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ソルフィア・テストゲーム  作者: ルーパー
3/6

第三話 櫻

一日一話で投稿できたらいいなと思ってます。でもストックがないです(´;ω;`)ウゥゥ



「……………ミキ………!」


 俺は空から落ちてきた鳥の方に走り出した。ミキたちの服が見えたから、ミキたちが鳥に捕まっているのかもしれない、と思い俺は走った。なんだかとてつもなく嫌な予感がする。


 「舜ちゃん待って!」


 後ろから姉さんも追いかけてくる。だんだん俺と鳥の距離が近づいていく。鳥との距離あと三十メートルほどのところで鳥の頭の上に赤色の逆三角形(カーソルというらしい)と緑色のバーが見えてくる。多分、文字は名前、緑のバーはHPを表している。でも、普通HPのバーって一段じゃないのか?それが五段もある。俺は妙な違和感を覚えながら、鳥の名前であろうところに目を向ける……………。


 「……………な、なん、で……………いるんだよ……………」


 違和感を感じたのは当たり前だった。竜の頭の上にはこう書いてあったのだ。「BOSS Lv.40 Vermilion Sparrow」と。まだ、この世界に放り出されてすぐの俺たちの前にボスモンスターが現れたのだ。


 「…………こ、こんなの…………勝てるわけない…………」


 姉さんもあの鳥がボスモンスターであることに気づいたのだろう。


 「…………ミ、ミキたちが…こいつに………殺された……………」


 鳥のところにはミキの姿はなかった。俺たちはミキが殺されたことを悟った。途端、俺の中で二つの意見が対立した。一つ目は鳥から離れて逃げること。二つ目はミキたちの仇をとること。冷静に考えれば、一つ目の、逃げるという考えを選ぶだろう。だが、知り合いを殺され、憎悪に満ちた俺には冷静になる余裕など欠片もなかった。俺のなかで二つ目の考えを実行することに決まり、俺はさらにスピードを上げて走った。


 「……………!」


 俺の後ろで姉さんが大きく目を見開いた。俺のしようとしていることを悟ったのだろう。姉さんは大声で叫んだ。


 「舜ちゃんやめて!あいつに勝てる訳がない!今は逃げるしかないよ!」


 そんなこと、俺が一番理解しているのだ。ミキを殺されたことへの憎悪で体が支配され、冷静になどなっていられない。俺は腰の剣を鞘から強引に引き抜き、ちょうど脇腹あたりの位置で構えた。

だが、俺はそんなことには一切気づかず、鳥との距離を詰める。姉さんが俺に追いついた。呼吸を荒くし、姉さんは怒りが混じった顔で喋りかけてきた。


 「今の私たちは、ゼェ、まだレベル、ゼェ、1だよ…⁉私たちには、ゼェ、勝てっこない!なんど言ったら、ゼェ、わかるの⁉」


 「……………」


 俺は答えなかった。否、答えられなかった。鳥を倒すことだけにひたすら意識を向けた結果、姉さんの声も耳に届かなかった。姉さんは諦めたような顔をし、一度顔を左右に振り、真剣な眼差しに戻す。そして腰から剣を抜き、俺と同じように構える。


 「舜ちゃん、絶対無理はしないでよ」


 「……………わかってる」


 「フルルルルルルァァァァァァァァ!!!!!!!!」


 鳥も俺たちに気づいたようだ。俺は竜の足、人で言うところのふくらはぎに向かって力任せに剣を振るった。「キイィィィィン!」と甲高い音を出しながら、俺の剣は弾き飛ばされた。鳥のHPはたった1ドット程度しか減っていなかった。鳥の表情に焦りの色は見えない。俺が後ろにバックステップしたと同時に、後ろで構えていた姉さんが俺の横を通り抜けて、俺と同じ場所に剣を振るう。それも、俺と同じように弾かれた。攻撃を受けてもいないのに俺たちのHPは少し減少している。鳥の足に弾かれた分が自分にかえってきたのだろう。


 「……どんだけ固いんだよ……………」


 「そんなこと言ってる暇はないよ!次いくよ!」


 姉さんは先ほどと同じように剣を腰に構える。俺も姉さんに続いて剣を構える。いまだに鳥は動こうとしない。俺たちはまた鳥に攻撃するため、走り寄る。今度は姉さんが先に鳥に攻撃する。さっきと同じ場所を一閃する。


 「………てりゃぁぁぁ!!」


そのままの勢いで櫻は回転し、もう一度同じ場所に剣を一閃させる。鳥のHPがまたもや数ドットぶん減る。攻撃が終わると同時に姉さんはバックステップで後ろへ下がり、俺を誘導する。俺はそのまま櫻の隣を走り抜け、剣を頭上に構えながら突進する。鳥の数歩手前で大きくジャンプし、力任せに剣を縦に振り下ろす。


 「………いっっけぇぇぇ!!」


勢いが収まらず俺は地面に直撃する。俺は姿勢を立て直し、立ち上がる。だが、さきほどの余波のようなものが来て、俺は地面に座り込んでしまう。


 「いっってぇ…………」


 「舜ちゃん!大丈夫⁉」


 姉さんは俺に気を配りつつ、また次の攻撃の構えをし始めた。あれだけの攻撃を行ったのに鳥のHPは、パット見まだ一段目のバーの1%も減っていない。すると、今まで動かずに違う方向を見ていた竜の視線が、ゆっくり俺たちの方に向いた。俺たちとは比べ物にならない速さで鳥の足が「ビュンビュン」という音を発しながら俺の方に向かってくる。


 「………!」


 姉さんは攻撃するために構えていた剣を即座に構え直し、俺をかばうようにして鳥の足を剣で受け止めた。途端、姉さんの持っている剣から「バキッバキッ」という音が発せられる。


 「……………!」


 「舜ちゃん逃げて!」


 姉さんの剣に大きな亀裂が走る。そう思った時には姉さんの剣は砕け散っていた…………。姉さんはさっきの反動で大きく後ろに飛ばされる。


 「……!姉さん!」


俺は姉さんに向かって叫んだ。すると姉さんは空中で体の上下を器用に入れ替え、着地した。だが、さきほどの鳥の攻撃の反動があまりにも多すぎて動けなくなる。俺はやっとの思いで立ち上がり、そのまま鳥に攻撃しようと近寄る。


 「…!逃げて!」


 俺は気づいていなかった………。鳥が俺に向けて、さきほど俺にしようとしたものと同じように足を一閃させていた…………。俺は……死を覚悟した……………。


―ああ、俺はここで死ぬのか……………なにも姉さんに恩返しできてないのが心残りだ…………―


体から意識が完全に遠のこうとした時、俺は、何かが結構な勢いで体に当たった感じがして、ハッと我に返る。


 「………う、嘘……だろ………?」


 俺の前には姉さんが仰向けで倒れていた。姉さんがつけていた、俺と同じ銀の胸当ては破壊されて消滅し、服も破れて薄く血が滲んでいた。そして、姉さんのHPを表す緑のバーは赤色に変化し、もう残り1%にも満たなかった。その時、俺は悟った。自分がのうのうと死を覚悟などしている間に、姉さんは俺をかばって鳥の足の攻撃を、剣も破壊されてなくなっているので、まともにくらったのだ。俺はなんと愚かなことをしてしまったのだろう。俺の頬に涙が流れ、姉さんの顔に落ちた。


 「……しゅ…舜、ちゃん……」


 「……………!」


 俺は目線を姉さんの方に向けた。姉さんは俺に向かって笑顔を見せていた。それを見て、俺は先ほどとは比べ物にはならないほどの罪悪感に襲われた。そして、俺の口がやっと開かれた。大量の涙と一緒に。


 「………ご…ごめん……なさい……ごめん……な」


 言いかけた途端、俺の頬にぬくもりを感じた。姉さんが俺の頬に触れていた。


 「……あやまらなくても……大丈夫……だよ…」


 「で、でも……俺があの時ちゃんと」


 「大丈夫……いいの……私は舜ちゃんに……生きてて…ほしかったの……」


 俺は言葉を発せず、姉さんの最後になるであろう言葉に耳を傾ける。


 「舜ちゃんは……誰よりも…優しくて、……心が…強い……そんな舜ちゃんが……私は大好き」


 俺は、今自分がどんな顔をしているかわからない。きっと、顔をくしゃくしゃにし、涙で濡らしてさぞひどい顔をしていたことだろう。俺はつい泣き声をあげて泣いてしまった。


 「私のぶんも……生き…てね……」


 姉さんは残り少ない力を振り絞って体を起こし、俺の頬に唇を当てた。それは、酷く弱弱しいものだった。姉さんは俺から体を離し、また仰向けに寝転がった。そして、姉さんは笑顔で言った。


 「………じゃあね」


 その言葉が終わると同時に姉さんの体の輪郭がぼやけていき、謎の数字の列が姉さんの体を覆う。そして、姉さんはやわらかい金色の光に包まれて消えた………。姉さんは最後まで笑顔だった………。


 「………あっ………あっ………ね……姉さぁぁぁぁぁぁん!!!」


俺は声にならないほどの声で泣いた。自分の生きがいとも言えるほどの大きな存在を失った。俺の涙は止まることはなかった。その時、大きな声が響いた。


 「ウゥルルルァァァァァ!!!!!!!!」


 あまりの悲しさに俺は忘れていた。まだ鳥がいることを。俺は、姉さんの仇を取るべく、鳥に近寄った。目から流れ続ける涙を強引に腕で拭い、剣を構えた。俺の足取りは、姉さんを亡くした動揺でふらついていた。ゆっくり、ぎこちない足取りで鳥に近づき、俺は剣を振るった。


 「……おっルルルルァァァァ!!!!」


 大きい威勢とは裏腹に、振り下ろした剣は弱弱しいものだった。俺はそのまま地面に崩れ落ち、動くことが出来なくなった。俺は鳥の方に視線を向ける。すると、鳥と目が合った。鳥は深い赤色の瞳で、俺を見下ろした。


 「……………!」


 俺は動けなくなった。俺の体に恐怖が植え付けられ、体を動かすことさえ出来なくなったのだ。次の瞬間、とてつもない勢いで鳥の足が俺の腹に打ち付けられた。俺は、されるままに宙を舞いながら後ろへ吹き飛ばされる。俺の視界の下側にあるHPバーがかなりの勢いで減少していき、残り5%程度で止まった。俺の視界がみるみる赤くなっていき、視界のど真ん中に《警告》という赤い文字が出てくる。俺は覚悟を決めて瞼を閉じた。

―俺もあの鳥に殺されるのか……………―

 俺はそう思った……………だが、いっこうに鳥から攻撃が来ない。俺が瞼をそっと開くと、鳥は、自分の後方に視線をやり、俺に背を向けて空高く鳥は舞い上がった。鳥が飛んでいった方向にはとてつもなく高い塔があった。鳥からの危険は免れた。途端、俺の意識が、今までの疲労とダメージで朦朧とし始めた。そして、俺は、モンスターの巣だというのに、その場で意識を手放した………………………………。

その時の俺は気づいていなかった。俺の視界の左上に新着メッセージが出てきて、こう書いていたことを。

―2050 7/1 二万人死亡―

と。


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