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課外授業で分かった事は 

「リシュ! 大丈夫だったか?」


「私は大丈夫です……でも、レフカさんが私のせいで大怪我を……」


 リシュは大粒の涙を流しながら胸に抱いていたレフカを見せる。

 全身を打ち弱っているようで、息苦しそうだ。


「……すまん、レフカに効く回復魔法はないんだ」


「え……じゃあ助からないかもしれないんですか?!」


「あぁ、本人次第だ」


「そんな……」


 リシュはレフカを胸に抱き涙を流し続けた。


「私のせいで……レフカさん……!」


 リシュの涙がポタポタと地面を濡らす。

 その時だった。

 レフカを包むように抱いていたリシュの両手が淡く光りだした。


「これは……」


 リシュもグリースもその光に目を瞠る。

 そしてリシュの手に集まっていた光が次第にレフカの体へと吸収されていくと、レフカが薄っすらと瞳を開いた。


「……レフカさん?」


『私……まだ生きてるの?』 


「はい! 生きてます!!」


 意識を取り戻したレフカに頬を寄せて泣き続けるリシュを宥めながら、グリースは困惑していた。


「リシュ、今レフカに何をしたんだ?」


「へ? 私は何も……。 ただ、『レフカさん死なないで』って思ってただけですけど」


「じゃあ今のは……」


 顎に手を当て何やら考え込むグリースを見てリシュは小首を傾げる。


「どうかしましたか?」


「いや、とにかく家に帰ろうか」


 

 ◇



 家に戻るとリシュは一番に小さな籠に真綿で出来た敷物をギュッと敷き詰め、そこにレフカをそっと乗せた。


「痛くないですか?」


『大丈夫よ、世話かけたわね』


 ふいっと目を反らし照れるレフカにリシュはふふっと顔を綻ばせた。


「それにしても、回復魔法は効かないって言ってたのに、何故レフカさんは元気になられたのでしょうか」


「多分リシュの『聖女の力』だろう」


「私の『聖女の力』?」


「きっと聖女が持つ力の一つ『慈悲の力』で治したんだろう。 じゃなきゃアンデッドは回復出来ない」


「でも私はこんな赤い髪だし、聖女なんてなれない筈なのに……」


「容姿は関係無かったってことだ。 間違いなくリシュには聖女の血が流れてる」


「……!」


 言葉を詰まらせたリシュは両手で顔を覆い俯くと、グリースは慌ててリシュに駆け寄った。


「どうした? 嬉しくないのか?」


 リシュは俯いたままで首を振る。


「……いえ、もっと早くに分かっていれば捨てられずに済んだのかも知れませんが、そうなればグリースさん達には出会えなかったかもしれないと思うと複雑で……」


「そうか……」


「でもやっぱり、これで良かったって思います」


 潤んだ瞳で笑うリシュを見たグリースはギュッと心臓を掴まれ顔を赤くする。


(か、可愛すぎる……!!)


 ガブがいれば間違いなく叫んでいただろう心の声とリシュを抱き締めたい欲を、グリースは必死に飲み込んだ。


「な、なら良かった、よ」


 だがぎくしゃくとロボットの様に動く姿はやはり不自然だ。

 

「……そういえば、『アンデッド』って何ですか?」


 その一言に反応したグリースは、レフカをちらりと見た後椅子に座り直した。


「……実はレフカは俺が作ったアンデッドなんだ。 例えるならゾンビだな。 だから話も出来る」


「え! そうだったんですか?!」


『……あんた、ネズミが喋ってることに何の疑問に持たなかったの?』


「だって、ガブさんやお人形さん達が普通におしゃべりしてるから……」


『それはグリースのせいね』


「混乱させて悪かったよ」


 グリースは苦笑いを浮かべ頭をかく。


「レフカとはこの家に来た時に出会ってな。 仲良くなった頃に獣に襲われて瀕死だった所を俺のこの手で……蘇生の魔法を使ったんだ」


『グリースは『生死の上に立つ者(アンデッド・マスター)』だからね。 やろうと思えば死人も復活させられる。 言っとくけど、私が望んで(・・・・・)そうしてもらったんだから、グリースは悪くないわよ!』


「いや、運命を捻じ曲げて命を繋げてるんだ。 禁忌を冒したって責められたっておかしくない」


 手袋をはめた手を見ながら寂しそうに笑うグリースを見てリシュはこくんと息を呑むと、首を小さく左右に振った。


「確かに禁忌、なのかもしれません。 ですがそこにはグリースさんとレフカさんにしかわからない事情があるんですよね。 私が咎める理由なんてありません」


 そしてリシュはグリースの手をとり両手で包んだ。


「そんな顔をするってことは、ずっとご自身がした事に悩んでいるんですよね。 グリースさんが無闇にそういう事する人じゃないってわかってますから、あんまり自分を責めないで下さい」

 

 リシュの手から伝わる温もりと笑顔。

 グリースは顔を覆い俯いた。


「……ありがとう」


「こちらこそ、いつも私を肯定してくれてありがとうございます。 ……っは!」


 リシュは慌ててグリースの手を離した。

 グリースもどうしたのかと目を丸くする。


「リシュ?」


「ごめんなさい、軽々しく手を握ってしまって……」


 頬を染め俯くリシュを見ると、グリースに怯えて、という訳ではなさそうだ。


「あっ……いや、大丈夫だ」


 つられてグリースも目を泳がせ俯いてしまう。


『……何でそこでくっつかないのよ』


 お互いに顔を背け赤面する二人を見て、レフカは呆れつつ小声で呟いた。

 


 

 


 




 

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