5話 それぞれの決意の形
目を覚ますとそこは宿屋のベッドだった。
街には活気が戻り綺麗な青空に美しい景色があった。
今日はこの国の新たな王の挨拶があるらしい。
新しい王の名はワルギス・メニス 先代ワーナスの息子だった。
先代ワーナスは怪物となり村の民の約半分を殺し、そして最後は息子に。メニスに胸を大剣で突き抜かれて死んだ……
マニタはその光景を見ていた。言葉では言い表せない程に残酷で悲しい運命だった。メニスも望んでやった訳では無い……最初は国の人達にどんな事を言われるか不安だった。
だが、幸いにも国の人達はその事を察したのか既に城には沢山の人が王の挨拶を今か今かと待っているらしい。 (宿屋の店主情報)
マニタも身支度をすませ城へと向かった。城のもんの所には献花が供えてあった。考えたくもないが恐らくこれはここの番人のものだろう…… マニタは多くの人を助けられなかった。
でもそんな自分に納得している部分もあった。
もし自分が多くの人を助ける力があるのなら今も自分が勇者でいれた筈だ。だが今のマニタには勇気の欠片もない。ただ皆を助けたい。と大口だけを叩き、何も成せなかったのだ。
城に続く階段を上がるとそこには沢山の民がいた。マニタは人波に飲まれかけたがなんとか人の少ない方に出れた。
(こりゃ。凄い数だな)
マニタが休憩をしていた時。城の扉が開いた。
マニタは魔術の透視能力を使って人混みを関係なしに見ることが出来る。
「クラリビデンシア……」
呪文を唱え透視する。王はワーナスが着てきた赤色の服を見にまとい、左胸には赤の紋章……
かつての若い頃のワーナスにそっくりの姿で現れた。
民から歓声が沸く。
誰一人として王を批判する者などいなかった。
その光景を見るだけでマニタは心がホッとししていた。やがて王は立ち止まり
「私が王の継承者ワルギス・メニスだ。 民の者よ…… まだ不安を感じる部分はあるだろう。だか安心したまえ。私が王の座に就いたたからには皆の安全を保証しよう」
マニタは離れたところからではあったがその言葉は心に響くものがあった。
(これがメニスの守りたかったもの……)
そう。民の笑顔だった。
人にはそれぞれ決意がある。それは誰かが否定していいものでは無いのかもしれない。もし誰かの決意が間違っているのだとしたら、自分の決意は正しいのだろうか。人は常に誰かと一緒の考えをすることでそれが正しいと思ってしまう。それは自分の意志なのではない。
誰かに誘導されてする決意など何の意味も持たない事をメニスから学んだマニタだった。
マニタは支度をし次の国へと向かうため、宿の店主に挨拶をし、宿をでた。
外ではゴブリン達が退屈そうにマニタの帰りを待っていた。
「マニタさん。ちょっと遅いっすよ」
「すまないな。色々とあったんだ……色々と」
マニタは次の国に向かう道中、ゴブリン達にコノハの国であった出来事を話した。
「それで次はどこの国へと行くんですか?」
「コノハの国から西にある国、サリヤの国へと向かう」
サリヤの国。マニタも行ったことがなく雰囲気すらも知らない。この街にまだ民が住んでいるかどうかも分からない。だがマニタは西に進むしかない。魔王討伐のヒントは西の果ての国にあるのだから。
「ハッハッハ!! 面白い!実に面白い!」
薄着み悪い部屋の中である男は笑う。
「まだこいつはみんなを助ける気でいるみたいだな! だが無理なのだよ!そんな事!ハッハッハッハッハッハッ!!」
その高笑いは部屋全体に響き、反響する。
その時まるで何かの合図のように、
古き勇者の伝記が本棚から落ちた……