4話 勇者の優しさと子供の決意
メニスはどんな思いなのだろう……
親が怪物になりそしてその解決方法が殺すしかない……それはどんなに辛いのだろう。
マニタには分からない。でも恩返しをしたい。ワーナスを、メニスの父を助けたい。
「なぁ、メニスの兄ちゃん。何で僕は勇者になれなかったのかな」
「お前は優しすぎる。今この場でもお前はワーナスを助けたいと思っているだろう。だがそれだと本当に救いたいモノを救えなくなるぞ。」
メニスは優しいが冷淡な声でそう告げる。
「本当に……救いたいもの……」
マニタにとって今本当に救いたいもの。それはメニスの父、ワーナスだけ……
「僕が1番救いたいのはワーナスさんだけなんだ!」
メニスは喉が壊れてしまうくらい一生懸命に叫んだ。メニスはクスッと笑い
「知っているさ。そんな事…… 残り香でしかない私に魔法は使えない。私はただの傍観者にしかなれない。君は1人でしか戦えない。それでも君はやるのか?」
「はい」
マニタは即答した。そしてそれと同時に城へと走っていった。
(ワルギス式の魔術は闇、光の魔術の力を利用すればこの結界を打ち破る事が出来る!)
マニタは結界に向かって呪文を唱える。
「ルルフーラ!」
結界を破壊する呪文だ。見事結界は破壊され城までの道が出来上がった。
マニタは走る。走り続ける。城に入ると、そこは昨日見た光景とは違った。
(なんだよ……これ)
兵士は倒れ、執事やメイドらしき人達も皆、血を流して倒れている。マニタはそれらを見ないように目を隠し、大広間を抜けた。
すると背後から刃が飛んでくる……
ッッ!?この距離では避けきれない。そう思いマニタは魔法で盾を作りなんとか自分の身を守ることが出来た。
奥から1人。いや一体歩いてくる。
ワルギス・ワーナスが歩いてくる。子犬の姿では無く、元の姿で。
さっき目を隠していて気づかなかったが、あの死体の山の中に隠れていたらしい。
ワーナスは立ち止まり、
「おぅ。マニタよ。いや勇者よ。よくあの結界を破れたのぉ。褒めてやろう」
そこにいるのは正真正銘 ワルギス・ワーナスだった。
「それはどうも。でも僕の仕事はまだ終わってないので。褒めるのはその後にして頂けると嬉しいですね」
マニタはなんでこんな状況でなんで自分が落ち着いて居られるか理解ができなかった。
「そうか。そうか。なら私を倒してみろ。勇者よ!」
ワーナスの低く残酷な声が響き渡る。それと同時に魔法攻撃が飛んでくる。
マニタはワルギス式の魔術の突破口を知っているので魔法攻撃への対策は出来ている。その対策というのは光の盾を身体の周りに張っておくのだ。そうする事で相手の攻撃を食らわずにすむ。
ワーナスの攻撃はマニタの目の前で砕け散った。
「ほう。中々面白い使い方じゃのぉ。ならばこれはどうじゃ?」
次は魔法によるレーザーが飛んでくる。これも属性は闇。防げる。
だがその攻撃は盾を貫きマニタの左腕に直撃した。
……!?
(なんで防げない……)
「お主は今、何故防げないのか疑問に思ったじゃろう…… 私は今ワルギス式だけではない。魔王の使う魔術も使えるのだ」
ワーナスは笑いながらそう言った。
(魔王の魔術は単なる光の魔法では打ち消せない……)
マニタが考えているとき…… 一瞬だった。ワーナスがマニタの懐に入り込みそして、そこで一発レーザーを放った。
幸いにも魔王の攻撃には多少の耐性が付いているためレーザーは身体を貫通しなかった。
だが大量の出血と共にマニタは床に膝から崩れ落ちた。
ワーナスがゆっくりとマニタに近づいてくる。無慈悲な笑顔で殺す事しか考えていないようだった。
ドンッ! 轟音が背後から鳴り響いた。マニタは力を振り絞り後ろを振り返るとそこには……
大剣を持ったメニスが立っていた。
さっきまでは大剣を手にしていなかった。という事はマニタが戦っている間に取りに行ったものだろう。そしてその大剣にはワルギス家の紋章がはいっていた。 メニスはマニタを見て一瞬驚いていた。だが流石は元魔王軍幹部。すぐに持ち前の冷静さを取り戻していた。
「やぁ、父さん。 久しぶりだね」
「元気だったか、メニス」
それは再開を果たした普通の親子の会話だった。ワーナスは怪物には見えないし、メニスも元魔王軍幹部とは思えなかった……
だからこそマニタは身体だけじゃなく心までもが抉られそうだった。
そして1つ疑問に思うことがあった。メニスはさっき戦えないと言っていた。だがここに立っている……なぜだ……
「メニスの兄ちゃん。兄ちゃんは戦えないんじゃなかったのかよ。」
するとメニスは申し訳なさそうに
「あれは嘘だ。 お前を動けなくするためのな。魔王の魔術が使えることなんて私が知らないと思っていたのか? お前は私を止めにくる。それだと私の目的を達する事は出来ない。だからお前を動けない状態にしたのだ。申し訳無いことをしたとは思っている。だがこれは私と父との勝負だ。お前をこれ以上関わらせたくなどない。」
その声に感情はこもっていない。機械のようにメニスはマニタに向かってそう告げた。
「ま……待てよ……」
マニタは止めようとしたが傷は深く、声を出しているつもりでもメニスには届いていないようだった。
ワーナスは腰に携えていた剣を構える。メニスも自分の身長くらいに長い剣を構える。メニスとワーナスは互いに睨み合っていた。
一瞬だった。マニタが瞬きをした瞬間メニスはワーナスの左腕を斬っていた。
ボトッ…… ワーナスの左腕が地面へと落ちる。
ワーナスは痛みに耐えれず床に這いつくばるように倒れた……。そこにメニスは馬乗りになる。
「メニスよ。お前は強くなった……」
もうその声は声になっていないように思えた。
「父さん。ありがとう。そして……
さよなら……」
メニスは持っていた大剣をワーナスの胸に突き刺した。
マニタはそれをただ見ることしか出来なかった。