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恋人のフリをしてみる

「い、一体いつから……」


「そこのぬいぐるみが喋ってる所から」 


「あぁ、あれは俺の腹話術で……」


「うそ! さっき抱っこされたままお姉ちゃんの顔をよしよししてたもん!」


 少女は頬を膨らませこちらを睨む。

 髪色については何も言わない所をみるとそこは気づいていないようなので、ガブの件は諦めることにした。

 

「……お前の言う通り、ガブ(これ)は俺の魔法で動いてる。 だが誰にも言わないと約束してくれ」


「何で?」


『バレたらギャラリーが集まってきてしまうからだ』


「分かった!」


 少女は膝に乗ってきたガブを手に取りようやく機嫌を直したのだった。


「えっと、私はリシェ。 こちらがグリードさん。 で、その子がガブさん。 あなたのお名前教えてくれる?」


「シーラ。 シーラ・エフモント」


(やっぱり……)


 リシュは動揺したがすぐに気を取り直す。


「シーラは何で森の中で倒れてたの?」


「森には魔法使いがいるって言うでしょ? だから探しに来たんだけど途中で疲れて眠たくなっちゃって」


『何だその発想は……』


「魔法使いを探してるって、どうして?」


「私、聖女をやめて魔法使いになりたいの!」


「「えぇっ!?」」


 リシュとグリースは声を揃えて驚いたが、シーラの顔を見ていると冗談ではなさそうだ。


『何でだ? 聖女っていったら周りにチヤホヤされて何でも自由に出来るんじゃないのか?』


「チヤホヤしてくるのは大人だけ! 友達は作れないし部屋に籠もって勉強ばかりだし。 好きなことしてたら怒られるし……」


「でもお家の人達は優しくしてくれるでしょう?」


「……あの人達は『私』なんか見てない。 見てるのは『聖女になる器かどうか』ってだけだよ」


(そんなに……?)


 思わず二人は言葉をなくした。


「だから私は聖女なんかなりたくない。 自分の未来は自分で決めたい! それで先ずは魔法で空を飛んで色んな国に行ってみたいの!」


『……旅に出てみたいのか?』


「歴史や地理の勉強は好きなの。 見たことのない景色がたくさんあるんだよ。 想像するだけでワクワクしてくるの!」


 目を輝かせて語るシーラを見てリシュは胸に手を当て、グリースの服をギュッと掴んだ。

 心中を察したグリースもまた複雑な面持ちだ。


「まぁその志は理解したが、ここに来ることは家の者に伝えてあるのか?」


「ううん。 黙って出てきた」


「何だと!?」


「それはお家の人が心配するからダメですよ!」


「ダメ、なの?」


「当たり前だ。 未成年は特にだ」


「私の事、心配してくれるならその方がいい」


 二人は顔を見合わせる。

 シーラの家族に対する不信の根はかなり深そうだ。


「……二人がお父さんとお母さんだったら良かったのに」


「「え?」」


「だって私の話、真剣に聞いてくれるし、心配もしてくれるんだもん。 ねぇねぇ、二人はもう結婚してるんでしょ? 新婚旅行どこに行ったの!?」


「新婚旅行って、私達はそんなんじゃ……」


「じゃあまだ恋人同士?」


「えっと、その……」


『恋人同士、だ』


 そう言ったのはシーラの膝に座っていたガブである。

 

(ガブさん! 一体どういうつもりですか!?)


 茹でダコの様に耳まで赤くしたリシュはあわあわとガブとグリースを交互に見る。

 すると、落ち着けと合図するかの様に今度はグリースはリシュの手に指を絡め、ぐっと握った。


(はぅぅっ!!)


『ほらな。 だがこれ以上はプライバシーに関わるから言わないぞ』


「はーい……」


 これ以上詮索されぬよう先に釘をさす。

 長引けば素性がバレてしまう可能性があるからだ。

 というより二人共これが限界だ。


『リシェ、何かお菓子でも持ってきてくれ』


「はっ、はいぃ!!」


 リシュは慌てて手を離すと逃げ出すようにして台所へと向かう。

 そして食器棚の影に隠れるとズルズルと座り込んだ。

 

(心臓が止まってしまうかと思いました……)


 逆に止まることなくとてつもない早さで脈打つ心臓を落ち着かせようと胸を抑えるがなかなか止まらない。

 

(けど、全然嫌じゃなかった……)


 『恋人同士』という言葉が耳から離れない。

 勿論事実ではないし、グリースではなくガブが言った台詞ではあったが、恋人の様に繋がれた手からは手袋越しでも熱が伝わってきた。

 

(グリースさんも同じ様にドキドキしてくれてたのかな)


 リシュは熱くなった顔をパタパタと手で仰ぎながらお茶菓子の用意をするのだった。

 

 

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