7話 新たな仲間と新たな国
「な、仲間? なんでそんな急に……」
「今のこの世界で人は少なく私は常に1人だったのです。でもあなたと共に歩めば私は1人ではなくなる。もう。1人は嫌なんです……」
ラカムはマニタをじっと見つめながらそう言った。その言葉、眼差しからは偽りの気持ちは感じられなかった。
「そうか…… 別に僕は構わないよ。でも僕は強くない。 勇気もない。だから君を守る事は出来ないかもしれない。それでもいいのか?」
「はい」
ラカムは即答した。
(なんか急展開すぎて色々とわからねぇけど僕も旅仲間が増えるのは嬉しいな)
「準備良し!」
ラカムは旅の準備をしていた。ラカムにとって旅は初めての事なのであまり詳しく無かったが徹夜で本などを読み勉強をしていた。
「何が準備良しだよ、食料持たずに」
「あ、忘れてました。ありがとうございます」
ラカムは見た目とは反した表情でお礼をしていた。
「それで、今からサリヤの国へと向かうんですね……」
ラカムは暗い顔で悲しい声で問う。
「そうだけど……何かあるのか?」
ラカムは暗い顔のまま
「今あの国は腐敗してしまっているのです。 王が独裁政治をし、民は冤罪で殺されたり、他にも色々……」
「……」
マニタは絶句した。コノハの国で聞いた時は民が楽しく暮らしている国と聞いていたからだ。
「あの国は民が楽しく暮らしているんじゃないのか?」
「それは表向き…… 裏の顔は恐ろしいのです」
マニタは舌打ちした。
(クソ、そんなやつが王様であっていいのかよ……)
マニタには勇気はないが正義感はある。それが良い事か悪い事かは関係ない。
「そしてあの国には魔術師が数多くいます。戦闘に巻き込まれる事も少なくありません。そこの覚悟はしておいた方が良いです」
「うん。 そうだな。 ありがと。教えてくれて」
そしてサリヤの国へ向けてマニタとラカム。そしてゴブリン達は歩き出した。道中、嵐に見舞われたり散々な目にもあったがなんとか耐え抜き、とうとうサリヤの国へと到着した。
「にしてもデカい門だな……」
周りの壁の高さは約5メートルとそこまでの大きさなのだが門だけは明らかに20メートルは超えているだろう。というレベルだった。なぜ門が大きいのかマニタは予めラカムに聞いていた。「あの門はですね。 王様の趣味です」
こんな答えが返って正直ビックリしている。
(趣味だからといって建てるようなもんじゃないだろこれ)
色々思うことはあったがマニタはラカムと共に国へと入っていく。
ここでゴブリン達と1度別れた。
国へと入ると直ぐに商店街らしきものがあった。
だが、商店街に活気はなく、皆誰もが暗い顔をして働いていた。
「なぁ……この国表向きまでダメになっちまったのか?」
するとラカムは困惑しながら
「私が住んでいた頃はこんなでは無かったのに……」
すると、西の方角、マニタ達から見て左の方向だ。そこから魔法弾が飛んでくる。
轟!と音を鳴らしたその弾はマニタ達の目の前で打ち消された。
マニタは何が起きたか一瞬分からなかったがラカムを見て気づいた。
ラカムは魔法の壁を造り、弾を防いでいた。
「ありがと。 ラカム。」
「いえいえ。私は出来る事をしたまでです」
ラカムは魔法の壁の術を解除する。
そして魔法弾が飛んで来た方向を見たが、
そこに誰もいなかった。
「この辺りにたしかに気配は無い。となると……」
「恐らく空間魔術の応用だと思います。しかもレベルは5以上かもしれません。」
ラカムは説明する。
空間魔術。レベルが低いと物体を浮遊させたりなどの魔術しか使えないが、レベルが高くなるとワープゲートを作ったり、自身がワープを可能にしたりする魔術。習得が困難なため、極めている魔術師は少ない。
「そして、犯人は1人では無いようです。」
「どういう事だ?」
「私たちが攻撃された時を思い出してください。ちょうど周りに人はいませんでした。その直前まではいたのに……」
「てことは、人を操ってたやつがいるって事か?」
この世界では魔術は同時に2つしか使えない。
この場合、ワープゲートと魔法弾の2つを使っている者がいた時、人を操る事は1人では不可能と言うことになる。
そのため、犯人は1人ではないのだ。
「はい。恐らく……」
「厄介な事になったな……。 とりあえず宿探すか。宿なら安全だろうし」
「王様! ターゲットが入ってまいりました!」
ある兵士は王の部屋の扉の前で叫ぶ。
「で、どうだった?」
声は低いが少し掠れている。
「ターゲットに攻撃を仕掛けたのですが、ターゲットに魔法弾を防がれました……」
「防がれた……?」
「ターゲットは1人で来ると予想していたのですが、仲間の魔女のような女も一緒で……」
「魔女……あー……あの女の事か」
そして王は冷淡な口調で告げる。
「ターゲットを徹底的に潰す。そのためにこの国の魔術を使えるものをここに集めろ……いいな?」
「はい!」