課外授業はかくれんぼ
それから三日が過ぎた頃。
屋敷内には至る所に花が飾られ、甘い香りに満ちている。
因みにどれもリシュが咲かせたものだ。
「私には才能がないのでしょうか……」
「いや、倒れなくなっただけ成長したと思おう」
グリースも苦笑いを浮かべてまたしても開花してしまった花を眺めている。
すると半べそをかいているリシュの前にガブが現れた。
『そう項垂れるな。 言っただろう、誰だって最初はこんなもんだって』
「はい……。 でも、やっぱり自分が情けなくなります……」
ガブでさえも、すっかり自信を無くしてしまったリシュを慰められないと悟ったグリースは、顎に手を当て何やら考え込む。
そして溢れてしまった魔力を貯める為に付けているリシュの首飾りに触れそれをじっと見つめた。
「グ、グリースさん……?」
伏せ目がちの赤い瞳が長い睫毛からちらりと見える。
それが妙に色っぽく見えるのも、端正な顔立ちだからなのだと再認識する。
それほど迄の距離に迫ったグリースにリシュの心臓はとんでもない速さで脈を打っていた。
そうとも知らずにグリースはその距離間のままで話しかけるのだった。
「ちょっと荒療治になるが、課外授業に変更だ」
「課外授業?」
そうしてリシュはグリースに外へと連れ出されたのだった。
◇
「今からこの森の中でかくれんぼをしよう」
「かくれんぼ……ですか?」
「そうだ。 とにかくリシュはこの森の中で俺に見つからないように隠れるんだ」
「この森の中を!? どうやってですか!」
「自分の魔力を使いながらだ」
「でも、私はまだ上手く制御も出来ないんですよ?」
「あぁ、だから荒療治になると言ったろ。 レフカ、出てきてくれるか?」
すると、ローブのポケットの中からネズミのレフカがむっと顔を顰めながら姿を見せた。
『美味しいおやつにありつけるって言うからついてきたのに、何でこんな森の中にいるわけ?』
「今からかくれんぼをするから、レフカはリシュのアドバイザーになってやってくれ」
『はぁぁ?? 何で私がこの子のお守りをしなきゃならないのよ!』
「後で美味いチーズととっておきのナッツを用意するから頼むよ」
指で顔を優しく撫でられレフカはうっとりとした様子で『仕方ないわね』と呟きリシュの方へと飛び移った。
「制限時間は一時間。 又はそのネックレスに溜まった魔力が切れる迄だ。 レフカのアドバイスを聞きながら上手く魔力を使ってみてくれ。 じゃあ五分数えたら見つけに行くからな」
『ホラ、走りなさい!』
「え? え?」
『さっさと隠れるわよ!』
「はっ、はい!!」
そうしてかくれんぼという名の課外授業が始まった。
◇
『先ずはここ。 この茂みの窪みでより上手く隠れるためにこの木の蔦をここまで伸ばしてちょうだい』
「呪文もわからないのにどうやってですか?」
『《お願い》するのよ。 呪文は良いからとにかく《蔦を伸ばして私を隠してください》って静かに呟きなさい』
「は、はい! ――――《お願いします、蔦を伸ばして私を隠してください》……」
レフカの言う通りに小声で呟いたリシュの背後からぐんぐんと蔦が伸びて木を這いずり、茂みの隙間を埋めるようにどんどん草木に絡まっていく。
『そうやって呟くようにしたら無駄に魔力を消費せずに済むわ。 ペンダントの色もまだまだ大丈夫でしょ?』
「緑色がゆらゆらしてますけど、色はまだ深緑です」
『よし、じゃあ一旦ここで隠れてアイツの出方を見るわよ』
「分かりました!」
そうして出来た蔦のカーテン横の窪みにリシュ達は息を潜め身を隠した。
かくれんぼなどしたことないリシュはドキドキしながら時が経つのを待つこと約三分。
「見つけたっ」
「きゃあっ!!」
ガサリと大きな葉音と共に居場所を探り出したグリースに背後から抱き締められたリシュは思わず驚き悲鳴を上げた。
『捕まりたくなかったらもっといい場所見つけて上手く隠れるんだな』
グリースの手にはめられたガブが目の前で悪魔のように意地悪く笑う。
そしてグリースの腕の中に抱き納められたこの状況にリシュの羞恥心のメーターがどんどん上昇する。
「いや――!!」
「げっ!」
そしてとうとうメーターが吹っ切れたリシュは、魔力を使いガブとグリースの腕に蔦を絡めるとそのまま側にあった木に縫い付けダッシュで逃げ出した。
『リシュ! よくやったわ!』
「こんなの身が保たないです!!」
『あれなら暫く動けないし、この間に次の隠れ場所見つけるわよ!』
「はい! ご指導よろしくお願いします!!」
そうしてリシュとレフカは魔の手から逃れる為に森の中を必死に駆け回った。
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