夢の中の不思議な少年
きっとここは夢の中だ。
それならば早くここから抜け出したい。
どこまでも続く暗闇の中、リシュは泣きそうになりながら必死に少年を追う。
『おい、なんでついてくるんだよ』
『ごめんなさい。 真っ暗なのが怖くて……』
すると少年は再び背を向けスタスタと歩き出した。
光のように見えた少年がどんどん遠ざかり、背後からどんどん闇が迫りくる。
夢の中なら早く覚めてほしい。
『待ってください!』
リシュはとうとう声を上げ少年を引き止めた。
すると少年は足を止め、眉を潜めてつかつかとリシュに詰め寄った。
『そんなに暗いのが怖いのに何でここに居るんだよ』
『それが私にもよくわからなくて。 只、誰かが泣いているような声が聞こえたのでそれが気になって……』
『ここには俺しか居ない。 誰かが泣いてるなんて、そんなの只の空耳だ』
『そうですか……彼、もう泣いてなければいいんですが』
リシュはしゅんと肩を落とし睫毛を伏せた。
『そんな泣いてるやつを見つけてどうするつもり?』
『側に行って泣いてる理由を聞いてみたいんです。 こんな暗闇の中一人でいるのはきっと心細いと思うので』
『側に行って、か……』
少年は俯き溜息をつくと、下から見上げるようにしてリシュを見た。
その瞳にはもう刺すような冷たさは感じられない。
『あんたは俺のこと、怖いと思う?』
『怖い? 寧ろ心強いです』
『何で?』
『貴方が居てくれるだけで、私は今こうやって立っていられるんですから』
『初対面のやつなのに?』
『もうお話してますよ』
目を細めて笑うリシュに少年は目を丸くする。
そしてあーあ、と嘆息を漏らし頭の後ろで腕を組み背を向けた。
『あんたの中だったらきっとこんな暗闇じゃないんだろうな』
『え?』
『何でもない……なぁ、あんたには俺が必要なのか?』
『はい。 いてくれると嬉しいです』
リシュは少年の手をとり満面の笑みを見せると、少年はブワッと顔を赤らめ再び俯いた。
『……あいつは俺が必要ないみたいだし、暫くあんたの側にいてやるよ』
『え?』
『アイツを困らせて俺の重要性を分からせてやるんだ』
『え……?』
少年は繋いでいたリシュの手の甲にチュッと口づけた。
次の瞬間カァっと視界が光に包まれリシュは思わず目を閉じた。
わぅ! わうわう!!
トワの声が聞こえる。
リシュはハッと目を開けた。
「あれ? ここは……ってきゃぁぁ――――!」
どうやらベッドで寝ていたようだが、部屋の中が再び森のように植物が生い茂っていた。
トワも驚いているのか、部屋の中でウロウロと歩き回っている。
「リシュ! どうした!?」
「また部屋の中が植物で埋め尽くされてるんです!」
「えぇ?!」
蔦に覆われた扉に駆け寄り手を当てたがやはりビクともしない。
リシュは不安な表情を浮かべギュッと手を握った。
(お願い! ここから出して!)
すると、以前グリースが虚空の魔法を使ったときの様に、リシュの触れていた所から徐々にボロボロと扉が腐食していく。
(これってもしかして……)
トワが腐食した扉に体当りすると、扉はガラガラと崩れ向こう側へと道が繋がった。
「リシュ、ケガはないか? っていうか何やったんだ?」
「扉に手を当てたら突然ボロボロと崩れちゃって……これって、もしかしてグリースさんの虚空の魔法ですか?」
「そうかもしれないな。 本当にリシュの中にあるんだな」
部屋の中の状態をみると、以前のように魔力が増幅し、リシュの魔力がペンダントに収まりきらなくなっているようだ。
(もしかして、あの夢の中にいたあの子が……)
すると突然強力な眠気に襲われ、瞼が重くなっていく。
「おい! リシュ!?」
そしてそのままグリースの腕の中で意識を失った。
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