魔法使いと魔法剣士 3
「何のつもりだ。 只の兄妹喧嘩だから放っておいてくれないか」
シーラを庇うグリースをアランは眉を顰めて睨みつけたが、グリースは全く動じない。
「せめて妹の言い分を聞いてやったらどうだ?」
「……その必要はない……」
アランが腰に下げていた剣の柄に手を伸ばした。
グリースもそのまま剣を抜くのかと身構えたが、頭上から別の殺気を感じ、咄嗟に身を捩りそれらを躱した。
床に突き刺さったのは剣先の様な多数の氷柱。
アランはというと柄に手を添えているだけだった。
(そういう事か……)
グリースがシーラから距離をとった瞬間を見計らい、アランはシーラの手を引きそのまま荷物の様に肩に担いだ。
「離して! もうあんな家に帰りたくない!!」
「何度やっても逃げられやしない。 いい加減諦めてくれ」
ジタバタと手足を振っていたシーラだったが、アランの言葉に大きな瞳を見開き頭を垂れると、ボロボロと大きな雫を幾つも落とす。
確かに只の兄妹喧嘩かもしれない。
これ以上踏み込めば、疑いの目を向けられリシュにも危険が及ぶ可能性がある。
それでも。
「……あのタイミングで無詠唱とは流石だな。さっきの兵士達とは段違いだ。 いつか手合わせ願いたい、魔法剣士殿」
グリースは再びアランに声をかけた。
するとちらりと振り返るアランの瞳は先程の氷柱の様に鋭かったがクッと口の端を上げた。
「そういう君こそ只の魔法使いじゃなさそうだな。 久しぶりに骨のある相手に会えて嬉しいよ。 だが……」
再びアランはくるりと背を向けた。
「俺は剣を持っていない相手とやり合うつもりはない。 そうそう、そこに転がってる奴らには全員クビだと伝えておいてくれるか。 ではまた何処かで」
そのままシーラを抱え入り口へと向かう。
すると俯いていたシーラがグッと顔を上げ涙を溜めた瞳でグリースに向かい叫んだ。
「絶対に諦めないんだから!!」
それは『助けてほしい』ではなかった。
『聖女ではなく魔法使いになる』という夢はまだ諦めない、という強い決意なのだろう。
今はひとまずここまでだ。
グリースはぐっと拳に力を込め店を後にする二人を見送った。
「グリースさん大丈夫でしたか? すごい気迫の方でしたね」
「あぁ、問題ない。 テオも驚かせて悪かったな」
「いえ! グリースさんの見事な身のこなしが目の前で見れて良かったです!」
緊迫した状況に巻き込まれたにも関わらず、今も尚グリースにキラキラと尊敬の眼差しを向けていた。
(これはゾーイに睨まれそうだな……)
グリースの頭には別の懸念が過ぎった。
「よく止めたじゃないか。 昔のお前ならあのまま向かっていただろうに」
ジークフリードもすっかり冷めてしまったお湯を沸かし直す。
「リシュのこともある。 シーラの事は体制を整えてタイミングを見計らうよ」
ようやくグリースも大きく息を吐いた。
◇
あれから約十分程経った頃。
リシュは街でテオを迎えに来たゾーイと出会ったと言って、二人でジークフリードの店へとやってきた。
勿論のびていた兵士達は叩き起こし、クビにされた事も律儀に伝えお帰り頂くと、CLOSEの看板を下げ人払いをした。
「……そんなことがあったんですね。 私達も大きな馬車が通るのを見かけました。 きっとあの中にシーラとアラン兄様が居たんでしょうね」
「すまん。 何もしてやれなかった」
グリースは暗い顔をして俯いているリシュの肩に手を置き頭を下げた。
するとリシュはふるふると首を振る。
「グリースさんは全然悪くないです。 寧ろ助けようとして下さってありがとうございます」
「リシュ……」
妙な雰囲気に何かを察したのか、ゾーイが片眉を上げ口を開いた。
「ていうか、うちのテオが巻き込まれたんだ。 きっちり説明をしてくれるか」
「わかった。 だが事情が事情だ。 口外には漏らさないと約束してくれ」
「お? おぅ……」
そうしてリシュはこれまでの経緯をポツリポツリと話し始めた。
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