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黒と白

 三人の視線がガブに集まる。

 その中でガブは続けた。


『さっさとケリつけて帰れば問題ないだろう』


「確かにそうだが……」


 どうするのが最善なのかはわかりきっている。

 だからガブは逡巡するグリースの背中を押した。


『今ここでやるぞ。 リシュ、頼む』


 ガブと目が合いリシュは一瞬顔を強張らせたが、大きく息を吐くとグリースの手をとり強く握リ締めた。

 その手は微かに震えている。

 グリースもリシュの意志を理解したのか、手を握り返すとそのままコン、と自分の額に当てた。 

 

「俺にはガブ(お前)が必要だ。 ここで引いたらリシュの勇気が無駄になる。 戻ってきてくれ」 


 それは敬愛の意を示す仕草である。


『やっとオレを認めたか! 頼んだぞ、相棒!』


 互いの思いが伝わりガブとグリースはニヤリと顔を見合わせた。

 その頃ようやくアランが咳を切ってドルマンの元に辿り着いた。

 

「父上、リシュは聖女の力の持っています! 手を出すのはお止め下さい!」

 

「それは本当か!?」

 

 『聖女』という言葉にドルマンは血相を変えリシュに目を向ける。

 リシュもドルマンに気づき一瞬慄くが、決して目を逸らさない。

 人形の様だった昔の面影はもうそこにはなかった。

 アランの言葉に嘘はないと判断した。


「今すぐ全員捕らえろ!」 


 ドルマンは大声を上げ兵士に命を下した。


「父上! 手荒な真似は……」


「煩い! お前もさっさと行け!!」


 目の色を変え激を飛ばすドルマンに畏怖したアランは黙り込んだ。

 戦慄する中、いよいよ魔力を譲渡する。


『リシュ! 頼んだ!』

 

「はい!!」


 ガブの掛け声に合わせリシュはガブとグリースの手を束ねると、強く強く願いを込める。


(お願い! 魔力をグリースさんの所へ!)


 するとグラリと視界が歪み譲渡が始まった。

 重ねた手に光が集中していく。

 まるで全身の細胞が猛スピードで活性化していくようだ。

 だがその速さに体が耐えられず心臓が大きく脈打ち酷い頭痛に襲われる。

 それでも二人は手を離さぬよう唇を噛み意識を保った。

 シーラも、アラン達も何が起こるのかと刮目する。

 だがそれは束の間だった。

 光が和らぎ緊張感が解けていく。

 体はまるでマラソンを猛ダッシュで駆け抜けた後の様だ。

 リシュの腕の中では、ガブがくたりとのびている。

 この様子だと譲渡は無事にうまくいったようだ。


「グリースさん……どうですか?」 


 荒い息を吐きながらグリースは不思議そうに自身の手をじっと見つめていた。


「こんなにも大きかったんだな……」


 その顔には様々な感情が混ざり合っている。


「貴様ら何をやっている! さっさと捕らえろ!」   

     

 我に返ったドルマンは再び声を上げた。

 だが兵士達は一向に動こうとしない。

 目の前にいるのは本当に同一人物なのか。

 疑ってしまう程の魔力の差を見せられ兵士達は萎縮して動けないのだ。

 

「リシュの中にいる間に随分デカくなっちまったんだな」


 そういってグリースはグッと拳を握ると、魔力を束ね艷やかな漆黒の剣を出した。

 そしてその剣先を兵士達に向けると口の端を上げた。


「怪我するから勇気のあるやつだけ掛かってこい」


 勇気など有るわけない。

 だがドルマンの命令に背く訳にもいかず、及び腰の兵士達が一斉にグリースへと襲いかかった。


「昔に戻ったみたいで制御が難しいな」


 なのでグリースは軽く剣を振るだけにした。

 しかし兵士達はその風圧で見事に吹き飛ばされる。

 中にはドルマンを越えていった者もいた。


「なんてデタラメな力だ……」


 圧倒的な力の差にとうとうドルマンも腰を抜かした。

 兵士達もすっかり覇気を失ってしまった様だ。

 だがアランだけは違った。

 妹達を守れなかった上に劣勢へと逆転してしまい、体は怒りで打ち震えている。


「貴様だけは……絶対に許さない!!」


 そしてありったけの魔力を込め、電光を散らす光彩の剣を創り上げた。

 リシュもシーラもここまで感情を顕にした兄を見たのは初めてだった。

 

「トワ、リシュ達を守ってやってくれ」


 わふ!っと軽快な返事にグリースは安心した様子でアランを見据える。


「今度こそ決着つけようじゃないか」


「あぁ、臨むところだ」


 そして互いの剣先を相手へ向けた。


 


 

 

 

 



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