決着、そして二人は
アランが大きく踏み込み真っ向から仕掛けた。
魔力を奔らせた剣を舞うように振るう姿には思わず目を奪われてしまう。
残念なのはそれがグリースにしか見えていないという事だ。
リシュ達は吹き荒れる爆風に耐えるのに精一杯で撃ち合っている姿は一切見えていないのだ。
激しい剣戟の最中で感じるのはやはり経験値の差である。
やはり魔法剣士には敵わない。
だがグリースも呼吸を整えながらアランの攻撃を躱していく。
肩の傷が疼き気の抜けない状況ではあるが、ヴァルト仕込みの剣術と増幅した魔力のお陰で何とか撃ち合うことが出来ていた。
「剣の心得があったとは驚いた。 魔法使いがやるじゃないか」
「魔法剣士様に褒めて貰えるなんて光栄だよ」
剣術では劣っていてもこちらには魔力がある。
それも莫大の。
グリースは僅かに出来た合間に呼吸を整え反撃を開始した。
身体強化でアランの懐に入ると下から素早い一撃を放つ。
ギリギリの所で躱されるもそこを狙い黒刀を振り下ろした。
「くっ……!」
アランは既の所で刀身を剣で受け止め、魔力を振り絞り形勢逆転を狙う。
だがそれもグリースの計算の内だった。
「《虚空・生》!」
グリースが虚空の魔法を唱えた。
すると黒刀が生き物のように蠢く黒い影へと姿を変える。
そして刀身がぶつかり合う箇所からアランの剣をズズズと飲み込んだ。
その影はぐんぐん魔力を吸い上げ本体を腐食していく。
以前のグリースでは魔法剣まで腐食させる事は不可能だったが、増幅した魔力のお陰でそれが可能になった。
影が消える頃には剣が柄のみになっていた。
それを見てアランは愕然とする。
「なんだこの魔法は……見たことないぞ」
「生を与える魔法が使えるのは《不死の上に立つ者》だけだからな。 見たことなくて当たり前だ」
流石にアランはその存在を知っていたようで、ガクンと膝から崩れ落ちた。
「まさか……お前が……?」
「虚空と傀儡の魔法使い、グリース・アーレンツだ。 以後お見知りおきを」
そうしてようやく決着がついたのだった。
戦意喪失のアランを見てグリースは大きく溜息をつくと、ふっと顔を上げた。
そしてガタガタと震え顔面蒼白になったドルマンを見た。
「ば……化け物……」
消え入るような声だがグリースの耳にはしっかり届いた。
勿論他の兵士達の声もだ。
グリースが人前で虚空の魔法を使おうとしてこなかったのはこれだ。
慣れているとはいえ、やはり息苦しい。
では彼女はどんな反応をするのだろう。
やはり拒絶するのだろうか。
グリースはゆっくりとリシュの方を見た。
目があったリシュは大きく目を見開きこちらをじっと見ている。
それはどういう意味だろう。
近づきたくても、聞きたくても、出来なかった。
「これが本当の俺だ。 隠しててごめん」
それが精一杯だった。
グリースは唇をきつく結び静かに目を伏せたが、次の瞬間ドン、と柔らかい衝撃を体に受ける。
そのままぎゅうっと抱き締められ息を呑んだ。
「無事で良かった……!」
その腕はリシュのものだった。
見るとボロボロと大粒の涙を流しこちらを見ている。
「リシュは……俺が怖くないのか?」
グリースの問にリシュは泣きながら首を傾げる。
「何でですか? グリースさんが怖いわけないじゃないですか」
そしてリシュは眉を下げて笑みを浮かべる。
グリースは堪らずリシュを抱き締め返した。
「そんな事言ったらもう逃さないぞ。 それでも良いのか?」
逞しい腕と懐かしい彼の匂いにリシュは思わず深呼吸をする。
「だって私はグリースさんのものなんでしょう? 撤回はききませんよ」
その台詞が聞けたのが公衆の目前だったのが大層悔やまれた。
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