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きっともう、怖くない 2

(それって、これからもこうして手を繋ぎたいってことですか!?)


 生憎その真意を聞き出せる勇気はない。

 今は赤い顔でコクンと頷くのが精一杯だった。

 それを見たグリースも自分のカップを手に取ると、グイッと一気にホットミルクを口に流し込んだ。

 熱さに少しむせつつも、多幸感に満ちていく。


 しかし困ったことに、二人共重ねた手の次なる行き場が思いつかない。

 グリースもこの現状に耐えるのに必死でガブも動かせない。

 救いの手を差し伸べる者も無く、暫く沈黙が流れた。


「眠れるように香でも焚くか」


 薬草の中には入眠を促す作用をもつ種もあり、それを花や果実から抽出したオイルと混ぜて焚けばアロマ効果で寝付きが良くなるのだ。

 しかしリシュは立ち上がろうとしたグリースを引き止めて首を左右に振った。


「まだ、寝るのは怖いです」


 そしてリシュはポツリポツリと見た夢の話を語り始める。

 その間グリースは隣でじっと耳を傾けた。


「ごめんなさい、夢が怖いなんて子どもっぽい事を言って……」


「そんなの大人も子どもも関係ないだろ。 そうだ!」


 グリースはポンッと手を打ちリシュの顔を覗き込んだ。


「何か見たい夢はないか? 前シーラにしたみたいにそれを見せてやるよ」


「見たい夢、ですか……」


 口元に手を当て真剣に考えるが、日頃から欲の薄いリシュには難度の高い質問だ。

 その様子を見てグリースもふむと顎を撫でる。


「じゃあ、虹の麓を探しに行くっていうのはどうだ?」


「虹の麓?」


「子どもの頃によく探しに行ったんだがなかなか辿り着けなくてな。 現実ではほぼ無理だと言われているようだが、夢の中ならいけるかもしれないぞ」


「見れるだけでも嬉しいのに、探しに行くなんて楽しそうです!」


「だろ? 正直、今でも行ってみたいとは思うな」


「どんな光景なんでしょうね。 そういえばグリースさんの子どもの頃って、どんな感じだったんですか?」


「ケンカばっかりやってたから、いつも傷だらけで可愛げのない子どもだったよ」


「やんちゃだったんですね」


 その姿が容易に想像できてしまい、リシュは申し訳なく思うもクスリと笑った。

 この何でもない会話が、リシュの心を解していく。

 すると香も焚いていないのにふわぁ、と自然にあくびが出てきた。


「少しラクになったみたいだな。 部屋まで戻るか?」


「いえ、ここが良いです。 あの……」


「どうした?」


「グリースさんも一緒には無理でしょうか?」


 グリースにガンッ!と後頭部を殴られた様な衝撃が走る。

 

「出来ない事はないが……い、良いのか?」


「グリースさんと一緒だったら心強いです」


 少し眠くなったのか、とろんとした目で見つめてくるリシュを見て、グリースは大きく咳払いをし、細心の注意を払ってリシュの手を握った。


「……何かあったらちゃんと助けてやるからな」


「はい」


 魔法使いというよりまるで騎士だ。

 手から伝わる体温からふわりと温かい空気に包まれる。

 リシュもグリースの手を握り返すと、肩に寄りかかり目を瞑った。


(グリースさんとなら、きっともう怖くない)


 リシュはようやく安心出来る場所を見つけたのだった。

 


 

 



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