8話 2人の夜
「あー疲れた〜」
マニタは宿屋のベッドに腰を下ろす。
この部屋には2つのベッドがあり、机やクローゼットなどがある中々に広い部屋だった。
「どうしましょうね」
マニタとラカムは今命を狙われている。
2人は1度襲われている。その時はラカムが
助けてくれたが、油断は出来ない
「でも相手は民には手を出さないんだよな?
ならここは安全なんじゃねぇか?」
「いえ、そうでも無いかもしれません。 相手には催眠術を使う者もいるようなので」
そうだった。マニタとラカムが襲われた時、その瞬間だけ周りの人達がマニタ達から離れていた。
マニタ達の周りにいた人達は15人程度はいた。
15人程度に一度に催眠をかけるとなるとかなり膨大な力が必要になる。
1人の催眠術師がしているとなるとそれは国王や魔王などに匹敵する程度の能力。
複数人であれば相手は組織的にマニタ達を狙っていると言うことになる。
どちらにしろかなり問題なのだ。
「何かいい対策はないのか……」
「あ、でもとりあえず今日は大丈夫ですよ。この部屋のドアに魔法をかけておいたので。」
ラカムは普段少しぼーっとしていたり、抜けているところがあるがこういうところはきっちりしている。
「マジで?ちょっと仕事早くないですか……」
マニタは自分の無力さを改めて感じる。
「まぁまぁ。今日は体をゆっくり休めて明日に備えましょう」
「ああ。そうだな」
(寝れない……)
この部屋にはベッドが2つあり、ベッド同士は離れていて、マニタは左のベッド、ラカムは右のベッドで寝ている。
普段マニタは右を向いて寝るので常にラカムが視線に入ってくる。
ラカムはマニタと同じ18歳なのだがあまりにも無防備過ぎる。
今までラカムは男子のいるところで育ってないので気にしないのが当たり前なのだろう。
にしてもこれは無防備すぎるのだ。
少し向きが変われば見えてしまいそうな胸。
見てはいけないとマニタは自分に言い聞かせ、そして反対を向く。
だがラカムの寝言が聞こえてくる。
普段の気を張っているような声ではなく完全にリラックスした声だった。
普段から魔女と呼ぶには少し魔女らしさのない声ではあったが今はもう魔女という要素がひとつも無い。
それのせいでマニタは寝れない。
誘惑するようなその甘い声にマニタは負けそうになったがなんとか耐え、いつもとは違う寝かたで深い眠りについた。
ある男は自室であろう部屋の豪華な椅子に腰をかけながら考える。
(なぜあいつが生きていたんだ…あいつは殺したはず…)
そう考えながら煙草に火をつける。
そこでドアがノックされた。どうぞ。と男が言うとドアが開きそこからはメイド服を着た使用人であろう人が入ってくる。
「王様。食事をお持ちしました。」
「ああ…ありがとう」
「こんな時間に煙草を吸われるのは珍しいですね。」
メイド服の使用人は食事を用意しながら聞いた。
「少し考え事をね」
「君にも関係のある事かもしれないな」
使用人はちょうど料理の支度が終わったので王の方を見る。
「どういうことですか?」
「ラカム… この名前を覚えているか?」
「はい。勿論。」
「ラカムがどうかされましたか?」
「あいつが生きていたんだ…しかも今この国のこの街にいる。」
「え!?一体どういうことですか!?」
使用人は驚きのあまり王の顔の前へ身を乗り出していた。
「今日兵隊のやつらから聞いたんだが、どうやらターゲットの他に魔女のようなやつがいると言っていてな。」
「なぜそれがラカムなのですか…?」
「こちらの魔法攻撃を防いだというんだ。しかも不意打ちだから呪文を唱える間はない。そんなことがこの国や周辺でできる魔女…もうわかるだろう?」
「で、でも!そんなはずは!」
「私も兵隊から聞いた時は凄く驚き冷静さを保つので精一杯だった程だ。だがラカムならアレから生き残れるかもしれん」
使用人は驚きとショックを受けていた。
「あの…ラカムが…魔女が…」
「安心しろ。あの女は確実に殺す。」
「何か方法が…?」
「あぁ。とびっきりのがあるんだ」
マニタが起きると既に外は明るかった。
ラカムはもう起きていて出かける支度を終え、本を読んでいた。
マニタが起きたのに気づいたラカムはマニタの方を見る。
「あ、やっと起きましたね」
「え、僕もしかして結構寝てた…?」
「はい。もう9時を越えていますよ」
「すいません…」
そしてマニタも支度を始める。
「なぁ。今日はどこ行くんだ?」
「今日は…行ってみたい場所があるのです」
ラカムは本を読みながらそう答えた。
「行ってみたい場所?」
「はい。私に関係がある場所です」
そういい本を閉じながらラカムは立ち上がった。