3話 父と子
マニタは次の国に向かうための支度をしていた。
(ナイフとランプをカバンに詰め込んで……)
どこかで聞いた事のある様な内容の物をカバンに入れていく。
次の日の朝、ある異変が起きていた。
マニタが呑気に鼻歌を歌いながら宿の窓を開けるとそこには
木が枯れ、民の1部が死んで、空は紫になっていた。
マニタは驚き咄嗟に窓を閉めてしまった。
(一体何が起きているんだ……)
マニタは目の前の現実から逃れるように窓を背にして立っていた。
(そうだ。とりあえず城に向かおう)
マニタは全速力で宿を飛び出し城へと向かった。門のところで倒れているモンスターを発見した。
「おい、大丈夫か!? 何があったんだ!?」
「昨日の旅人の方ですか。 すいません。僕には分からないのです。お城に近づこうとしても結界が張られていて弾き飛ばされてしまうのです。」
鎧を着てないので分からなかったがどうやら昨日の門番の奴らしい。
「結界だと? 分かった。ありがとう、お前はここで休んでろ。僕が行ってくる。」
「分かりました…… お気をつけて」
その声はもう掠れていて力がないように思えた。
城に続く階段を駆け上がるとそこには
かつて倒したはずの魔王軍幹部がいた。
ッッ!?
何でこいつがここにいる?僕はこいつを倒したはずだ…… 困惑しているマニタに向かって魔王軍幹部は
「久しいな。勇者よ。今お前は私が生きている事に驚いているだろう。だが安心しろ。この騒ぎをおこしたのは私ではない」
その声で我に返ったマニタは魔王軍幹部に向かって言った。
「お前じゃないのなら誰がやった! そしてなぜお前は生きている!」
「まぁそうカッとなるでない。私にも誰がやったのか分からないのだ。そして私はあの時の私ではない。残り香の様な物だ。」
残り香……?そうなるとこいつはここに訪れた事がある……?
「なぜその残り香がここにいる!」
幹部はその言葉を無視するように
「お前には私の名を言っていなかったな。」
すると幹部は一息おいて
「私の名はワルギス・メニス。ここの国の王、ワーナスの子だ。」
衝撃だった。勿論ワーナスの子というのにも衝撃だったがそれより自分がかつてワーナスの子を殺してしまっていた事実の方が衝撃だった。
「嘘……だよな?」
「嘘ではない。私のこの左の胸に付いている紋章を見てみろ。」
左の胸には赤色の紋章があった。中にはドラゴンが描かれている。赤色で中にドラゴンが描かれている紋章…… それは紛れもなくワルギス家の紋章だった。
「嘘だ……嘘だって言ってくれよ…… 俺は……俺は……知り合いを殺してしまったというのか……」
「確かにあの日私は死んだ。だがこうしてここにいる。細かい事は言えないが、今は私に協力して欲しいのだ。」
その声のトーンや抑揚は魔王軍幹部のものではなくメニスそのものの声だった。
「分かった。協力させてくれ。それが僕に出来るたった一つの罪滅ぼしだ。」
メニスは優しい顔でマニタの顔を見ながら、
「そうと決まれば話は早い。だがここに張られた結界は魔王のものでは無い。私にはどうすることも出来ないのだ」
「魔王のものでは無いのか? なら何式のものなんだ……」
するとメニスは暗い顔になり少しの沈黙の後、口を開いた。
「ワルギス式だよ」
「ワ、ワルギス式!? となるとこの結界を張った犯人は……」
「そう。私の父、ワルギス・ワーナスだ。」
なぜワーナスさんが……結界なんか。民の事を1番に考えるワーナスさんがなんでこんなことを…… これが嘘であって欲しいの願ったマニタは現実逃避をするように言った。
「でも昨日のワーナスさんは元気で僕と一緒にお茶をしたんだ…」
メニスは驚く様子も無かった。まるで全てを知っているかのように。そして話し始めた。
「実はあれはモンスターに変えられた副作用と言っても良い。中にはモンスターではなく動物に変えられたものがいる事は知っているな? 動物に変えられた者はその国の偉い人か魔術に長けた人のみだ。国の偉い人なら先祖代々の魔術を継承している。それが問題なのだ。魔術の開発を行った者にとって魔王からの攻撃は毒でしかない。魔王の攻撃が身体の中に入ることで自分が開発してきた魔術と魔王の魔術の力が喧嘩してしまうのだ。そのため動物の姿という不完全な形が出来てしまう。そしてその中でもワルギス式は元々属性としては闇だ。身体の中で闇の魔術と闇の魔術が喧嘩を始める。最初のうちは良いのだが時間が経つと、お互いの魔術の力が暴走を始める。それがあれだ。」
メニスは城を指しながら言った。
マニタは若干引きつった顔で
「それは本当の話なんだな? もし本当ならどうやってワーナスさんを助ければいい?」
「ああ。本当だ。だかあれはもう人でも動物でもない。怪物なのだ。正直こんなことしたくはないのだが、あれを抑えるには……」
メニスは間を開けて、
「父を……いや、あの怪物を殺すしかない。」
マニタは本当は分かっていた。そうするしか方法はないと。だが実際にこう言葉として聞いてしまうとそれは胸を抉るような痛みを感じる。
「他に方法はないのかよ!」
「ない……」
メニスはただ一言そう告げた。