1話 勇者の敗北
どうも。カタロス・マニタです。勇者やってました。でもね僕は負けたんですよ。
遡る事5年前
世界が闇に包まれた。魔王が目を醒ましたのだ。その影響で世界中の多くの人が死んでしまった。
だが、ひとつの国は王が張っていた特殊な結界によって護られた。その国の名をテノハの国という。
「お前に魔王討伐を命じよう!」
王の低い声が響く。王の名はカタロス・レオル。マニタの父だ。マニタは当時13歳。レオルは43歳だった。
マニタは生まれながらに才能があり、神に選ばれし子と言われたくさんの民が彼の存在を誇りに思っていた。
マニタは健やかに成長し15歳になった時とうとう魔王軍の幹部の4人のうちの1人の討伐に成功し、民はそれを喜び、王である父も褒め讃えた。
しかし、18になった時、ちょうど今から1週間前の話だ……
マニタの親友であるマカナラス・イザードが魔王軍の幹部の残りの3人の討伐に成功したと言うのだ。
マニタは勿論、民や王も驚きを隠せていなかった。イザードがただ魔王軍を倒しただけなら良かったのだが、マニタはかつてその魔王軍幹部の1人に負けているのだ。マニタですら敵わなかった敵をイザードは倒してしまったのだ。
民の期待はマニタからイザードに変わっていた。王も魔王討伐をイザードに代わりにやってくるように命令もしていた。マニタは負けたのだ。
そして今に至る。マニタは国の中に居場所を無くし、彷徨っていた。マニタには疑問に思っていた事があった。
(何故、イザードに魔王軍の幹部を倒せたのだろう……)
実際、イザードという少年はマニタに劣っていた魔法も使えない言わば弱者だったのだ。でもなぜそんなイザードに魔王軍幹部を討伐する程の力があったのか。マニタは考えていた。そして1つの結論へと辿り着いた。
努力。
マニタは才能があったためあまり努力をしてこなかった。魔法を使えば国一番の力。剣だってマニタは誰にも負けなかった。だからこそ努力を怠っていたのだ。一方イザードは、昔からよくイジメの的にされる程弱く、そのイジメっ子を見返すために努力をしていた。ここがマニタとイザードの差という訳なのだ。
マニタはイザードを憎んだりなどはしていない。全ては自業自得なのだと。自分にそう言い聞かせていた。まるでイザードが強いという事を認めたく無いかのように。
マニタが彷徨ってから1ヶ月ほど経った。状況は何も変わらなかった。ずっとひたすらに彷徨い、寝床も無く、金もない。とうとうマニタはこのままでは餓死するだろうと思い、国を出る事にした。
だが外の世界に人間はいない。みんな殺されてしまったのだから……でもマニタはこのまま国に留まるよりはいいような気がしていた。そして国を出た。旅を始めたのだ。
マニタが国を出て半年が経った。
マニタは外のモンスターであるゴブリンと仲良くしていた。それは何故か……
マニタは実は誰にも話していなかったマニタしか知らない事実があった。それは、外の世界の人達は殺されてはいない。という事だ。
外の世界の住人は皆、モンスターの姿で生活をしている。なぜこんな事をマニタが知っているのか……マニタはかつて魔王軍の幹部を倒した。その時魔王軍の幹部が言っていたのだ。
「世界の住人は魔王様を含めた我ら5人の手により怪物に変えた。2つの国を除いてな」
この幹部の発言でその時初めてマニタはその事を知ったのだ。だが1つ妙な点がある。幹部は2つの国を除いて……そう言っていた。1つはテノハの国。ならもう1つは?どこかにまだ魔王の影響を受けてない国がある。それを探す。それがマニタの本当の旅の理由だ。
そして同時にモンスターとの和解にも成功したのだ。モンスターは奇跡なのか分からないがモンスターに変えられる前の記憶を持っていた。それは曖昧なものだったが、その曖昧な記憶のおかげでモンスターと仲良くなれたのだ。もし記憶をちゃんと持っていたら、マニタの事も知られていて怯えて仲良くはなれなかっただろう。
マニタが王や民にモンスターが人が変えられた姿である事は話さなかった。それには理由がある。民にはモンスターに怯えて欲しかったのだ。もしモンスター達が人間と分かってしまえば民は国の外に普通に出るようになってしまう。それは危険なのだ。結界で護られているテノハの国とは違い何にも護られていないため、魔王が何か攻撃とかをした時に民は被害にあってしまう。それが怖かったのだ。
ただマニタは魔王の攻撃の耐性がついているのでその辺は心配ない。だからこそ今こうやってモンスター達と和解し楽しんでいるのだ。でも魔王を討伐しこのモンスター達を助ける使命がある。それは決して忘れないとマニタは心に誓った。
マニタはゴブリン達と共に楽しみながら次の国であるコノハの国へと足を運ぶのだった。