第六話 《無名の鍛冶師》 前編
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2050年一月九日。俺は今バングラの街の中央にある大きな噴水の近くで立っている。今日はカエデさんとクエストをこなす予定だ。カエデさんの話によれば、簡単なおつかいクエストだそうなので、一日、長くても二日で終わるだろうと思う。そんなことを考えつつ、俺はカエデさんを待つ。
「……おはよう」
突然後ろから声をかけられる。振り向くと眠そうな顔をしたカエデさんがいた。現在時刻はジャスト十時。約束の時間ぴったしに来たことに「俺なんか一時間前に来たのに……」と謎の劣等感を感じずにはいられなかった。
「どうしたの?」
「…なんもないっす」
「じゃあ行こうか」
そう言って、カエデさんは歩き出した。俺は現実世界で姉さん以外の女子と喋ったことがなかったので、カエデさんと若干距離を作ってしまう。カエデさんの方も昨日言っていたもとパーティーメンバーの人たちのことがあったからかどこか遠慮がちに見える。今日を機に元に戻ってくれたらなと思いつつ俺はカエデさんを追いかけた。
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クエストの受けるためにNPCの元へ向かう途中で、カエデさんからこのクエストの話の流れなどを話してもらった。内容はこんな感じだ。
街に出回る武器にはすべて「ヘルレン」という名が刻まれていた。「ヘルレン」というのはバングラの街で一番有名な鍛冶師の名前で、作った武器がすべて高性能なため、他国にまでその名がとどろき、今ではバングラの街を治めているそうだ。
《無名の鍛冶師》クエストは、ヘルレンが今度新しく作るという武器の材料を集めるというものだったそうだ。集めた材料をヘルレンの住む建物まで持っていき、渡すことでこのクエストはクリアとなり、鍛冶師になるために必要なハンマーを渡してくれるのだそうだ。
「その集める材料って言うのもこの街を出てすぐのところで採取出来たり、弱いモンスターとかがドロップしたりするものだったわよ」
「へえ、意外と簡単そうだな」
カエデさんから聞いた内容で会っていれば一日もかからないだろう。しかも、クエストクリア時には多かれ少なかれ経験値と報酬が貰える。クエストクリア時に貰える経験値はモンスターを狩りまくるのよりも、確実で効率的だ。クエスト途中の材料採集の時に町の外に出るからその時に材料採取を行いつつ適度にモンスターを狩ればいいレベリングができるなどと考えながら俺はカエデさんの話に耳を傾ける。
「それにしても、このクエストの「無名の鍛冶師」って誰のことだろうね?」
「確かに、さっきの話で出てきた鍛冶師はヘルレンだけだしな…」
クエストの題名というのはほぼ絶対と言っていいほど、そのクエストの内容と関係しているもののはずだ。ならこの題名の意味は何なのか……………。俺が一人考えていると横からカエデさんが口を開いた。
「…着いたわ」
俺は自分の目の前に意識を向ける。クエストの題名の意味を考えていて気付かなかったが、かなり大きな建物が建っている。周りと比べてずば抜けて横にも縦にも大きいそれは、八階建ての建物だった。俺たちは建物のガラスのような物のドアを押し、中に入る。真正面には大きなエントランスが見え、床には真っ赤の絨毯が広げられている。壁や床は大理石のようなものでできており、とても清潔感を感じさせる光景だった。カナデさんは前に一度見たからか、そんなに興味無さそうに俺にこの建物の説明をしてくれる。
「この建物は八階建てになっていて、二階から四階までが宿泊施設になっているの。町の中のものと比べると値段がバカみたいに高いけどね。一階は温泉になっていて、宿泊している人もそうだし、町の人も入りに来るんだって。五階から七階はバングラの街を治める人たちが仕事をするところで、ヘルレンが住んでいるのは八階よ」
「へ、へえ…」
昨日とは違い、かなり長いこと喋ってくれるようになってくれたことに少し驚きと嬉しさの混じった複雑な気持ちになりつつ俺たちは八階を目指す。どうやらエレベーターがなかったので、八階まで階段で昇っていく。八階に着くと、俺たちが上がった、廊下の右側にある階段と左側にある階段のちょうど真ん中くらいに扉がある。もう少しで扉の前に来るという時にカエデさんが何か思い出したかのように立ち止まった。
「ねえ、クエストを一緒に受けるためにはパーティを組んでないといけないの。今からパーティ申請送るから承諾のボタン押してくれる?」
「わかった」
カエデさんが、自分の立体画面を起動し、俺にパーティ申請を送る。
ピロンッという音とともに俺の体の正面に町で買い物をした時のように画面が現れる。《Kaede さんからパーティ申請を受けました》という文の下にある承諾ボタンを押す。すると、今まで視界の下に一本しかなかったHPバーのとなりに二本目のHPバーが現れる。
「じゃあ、行くわよ」
カエデさんも俺たちがパーティをくめたことを確認し終わったのか、そそくさと扉の前まで移動する。扉に近づくと、パーティ申請の時と同じように、クエストを受けるかどうかの画面が現れる。俺が《YES》ボタンを押すと同時に扉が開き、おそらくヘルレンと思われる人物が見えた。想像していたのとは違い、がっしりとした体つきの筋肉質な男だった。鍛冶師よりも剣士をしていそうだ。
俺がそんなことを考えていると、その男は椅子からゆっくりと立ち上がり、俺たちの方を向いた。
「…何の用だい?」
「お忙しいところすみません、ヘルレン様。私たちは、ヘルレン様が新しい武器を作ると聞き、その材料収集を手伝いたく、その許可をいただくためにやってまいりました」
その後も、ヘルレンの質問に戸惑うことなくカエデさんは明確に返答していった。正直言って、俺いらなかった。
「今回の材料収集には私も困っていた。君たち二人に頼むとしよう」
ヘルレンが言い終わると同時に、俺の視界の左斜め上に【《無名の鍛冶師》クエストを実行中】という文字が現れる。その下には、集める材料と必要な個数が書かれていた。カエデさんも同じようで、視線が左斜め上に行っている。
「ありがとうございます。では、失礼しました」
俺はカエデさんに促され、建物の外まで出てきた。大切なことだからもう一度言う、正直俺いらなかった。建物から出て少し歩くと、カエデさんが口を開いた。
「いっやー疲れたぁ。前の時にセリフ覚えていてよかったぁ」
「前の時もこんなにスムーズにできたのか?」
「いや、前の時はさんざんだったよ。ヘルレンに「様」つけなかっただけでキレてきたから」
そう言って、カエデさんは笑って見せる。それを見て俺も苦笑する。カエデさんがヘルレンと話してくれて本当によかったと心の底から思う。
「じゃあ、材料集めに行きますか。まず、上から一つ目にやつ」
「あぁ、それは一旦町の外に出て採取する。弱いけど、モンスターが沢山ポップするところがあるから気をつけてよ」
「カエデさんこそ」
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クエストが始まって五時間が経った。今は午後五時頃。
俺とカエデはほぼすべての材料を集め終わっていた。一緒に材料集めをするうちに、いつしか俺はカエデさんのことをカエデと呼ぶようになり、カエデは俺のことをシュンと呼ぶようになっていた。材料集めの移動中などにカエデの邪魔にならないように俺はモンスターを狩った。おかげでレベルが6まで上がっている。これで今40ポイント貯まっているので、あと1レベル上げると新しい剣技を一つ習得できる。新しい剣技がどんなものか気になり考えていると、カエデが話しかけてきた。
「ちょっとシュン、ニヤニヤしてないで最後の材料ゲットするわよ」
「お、おう」
俺そんなにニヤニヤしていたかな?などと思いつつ、俺たちは最後の材料を探した。
最後の材料は意外とあっけなく見つかり、俺たちはバングラの街に帰った。
町に着き、そのまま一直線にヘルレンの元へ向かっていると、俺の視界に何か強烈な存在感を与えるものが横切った。俺はその方向に視線を向ける。そこにあったのは何の変哲もない武器屋。その中の一本の剣に俺の視線がくぎ付けになる。
「どうしたのよ、シュン」
「ちょっとあの武器屋寄っていいか?」
「え、ちょっま―――――――」
カナデの返答を聞き終わらずに俺は武器屋に武器屋に向かっていた。俺がその剣を見つめていると、そのことに気づいた店員さんが話しかけてくる。
「あんちゃん、それが気に何のか?でもそいつはやめといた方がいーぜ」
俺が気になった剣は、とても錆び付き、黒くなっていた。しかし、どこか他の武器とは違う、強さのようなものが感じられた。俺の中にいつの間にかこの剣に対する興味がわき、無意識に店員の言葉の理由を聞いてしまう。
「その理由は?」
「あんちゃん、知ってっか?この町の武器はみーんな「ヘルレン」っつー名前が刻まれてんのよ。でもな、この剣はどこにもそんなの書いてねーし、しかも錆びてて使えるかどうか分かんねーんだ。そんなに興味あんなら一回振ってみるか?」
「お願いします」
すると店員が壁に立てかけられていた剣を丁寧に取り、俺に渡してきた。俺は剣の可動域に人がいないか確認し、剣を振る。ビュゥゥゥウンという音が鳴る。少し使いにくさはあるが、いい剣だということはわかった。俺はこの剣を買うことを決意した。
「おっちゃん、この剣をください」
「おっ、買うのか?なら金はいらねーよ。どうせ置いててもそいつを買うやつなんかいねーだろうかんな。ただであげっからあんちゃんも頑張れよ!」
「ありがとうございました!」
俺は武器屋を離れてカナデのいる方に行く。武器屋の店員が感じのい人でよかったなと思う。武器屋で試し振りしてみた時のことを思い出しながら剣を見つめながら、カナデと合流する。俺と合流したカナデは怒りの視線を向けてくる。
「あんたねぇ、もう少し落ち着きなさいよ。剣は逃げたりしないわよ」
「それは、その…すみません……」
謝る俺を見て「ハァー」とカナデがため息をつく。
「で、あんたなんかしたの?クエストが進行してるけど」
「え?」
俺は自分の視界の左斜め上に視線をむける。そこには『八階にいるヘルレンを止めろ』と書かれていた。俺は何もクエストの進行に関わることをした覚えがないが、念のためカナデと別れた後何をしていたかをカナデに伝える。
「なら変ね。私がクエストをした時はこんなのなかったわよ」
「まあ、でも報酬が大幅に変わることはないだろうし、続行しよう」
「そうね」
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階段を上り、八階に到着した俺たちは扉に向かって歩く。途中、部屋の中から誰かの怒声が聞こえたような気がした。それはカナデも同じだったようで二人して顔を見合わせる。俺たちは扉に耳を付け、中の会話を聞こうとする。
「もうこれ以上武器を作ることはできない」
「何故だっ!私はこの町を治めているのだぞっ!」
「俺の作った武器を自分が作ったと嘘をついてね」
「私がこれまでどれほどお前の世話をしたと思っている!この程度のことで私に逆らうなど身の程をわきまえろ!今ならお前を処刑にだってできるのだぞ!」
「どうぞ、勝手にすればいい」
「いいだろう、望通りにしてやる!」
部屋の中から剣を抜刀する音が聞こえる。俺たちはクエストの『ヘルレンを止めろ』の意味を理解した。俺も即座にさっき買った剣を抜刀し、勢いよく扉を開けて中に入る。
俺に気づいたヘルレンは少しスピードが落ちたが、そのまま四十歳くらいの男性めがけて斬りかかる。俺はヘルレンとその男性の間に滑り込み、剣を横向きにしてヘルレンの攻撃から男性を守る。互いの剣が触れ合った時、ヘルレンの頭の上のカーソルの横に一本のHPバーと名前、レベルが現れる。ヘルレンのレベルは8。対する俺はレベル6。それに俺は守りながら戦わなくてはならない状況なので圧倒的不利な状況だ。
「お前は確か材料集めを頼んだ輩だったな。ちょうどいい。お前もそいつと一緒に殺してやる!来い!お前ら!」
ヘルレンの声と共に俺たちが入ってきた扉からヘルレンの仲間と思われる人たちが五人ほど入ってきた。俺とヘルレンは戦っていて、今入ってきた五人はヘルレンの仲間なので、全員頭の上にHPバーと「Guard man」という名前とレベルが見える。全員レベル5。俺は《ラッシュ》の姿勢になり、即座に斬りかかった。
ストックがなくなりましたぁ!!!ストックなさすぎてごめんなさい。土曜日と日曜日に頑張って書こうと思うので、応援よろしくお願いしますっ!ちなみに応援のしかたは下の☆を★にすることです(笑)
でも、これ冗談じゃなくてほんとに応援になるので、お願いしますっ!