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曖昧な記憶 

『リシュ、ケガはないか?』


 再びガブがパタパタと動き出した。


「はい、ガブさんもグリースさんも守ってくれましたから」


『なら良かった。 さて、暗くなる前に帰ろうか』


「そうですね」


 ガブの手をキュッと握り歩き始めた時だった。


(あれ……?)


 少年姿のグリースの背中を見てリシュの頭の中でいつかの記憶が(よぎ)る。




【大丈夫。 暗くなる前に帰ろう】




 前にいたのは同じ位か、少し年上の男の子だ。

 彼もまた、すごく優して安心する声だった。

 

(……誰……?)


 あの時も確かぬいぐるみ越しに手を引いてもらっていた気がする。


(昔の記憶? それとも街につく前の?)


 その少年の髪色は確か……。 




『リシュ?』


 ガブに声をかけられ、足が止まっていた事に気がついた。


『大丈夫か?』


「え? あ、ごめんなさい、大丈夫です!」


 我に返ったリシュはガブの手を握り返し、改めて家に向かい歩き出した。

 記憶はまだ、曖昧なままで。



 ◇



 ようやく家に着き、グリースはふっと魔法を解き青年の姿に戻る。


「疲れただろ、少し休むか」


 グリースはそう言ってリシュの髪にも触れ、黒かった髪色を赤へと魔法を解いた。


「黒も良いけど、やっぱり赤が良いな」


 髪色を確認するかのように掬い上げ笑顔を向けるグリースを至近距離で見たリシュの心臓がドキリと高鳴る。


(さっき迄は年下の男の子だったから忘れてたけど、グリースさんは私より年上の方でした!)


 あどけなくて可愛らしい少年の顔つきから男らしい青年の表情に戻り、その赤い瞳には自分の姿が映り込んでいる。

 リシュはぶわっと顔を赤くした。


『リーーシュッ!』


「はっはい!」


『本当に大丈夫か?』


「ガブさん……ひゃっ!」


 両手で顔を挟みリシュにぐいと顔を近づけた。


『……オレ達の事、怖くなった?』


 思わぬ質問にリシュは目を丸くする。


「何でそんな事聞くんですか? 全然怖いなんて思ってないですよ!」


『いや、さっきもぼんやりしてたし、なんかいつもと違う感じがしたから……』


 ふっと離れたガブの手を、リシュは慌てて握り返す。


「あの、気を悪くさせてたならごめんなさい。 その、本当に楽しかったです! 一緒に街に行けて……色々な事が経験出来て、すごく嬉しかったです」


 リシュの言葉に、やっとグリース達も口元を緩めた。


『なら良かった。 そうだ、リシュにコレ』


 グリースは持ち帰った荷物の中から緑色の石の付いたネックレスを取り出した。

 ジークフリードの店で買っていたものの一つだ。


「わぁ、可愛い……私に、ですか?」


『お守り代わりだ。 魔導具だし、身につけとけばいざという時に役に立つかもしれないからな』


 後ろへ回りリシュの首にネックレスをかけると、胸元で石が光に反射してキラリと光る。


「本当に頂いて良いんですか?」


『街に行った記念だと思えばいい』


「……ありがとうございます。 大切にしますね」


『使い方は明日、また練習するぞ』


「はい、よろしくお願いします!」


 リシュは二人からのプレゼントをぎゅっと握り、満面の笑みを見せた。





 


 


次回は明後日更新です!

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