かった。

王家同士の婚約は友好国を示す分かりやすい政略ではあったが、先の世代にとっては、両国の後継者争いに、他国が介入する危険を招く愚策になりえた。そういう思考をすると、双子殿下が王子と公女をパートナーとしてダンスをしながら、婚約をしないという選択をしている事の意味を考えなければならなかった。

フェリクス殿下とビアンカ殿下が、セーラ公女とレイモンド王子との婚約をしないという事を示したいのであれば、双子殿下がお互いにパートナーになって踊れば良かった。それなのに、あえて王子と公女をパートナーにした事は、双子殿下がイシュア国で婚約者を探すことの意思表示だと思えた。

最有力候補が外れた今、双子殿下が望むパートナーは、貿易を活性化する事ができる相手であろうから、領地を持った貴族だと考えた。しかも、家格を気にせずに相手を探しているようにも思えたため、年頃の令息令嬢を抱えている貴族達は動き出していた。

 この妄想に近い貴族達の考えは、正解ではなかったし、中にはこの考えを愚考であると笑い飛ばす者もいたが、最終的には、この解答を暫定的な正解として、貴族達は全力で走り出した。

 婚約に関係なく、フェレール国との貿易は利が多いのだから、それを理由にして双子殿下に近づく事は領地に大きな利益をもたらす可能性が高かった。嫌われるような事さえしなければ、プラスにしかならないことを理解しているイシュア国の貴族達は、フェレール国との関係を強くするために活動していた。


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