欺くためには勇気と変装が重要
二人と一匹はシーラを探す為に街へ向かったのだが、少ない魔力量を温存するため今回は魔力は使わず変装をすることにした。
そこで立ち寄ったのはジークフリードの店。
ここは大物の魔法使いもよく訪れる品揃え豊富な店である。
裏では変身魔法が苦手な魔法使いに貸し出すための様々な道具や服が揃っていることでも有名だ。
なので大概の物がここで揃えられる。
「普段は認識阻害するメガネを使うんだが、あれは今修理中でな。 着替えならそこそこ揃っておるから似合うものを見繕ってやろう」
そうしてリシュが勧められたのは、大きめの黒いローブとベスト、サスペンダー付きのズボン。
魔法使いの少年という設定だという。
勿論少年なので長い赤髪は一つにまとめしっかりと被ったフードの中に収めた。
リシュは照れながらもワクワクした表情で鏡の前でクルリと回って見せた。
「なんだかいつもと違う自分になると元気が出ますね。 今ならシーラも見つけられそうな気がします!」
「リシュちゃんは少年姿でも可愛いなぁ。 で、グリースのやつは……」
チラリと着替室の方に目を向けると、今にも何かが飛び出して来そうな勢いでカーテンが開かれた。
「なんで俺はこんな格好しなきゃならねぇんだよ!」
怒声混じりで出てきたのはグリースだったが、腰まで伸びた漆黒の髪をサラリとなびかせる、なんとも妖艶な雰囲気を醸し出す女性になっていた。
「仕方ないだろ。 男の部分を隠すためにはそれぐらい着込まんとすぐバレるだろが」
「違う、そこじゃない! 隠すぐらいなら別に男のままでも良いじゃねぇか。 こんな大きい女だって充分目立つだろ!」
「女装は敵の目を欺くため! それだけの美貌があれば相手の懐に入るのも容易い! というか向こうからエサ持って来るぞ! ほれ、リシュの目を見ろ!」
見たことのない剣幕で迫るジークフリードに気圧され言われた通りチラリとリシュの方を見ると、頬をほんのりと赤く染め、まるで恋する少女の様な目でこちらを見ていた。
「グリースさん……本当の女性みたいでとっても素敵です」
どうやらリシュも大層気にいったようでグリースは言葉をなくした。
「いやいや、お前は素材が良いからよく似合ってる。 これで愛らしい弟子を従えた美魔女の誕生だ!」
ジークフリードが拳を高々と掲げ熱弁するその後ろでガブが腹を抱えてケラケラと笑っていた。
「これが片付いたら覚えとけよ……」
額に青筋を立て腕を組むグリースは白い目で二人を睨む。
確かに少々背は高めだが元々睫毛も長く整った顔立ちなので、薄い唇に紅を引けば魔女に見える。
と言うより女帝だ。
「リシュが気に入ったなら仕方ない。 やってやるよ」
グリースは大きく溜息を吐き諦めたのだった。
そうして二人はジークフリードから指導を受けたのち、シーラの足取りを探す為街に出た。
街には既にエフモント家の者と思われる兵士達があちこちで周回していた。
二人は黒のローブを羽織り、兵士達の目を掻い潜りながらシーラの居そうな場所を手当たり次第探っていく。
しかしシーラの気配すら掴むことは出来なかった。
「シーラってばどこに行ってしまったんでしょう」
「街をこれだけ探しても居ないということはここではないのかもな」
休憩がてら、二人は物陰に隠れ座り込む。
『そもそもシーラってどんなやつなんだ?』
リシュに抱えられていたガブがローブからヒョコリと顔を出した。
「シーラはきれいな銀髪の可愛らしい女の子ですよ。 でも色々制限されてやりたいことも許してもらえなくて、今回こんな騒動を起こしたみたいなんです」
『へぇ〜人間にも色々あるんだな』
グリースはシーラが兄であるアランに連れ戻される時『魔法使いになる!』と叫んでいたことをふと思い出しす。
「ここまでするならいつもみたいにうちに来れば良かったのに」
ポツリと呟いたその時だった。
「お姉さん方、そんな所で何をしてるんです?」
表通りの方からエフモント家の警護兵と思われる男二人がリシュ達を見つけ声をかけてきた。
警戒するというより下心ありげな表情だ。
二人の脳内にジークフリードが言っていた台詞が過ぎった。
(向こうからエサ持ってきた……)
ジークフリードの教えも満更ではないと思うグリースだった。
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